茨城ダッシュ、阿波の黄走り、伊予の早曲がり、名古屋走り、山梨ルール…全国「ご当地(悪)交通ルール」を調べてみた

■茨城県警がツイートした「茨城ダッシュ」とは?

全国にある「ご当地交通ルール」を調べてみた!
茨城県警のツイート。「茨城ダッシュは違反!」

日本全国、どこへ行ってもご当地モノってありますよね。美味しいものやお土産ならば楽しいのですが、中にはあまりうれしくない例も…。それが、各地に残るご当地交通ルールというやつです。

その好例としてネットで話題になったのが「茨城ダッシュ」。8月上旬、なんと茨城県警自らが、ツイッターに「茨城ダッシュは違反です」と書き込んで、「茨城ダッシュってなによ?」「茨城県警の公式ワードだったのか」「あるある過ぎて通常運転」などと多くのコメントを集めることになったのです。

「茨城ダッシュ」とは、交差点で右折待ちをしているクルマが、青に変った瞬間、対向車線の直進車よりも先に猛ダッシュで右折することをいいます。隣県群馬で生まれた筆者などは思わず「群馬だってやってるだんべ!」などと謎の対抗心を燃やしてしまったのですが、もちろん危険な行為であることに間違いありません。まあ茨城県の場合「2台まとめてやる茨城ダブルダッシュもあるらしい」などとコメントされるほどですから、より日常的な風景なのかもしれませんが。

それにしても、日本中で茨城県だけがカオスなわけではありません。調べてみると、全国にいろんなご当地交通ルールがあるんですね。ちょっとご紹介しましょう。

●名古屋走り(愛知県)・大阪走り(大阪府)

全国にある「ご当地交通ルール」を調べてみた!
広い道ではおのずとスピードも高くなりがち

これは比較的有名なんじゃないでしょうか。特定のルールというよりも、お行儀の悪い運転全般を指すようです。ウインカーを出さずに車線変更したり、黄色信号を加速してやりすごしたりとかですね。筆者も新人時代に名古屋へ取材に行くとき、先輩から「黄色信号で止まるなよ」という無茶な助言をもらった記憶が…。名古屋は広い道路が多く(道路率全国1位)、それぞれのクルマの「できるだけ速度を落としたくない」という思いが集団心理となり、こんなご当地ルールができたのかもしれませんね。ちなみに「大阪走り」も同義語です。

●伊予の早曲がり(愛媛県)

なんとWikipediaもあるんですね。茨城ダッシュと同義語で、直進車よりも先に右折しちゃうことをいうそうです。松山市街を走っていると「伊予の早曲がり禁止」という看板もあちこちで見かけるとか。瀬戸内海のように温和な印象の愛媛県ですが、運転だけは譲れないということでしょうか。

●阿波の黄走り(徳島県)

愛媛と同じ四国にある徳島県では、黄色信号で止まらないことを「阿波の黄走り」というそうです。ちなみにJAF(日本自動車連盟)が毎年「信号機のない横断歩道で手を挙げたときクルマが止まる確率」というのを調べているのですが、2020年、徳島県は大阪府と並んで全国ワースト5位でした。阿波踊りのように「同じ阿呆なら踊らにゃ損々」というわけでもないですよね。

●播磨道交法(兵庫県)

いかめしい名前ですが、もともとは兵庫県播磨地方独特のご当地交通ルールを皮肉った神戸新聞の連載記事名なのだそうです。これも名古屋走り同様、乱暴な運転マナー全般を指すようで、頻繁な車線変更やウインカーを直前まで出さない習慣、ホーンの乱発などが挙げられるとのこと。ちなみに神戸新聞の連載は大反響で、読者から共感の投稿が山のように届いたそうです。

●松本走り(長野県)

全国にある「ご当地交通ルール」を調べてみた!
細い道路は、右折車などで渋滞しがちです

「松本ルール」とも呼ばれていて、右折車を優先させる発想だそうです。対向車がいるのに右折したり、左折する対向車に便乗して右折したり、赤信号になっても信号を無視して前のクルマに続いて右折を行ったりするパターンですね。なんでも松本市は城下町のため細い道が多く、右折待ちのクルマが渋滞の原因になることを避けるためにこの発想が生まれたのだとか。とはいえ、よそから来たドライバーにとっては冷や汗モノなので、松本警察署はこのご当地ルール撤廃に力を入れているそうです。

●山梨ルール(山梨県)

全国にある「ご当地交通ルール」を調べてみた!
山梨県・富士山周辺の道は信号も少なく快適

こちらも右折を優先させる発想で、「右折車を見たら先に行かせろ」という考え方に基づいているそうです。山梨県警によれば、右折車対直進車の事故件数は全国第10位で、山梨ルールのせいで極端に右直事故が多いというわけでもないとか。筆者も山梨には時々取材に出かけますが、富士山周辺などは信号が少なく、快適なドライブが楽しめます。そのぶん枝道へ右左折する際は自己判断に頼るので、山梨ルールはそういった際の戒めとして生まれたのではないでしょうか。


いかがだったでしょうか。ご当地交通ルールはといってもルールじゃありません。良くない「運転マナー」ですね。お互いに了解している地元の方たちだけならまだしも、その地を走り慣れない観光客などにとっては、とんでもない決まりとなりかねません。全国共通の交通ルールを守って、安全運転に努めましょう。

(文:角田 伸幸)

この記事の著者

角田伸幸 近影

角田伸幸

1963年、群馬県のプロレタリアートの家庭に生まれる(笑)。富士重工の新米工員だった父親がスバル360の開発に立ち会っためぐり合わせか、その息子も昭和期によくいた「走っている車の名前が全部言える子供」として育つ。
上京して社会人になるも車以上に情熱を注げる対象が見つけられず、自動車メディアを転々。「ベストカー」「XaCAR」で副編集長を務めたのち、ポリフォニー・デジタルにてPlayStation用ソフトウェア「グランツーリスモ」シリーズのテキストライティングに携わる。すでに老境に至るも新しモノ好きで、CASEやパワートレインの行方に興味津々。日本ディープラーニング協会ジェネラリスト検定取得。大好物は豚ホルモン(ガツとカシラ)。
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