ドアパンチからの当て逃げ、修理、泣き寝入りを避ける駐車スペース選び3つの方法

■愛車を大事にしたいひとに贈る、駐車場所の選び方

前回は、スマートな駐車&車庫入れのための目の配り方やハンドルさばきについてあらためて解説しました。今回はその続きですが、内容は駐車の前段階の話になります。

出かけた先の駐車場で、どのような場所を選ぶのがいいのか? についてです。

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コンビニエンスストアの駐車場。

出かけた先で駐める場所を選ぶとき、みなさんは何を考えながら決めますか?

「お、ここ空いてた!」とか「店の入口に近いから」という理由でスペースを決めているのではないでしょうか? そして中には、戻ってきたらクルマに傷をつけられていたというイヤな経験をした人も少なくないと思います。

当てた人がこちらを待ち、謝罪や修理費用を出すという話になればいいのですが、たいていはトンズラされての泣き寝入りに終わるものです。

そして受けた傷について重く考えるなら、塗装面の傷が深ければさびの元となり、塗装補修に出せば、たとえ点のような傷であっても最低数万円かかってしまいます。

では、駐車をするさい、そのようなことをされないための何か策はないのか? ぶつけられる可能性をゼロにというわけにはいかないのですが、そのリスクを少しでも減らす駐車場所の選び方をお教えしましょう。

●当てられる確率から駐め場所を考える

筆者はよく出かける先の駐車場に於いて、駐めつけのスペース(一度でいいから人前でいってみたい、「行きつけのすし屋」の駐車場版)があります。決める基準は、「駐車している間、できるかぎり他車からぶつけられないような場所を」ということです。

なぜぶつけられるか? それはぶつける相手がいるからです。ということは、相手がいないところにクルマを置けばいい。

筆者はぶつけられる確率を単純に「低」「中」「高」、3つのパターンに分類して駐車スペースを決めています。

1.低パターン:店舗からできるだけ離れたところに置く

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入口から入りしな、のっけから遠くに駐めることに決め打ちする。

駐車場では、誰もがその店舗の入口に近いところに駐めたがります。実際、世の中の店舗などの駐車場を観察すると、駐車スペースは入口付近から埋まり始めます。

クルマを大事にしたければ、まずは「何が何でも入口近くに駐める」という心理を捨てることです。用事のある店の敷地に入ったらまず駐車場全体を見渡す。

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店舗入口があーーーんなに遠くにあっても、傷つけられる可能性が低くなるならそれでもいいじゃないか。

そしてクルマやひとの往来が集中する店舗入口付近には目もくれず、「いくらまわりにクルマがないからといっても、わざわざこんなところに置くような人はいないだろ」というような、入り口から遠い遠い場所を最初から選ぶのです。

理想は自分の周囲360度がガラ空きになっている場所。入口から遠いだけに、クルマから降りた後、てくてく歩くことにはなりますが、このことと引き換えに自分のクルマが当てられる可能性が低くなることを思えば苦ではなくなるのではないでしょうか。

しかしこのような場所でも休日などの混雑時には埋まってしまうわけで、このようなときはまた別の考え方をしなければなりません。

2.中パターン:列の端っこに置く

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端がいいといっても、その横を通るクルマが当たってくる可能性があることを思うと安泰とはいえない。

隣にクルマがあることでドアパンチを受ける可能性が増すのは承知の上として、駐めるのはせめて端っこにするということです。並列に10台置けるスペースなら両脇の1番めか10番目を選ぶ。

端っこが空いている確率は高くありませんが、うまくありつければラッキー。そこが柱、壁の脇ならなおラッキーです。とにかく隣にクルマがあるのは、自分のクルマの左右どちらかだけという場所にすれば、自分のクルマのサイドが当てられる確率は単純に1/2になります。たとえば自車の左側が壁であれば、まさか壁のほうからこちらに向かってくることはありません。

ただし、端っこを選びさえすればいいというものでもありません。その端がクルマの通路に面しているなら、ドアサイドやバンパーが擦られる恐れがないとはいえないからです。

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端っこでも、そこに自転車があると・・・この位置関係だと、自転車が倒れれば明らかに自分のクルマにヒットする。

また、自分のクルマを傷つけてくるのはクルマだけとは限りません。

コンビニエンスストアなどでは、同じ端っこだったとしても、バイクや自転車置き場の前は避けるべきです。特に自転車はスタンドが不安定だと、自分のクルマに向かって倒れてくる可能性があります。強風のときならなお注意!

筆者が別の編集部にいたとき、取材用車両での移動中にコンビニエンスストアに立ち寄ったとき、自転車の前のスペースに置いたのですが、その日は風の強い日だったのに「ま、すぐだからだいじょうぶだろう」とナメきっていたのでしょう、クルマに戻るまでのわずかの間に自転車が強風にあおられて倒れていたということが! リヤ左フェンダーから15cmほどの距離を残していたので事なきを得ましたが、あと少しずれていたら・・・あぶねーっ!

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クルマの横にこのような通路があるスペースは、カートがぶつけられやしないかという心配もなくはない。

スーパーなどでは端っこでも、ドアが人の通路に面する端っこも敬遠しましょう。狭い場所にもかかわらず、カートを子どもに押させる親がいます…敬遠、敬遠。

見落としがちなのがカート置き場付近。買い物客がクルマの間を縫ってカートを置き場に持っていく途中、ぶつけられないとも限りません。すでに置いてあるカートにきちんと重ねず、無造作に投げるようにしたままのカートを見ることがありますが、そのような無神経なひとなら、その途中で他人のクルマにカートをぶつけているのかもしれず、オーナーを待って名乗り出てくるとは思えません。

自分でも深読みが過ぎると思いますが、警戒するに越したことはありません。したがってカート置き場付近からも遠ざけるのが無難です。

3.高パターン:両どなりにクルマがあるという、一番イヤ~なスペースにして一番多いケース

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結局はいちばん多いパターン3の例。

両どなりにクルマがあるところしか空いていない…何だかんだいって、結局はこれが一番多いパターンだと思います。

それとて避けたいのは、見るからにヤレたクルマの隣。ヤレていても、まっすぐ駐車しているクルマはまだいいのですが、ヤレていることに加え、自分から当てたのかひとから当てられたのか、傷を受けてボディパネルの凹みや塗装剥げ、サビを放置し、かつ、斜めに駐車しているようなクルマの隣は遠慮しましょう。

自分のクルマの姿やその駐め方に無頓着なひとは、となりのクルマへの配慮も怠ると思っておいたほうが賢明です。

ボディタイプでいうなら、大きいサイズのクルマよりはより小さめのクルマの隣が、子ども連れらしきクルマの場合なら、それがスライドドア車であればいくらかでも心理的に救われます。

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さりげない右寄せがしたかったが、右となりのBMWが白線を踏み気味にしてこちらに寄ってきている。本当はこういったクルマの隣には駐めないほうが賢明だ。おたく、右側開いてるじゃん・・・

また、家族連れでの買いもの客が多い休日はともかく、筆者が観察するところでは、平日にフル乗車しているクルマはほとんど見かけません。多くて1人か2人。どちらかといえば1人が多いかな。

フル乗車であろうと1人乗車であろうと、必ず開け閉めするのはまず間違いなく運転席ドアですから、他車が同じ向きに駐めていることが前提ですが、クルマとクルマの間に置く場合、白線内に収めることを守りながらも、隣の車の運転席から少し離し気味にし、いくらか右に寄せるといいでしょう(右ハンドル車の場合)。

すなわち自車の助手席を左どなりの運転席から離し、右どなりのクルマは1人乗車で助手席は開かないだろうという予測のもと、自分の側を右どなりの助手席に少し近づける。白線スレスレにしないでくださいよ。周囲に悟られないよう、さりげなく、さりげなーく。

え? 予測が外れて助手席のひとがやってきたら? そのときはそのとき。ぶつけられるかどうかは運次第です。

3-2.両どなりにクルマがあるのに低パターン?

3.の別バージョンということで、「3-2.」としました。同じ「両どなりにクルマがあるところしか空いていない」例にもかかわらず、むしろ積極的に「ぜひあなた様のお隣に置かせてください!」といいたくなるパターンをご紹介しましょう。

右にベンツML350! 左にS350! その間に愛車を置く! のもひとつの手。

自分には買えない、または一生乗らないような値段の高いクルマの隣にあえて置く! 相手の方こそ自分のクルマをより大事にしているに違いなく、そのようなクルマがこちらにぶつけてくる確率は極めて低いと見ていいでしょう。クラウンにアルファード、フーガにスカイラインといった現行モデルのほか、ベンツのE、Sクラスなど。特に病的なまでにピカピカに磨き上げている黒塗りの高級車であればいいですねえ。

筆者は日産車に乗っていた頃、いちど度胸試しも兼ねて、黒塗りとホワイトパールのベンツの間に駐めたことがありますが、このときばかりはほとんど心配しませんでした(「ほとんど」というところがちょっと情けない)。

もっともこのような場所に置く場合、相手の方こそ迷惑顔をするかもしれず、こちらこそが細心の注意を払ってドアの開閉&乗降をしなければなりません。うっかりこちらが当ててしまったら・・・ぞぉ~っ!

・・・とまあ、ここまでいろいろ書いてきましたが、自分でクルマを所有するようになって約21年の間、こういった注意をはらっていながらも2回ほど傷をつけられ、ついでに心にも傷を受けました。

21年間に2回という確率をどう解釈するかは、この記事をお読みのみなさんに委ねますが、スクランブル交差点の横断歩道で知らぬ者同士で肩や衣服が触れることが避けられないのと同じように、混合交通の中でクルマ同士が接触させたりされたりをゼロにすること自体そもそも無理があるのかもしれません。

しかし、走るときであれ駐車するときであれ、不用意な接触の確率を減らすための工夫&自衛の余地があるのも事実です。

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ブランクスペースの隣もいいね!

21年間に2回どころではない頻度でドアパンチの憂き目に遭っている方、「自分の身は自分で守る」という観点からも、駐車時には今回述べたような工夫を採り入れてみてはいかがでしょうか。

(文/写真:山口尚志