シート素材とは?合皮または本革を使いクッションはウレタンフォーム【バイク用語辞典:材料編】

■合皮は布地を樹脂コーティング、本革は牛皮などを樹脂コーティング

●扱いが容易で安価な合皮シートと上質感が魅力の高価な本革シート

バイクのシートは、乗り心地だけでなく肌触りや見た目が重要視されます。シートの表皮には、布地に樹脂コーティングした安価な合皮と、牛皮などを樹脂コーティングした長持ちする高価な本革の2種類があります。

シートに使われる合皮と本革、クッション材のウレタンの特徴について、解説していきます。

●シートの構造と要件

シート例
シート例
シート例
シート例

バイクのシートは、金属または樹脂のシートベースの上にウレタンフォームのクッション材を置き、それを合皮または本革の表皮材で覆う構造です。特殊なものを除けばどんなバイクでも基本的な構造は同じですが、機能性や形状についてはバイクの種類やスタイルに合わせて調整されます。

シートに求められるのは、乗り心地や安全性、デザイン性であり、具体的には以下の項目について最適設計されます。

・操作性の向上と安全性
シート座面の適正なサイズや硬さによって、運転姿勢を安定させて操縦性を向上

・乗り心地
適切な表皮生地とクッション材によって、乗り心地を向上させて腰や臀部の痛みと疲労を軽減

・デザイン性
バイクのスタイルを印象付ける意匠や質感を重視したデザイン

以下に、シートの表皮材として使われる合皮と本革、クッション材について紹介します。

●合皮(合成皮革)とは

合皮は、布地に樹脂をコーティングして本革の表面に似せたもので、一般的に使われる表皮材です。コーティング剤には、ポリ塩化ビニールやポリウレタン樹脂が使われ、型押しでコーティングするので表皮の品質は安定します。本革と区別が付かないほど巧妙に加工されたものもありますが、匂いや肌触り、なじみ感は再現できないので本革に比べて安っぽさは否めません。メリットは以下の通りです。

・安価

・様々な質感や色の調整が可能

・メンテナンスが簡単(耐水性があり、汚れに強い)

・軽い

デメリットは、熱に弱い、長持ちしないことであり、本革のような上質感は出せません。

●本革とは

本革は、牛皮など動物の皮を鞣して表層に樹脂コーティングした表皮材です。革本来の深みや風合い、人工ではできない濃淡を楽しむことができる上質感が特徴です。クルマでも本革シートは最高級モデルしか採用されない、高級シートの代名詞となっています。

メリットは、

・経年変化によって、本革特有の深みや上質感が増す

・適切にメンテナンスすると、長持ちする

・時間とともにライダーに馴染んでくる

デメリットは、高価なこと、定期的なメンテナンスが必要で雨(水)に弱いことです。

●クッション材のウレタン

衝撃を吸収するパッドには、ウレタンフォームが使用されます。ライダーの腰を安定させ、体圧の分散や振動の吸収といった役目を果たします。ウレタン(正式名称、ポリウレタン)は生成時にガスを発生して発泡し、小さな気泡が増えながら膨らんで形成されます。

ウレタンは、生成方法や配合剤によって弾力や硬さを自由に設計できるため、バイクの種類やスタイルに合わせてクッション性が調整できます。


安価でメンテナンスが不要の合皮シートと、高価ながら使い込むほど深みが増す本革シートのどちらを選ぶかはライダーの好みですが、大切なことは安全のために自分の身体に合ったシートを選ぶことが大前提です。市販車のシートは万人向きに設計してあるので、シートをカスタム化して楽しむライダーも多くいます。

Mr.ソラン

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Mr. ソラン 近影

Mr. ソラン

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までをやさしく解説することをモットーに執筆中。もともとはエンジン屋で、失敗や挫折を繰り返しながら、さまざまなエンジンの開発にチャレンジしてきました。
EVや燃料電池の開発が加速する一方で、内燃機関の熱効率はどこまで上げられるのか、まだまだ頑張れるはず、と考えて日々精進しています。夢は、好きな車で、大好きなワンコと一緒に、日本中の世界遺産を見て回ることです。
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