運用開始した電動車による自動運転を滋賀県の山中でいち早く体験してみた!

■交通インフラの脆弱な地域ほど自動運転&電動化が必要!

●「自動運転レベル3」ばかりがもてはやされているけれど…

2021年3月に発表されたホンダのフラッグシップセダン・レジェンドには、自動運転レベル3(条件付自動運転車[限定領域])に適合したホンダセンシングエリートが搭載されました。自動運転レベル3では、高速道路の渋滞時などの一定の条件下で、システムがドライバーに代わって運転操作を行うことが可能となる最新の自動運転技術です。

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自動運転車の走行シーン。

そして2021年4月に開催された中国・上海モーターショーにおいて、トヨタの新EVシリーズ「TOYOTA bZ」を発表。その第1弾となるTOYOTA bZ4Xのコンセプトカーを初公開。さらに2025年までにbZシリーズ7車種を含むEV15車種をグローバルで導入することが発表されました。

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狭い道をスイスイと走る自動運転車。

いよいよ自動運転技術そして自動車の電動化が新しいフェーズに入ったと言えるでしょう。それでも自動運転やEVが一般的になるのはまだ先の話…という人はいらっしゃるかもしれません。

実は自動運転やEV化のビッグウェーブは、すでに地方の山中で起きているのです。そこで、今回は滋賀県で始まったばかりの自動運転サービスを取材してきました。

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ヤマハ製のゴルフカート車両を使用。全長が長いため、小型車登録となる。
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ヒッチメンバーを搭載しており、今後は荷物の運搬も視野に入れている。

筆者は常々、自動運転やEVというのは高齢化やガソリンスタンドの廃止が進んでいる地方でこそ普及すべきではないかと思っています。

その理由は、公共交通機関が普及しておらず、生活の足としてモビリティが必要であること。そして電気ならば、山の中の集落でも引かれているので、エネルギー供給しやすいというメリットがあるからです。

今回訪れたのは、全国で2例目となる自動運転サービスが令和3年4月23日より導入された、滋賀県東近江市にある道の駅「奥永源寺渓流の里」です。

もみじ街道と呼ばれるほど秋の紅葉がきれいな国道421号線沿いにある道の駅「奥永源寺渓流の里」を核としたエリアは、2019年に長期の自動運転サービスの実証実験が行われて、2021年4月23日より社会実装がスタートしたのです。

●都会ではなく、高齢化・公共交通インフラ不足の地域でこそ活かされる自動運転技術

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3列あるシートのうち、後ろの2列に乗車できる。
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ドライバーは乗車するが、自動運転時はハンドル操作などは行わない。

自動運転サービスは、この「奥永源寺渓流の里」を拠点に、黄和田町・杠葉尾町の集落内、往復約4.4kmをヤマハ製のゴルフカートをベースとしたEV車両が通行します。目的は地域住民の移動支援をはじめ、荷物の輸送支援、そして観光客の移動支援となっています。

最高時速約12km/h(自動走行時)というヤマハ製の自動運転車両は、道路に埋設された電磁誘導線を辿って走行するEV。集落の道は勾配もきつく、しかも狭いため、このような特殊な車両が適しています。

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道の駅の外に自動運転サービスの発着所が設置されている。
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路面に埋設された電磁誘導線をたどり走行する。
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走行ルートには一般車両にたいする注意喚起のため、路面標示や看板を設置している。

また、乗車定員は4名で、ドライバーは万が一に備えて乗車し、障害となる車両等を回避する動作を行いますが、自動走行時にはハンドル操作などは行いません。

自動運転車両の運行日は水・金・土・日の週4日で、「奥永源寺渓流の里」を朝9時5分出発する第1便から15時40分の第6便。さらに日曜日のみ、道の駅の朝市に出荷する貨物輸送などを目的とした7時30分発の早朝便があります。

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滋賀県生まれの飛び出し坊やがお出迎えしてくれる。
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道の駅内に自動運転サービスの受付があり、乗車するなら予約がオススメ。

乗車は一人1回150円で1便4名まで乗車可能です。定員が少ないため、乗車するためには予約をお勧めします(予約電話番号:050-6862-0024)。

道の駅周辺は新緑にあふれていて、たくさんの人がオートバイでツーリングに訪れていました。また、愛知川沿いにはキャンプ場があり、取材で訪れた日も多くのキャンパーで賑わっていました。

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廃校となった学校を利用した道の駅には急速充電器が設置されている。
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取材日もツーリングで訪れるオートバイが多かったが、二輪専用の駐車場も完備している。
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政所茶という、おいしいお茶の産地が近くにある。近江牛は道の駅の食堂でも食べられる。

今回は食べることができませんでしたが、道の駅では地元の近江牛を使ったカレーやハンバーグなどをリーズナブルな価格で食べることができます。

自動運転というと疲労軽減や運転がラクという風に考えられがちですが、それはある一面においての話。「EVによる自動運転」は人々の生活を支えるために、山の中で始まっている!のです。

このような社会実装がもっと広がっていくことで社会インフラが充実し、好きな場所へ好きな時間に行けるモビリティの価値が再認識されることでしょう。

紅葉がきれいな季節にもう一度訪れてみたいです。

(文・写真:萩原 文博

この記事の著者

萩原 文博 近影

萩原 文博

車好きの家庭教師の影響で、中学生の時に車好きが開花。その後高校生になるとOPTIONと中古車情報誌を買い、免許証もないのに悪友と一緒にチューニングを妄想する日々を過ごしました。高校3年の受験直前に東京オートサロンを初体験。
そして大学在学中に読みふけった中古車情報誌の編集部にアルバイトとして働き業界デビュー。その後、10年会社員を務めて、2006年からフリーランスとなりました。元々編集者なので、車の魅力だけでなく、車に関する情報を伝えられるように日々活動しています!
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