「欲しいオプションが選べない!」メーカーオプションの組み合わせに制約がある理由とは?

■装備表の注釈欄にも目を通せ! 見落とすと悲しいことになる?

●メーカーオプションを考えるたびに浮かぶ「?」マーク

ヤリスカタログ
ヤリスカタログ

みなさんが車を買う際にカタログを眺めるとき、巻末の「装備表一覧」や「主要諸元」のページに必ず目を通すでしょう。いや、諸元よりも装備表のほうが多いかな。

ヤリスカタログ
「どれにしようかな~」と楽しんでいられるのは最初だけ。装備表を見始めたら、こんどはお悩みタイムとなる。それはそれで楽しい。

「さ~て、どの車種にしよっかなあ…」
「うーん、これとこれをつけて…あ、あとこれも!」

といった具合に、装備表をなめるように見回しているのが楽しい。筆者などは、絶対買えないようなクルマの装備表を見てはあれやこれやと装備を選び、ひとりニヤニヤすることもあります。時刻表を眺めて楽しむ空想旅行ならぬ空想新車購入ですな。

ヤリスカタログ巻末の装備表
ヤリスカタログ巻末の装備表。黄色のセルの組み合わせで、実際のヤリスの数は膨大なものになる。それはどのクルマも同じだ。

そんなむなしい話はともかく、みなさんがクルマを選ぶとき、正確にはいわゆるグレード選びをするとき、装備表を見てメーカーオプションの組み合わせに制約があることに「???」となったことはないでしょうか?

メーカーオプション(以下、MOP)とは、工場でクルマを取り付ける段階でしか取り付けられないもので、車両機能もコントロールできるナビゲーションやサンルーフ、いまなら安全デバイスなどが例として挙げられます。

困るのは、これらの選択に制約があることです。

だいぶ前の話になりますが、筆者が2000年に買おうとしたU14ブルーバードでは、筆者がほしいと思っていたサンルーフ、ナビゲーションシステム(当時CD-ROM式!)、フェンダーミラー、サンルーフ、リヤワイパーが選べたのですが、ここでトリックが!

10万円のサンルーフは2000cc車にしかつかず、1800cc車が希望だった筆者はここであきらめました。2000cc車と1800cc車の車両価格差はたしか20数万円。無理して2000cc車を選ぶ手もありましたが、サンルーフだけのために30数万払うことになるので、ここでサンルーフは中止。

フェンダーミラーはどうかというと、コイツを選ぶと「他のMOPは一切選択できません。」と装備表の下に小さな文字で、けんもほろろのご挨拶…ボツ! 「…できません。」ではなく、「…できません。ゴメンネ。」とか「…できません(笑)。」とでも入れてくれれば笑って許せたのに。

8年を経てティーダに移る際、悲願のサンルーフは実現しましたが、装備表に注釈さえ出ていないフェンダーミラーはどうかと思って販売店に聞いてみたら、「つくことはつくが、取り付けは完成車をいったんオーテックジャパンに送って行うため、3ヶ月納期が遅れる。」とのことでありました。値段はたしか22万と聞いてひっくり返ったのでこれもヤメ! 当時まだ売られていたタクシー向けセドリック用のメッキフェンダーミラーがつくのだと…。

■メーカーオプションの組み合わせに制約がある理由とは?

装備表欄外の注釈
装備表下にある注釈。「・・・同時装着できません。」の表記がイヤだ(赤線部)。これらを見落とさないよう、欄外にもじっくり目を通そう。

「○○と●●はセットではつけられない」、逆に「○○だけがほしいのに、●●もいっしょになってしまう」…なぜこのようなことが起きるのでしょうか?

自動車会社側に立つとこのようになります。

仮に1000人の顧客がMOPとともにクルマを注文してきたら、1000とおりのクルマを造らなければなりません。いつ出るかわからないようなオプション品も常に生産ライン脇に置かなければならないし、配線の種類も変わってきます。

装着率の低いセダンのリヤワイパーなら、リヤワイパー1本用意しておけばすむ話ではありません。他のクルマから引っ張ってこられるリヤワイパースイッチ付きのワイパースイッチレバーはまだいいとしても、ワイパー取り付け穴ありのリヤガラス、モーター、リヤワイパー配線つきハーネスも別に用意しておく必要があります。

これら置き場所が増えるのと、管理の手間がかかるので工場は部品の数が増えることを嫌います。だからメーカーの商品企画なり生産計画なりの担当部署は、多く来るであろうMOP品の組み合わせを予測し、コード化しているのです。

ヤリス
ヤリス

「X」「G」「Z」の3つで基本構成されるヤリスの中間機種「G」を例にしてみましょう。「X」「Z」同様、「G」でも単独オプション、セットオプションなどいろいろ用意されていますが、MOPを選びながら次の5台を買うとしましょうか。

1. MOPのない、丸裸のヤリスG
2.「185/60R15タイヤ&アルミホイール」だけを選択したヤリスG
3.「応急用スペアタイヤ」だけを選んだヤリスG
4.「185/60R15タイヤ&アルミホイール」「スペアタイヤ」の2品を加えたヤリスG
5.「スペアタイヤ」「3灯式フルLEDヘッドランプ」「インテリジェンスクリアランスソナー」「寒冷地仕様」の4点を取り付けた、よくばり型ヤリスG

メーカーオプションの185/60R15タイヤ&アルミホイール
ヤリスG、ハイブリッドGにメーカーオプションの185/60R15タイヤ&アルミホイール
3灯式フルLEDヘッドランプ
ヤリスGにメーカーオプション装着できる3灯式フルLEDヘッドランプ

素人目にはCoCo壱番屋のカレーのトッピングみたいに、MOP品をたし算しただけのヤリスGが5台並んでいるだけに見えるでしょうが、生産指示コード上はまったく別の5種類のクルマなのです。

簡単にいうと、1.の裸一貫ヤリスの生産コードを仮に「AA」とするなら、2.のヤリスは「AB」、3.は「AC」といった具合です。ここでは「AD」となりそうな4.のヤリスGはMOPを2点つけていますが、同じ2点でも、スペアタイヤと3灯式LEDライトの組み合わせになれば、「AD」とはまた別のコード「AE」になります。

いまは数点のMOPを例にしていますが、オプションを5つ付ける人がいれば7つ付ける人もあり、その内訳、組み合わせはひと様々。中にはフルオプションのひともいるでしょう。そしてその「様々」を想定し、メーカーはそれらひとつひとつにコードを付与しているわけです。

どうです? パッと見には基本的に3種類にしか見えないヤリスも、メーカーオプションの組み合わせによって、最終的にそのバリエーションは膨大な数になりそうなことがわかるでしょ?

そして「●●と○○が同時につけられない」「●●と○○がセットになってしまう」という制約は、単にあなたが望む組み合わせが、メーカーが内々で設定した、いわば「生産指示コード大全集」の中に存在していないことから生じているだけなのです(他にも理由があるのですがここでは省略)。

ヤリスのボディ色バリエーション一覧
ボディカラーはボディカラーでこれだけの種類となる。これらに種々の組み合わせのメーカーオプション、ほか、エンジン、トランスミッションの選択要素がが加わると…大変な数になることがおわかりになるだろう。

ここでは装備表上に限っての話をしましたが、実際にはパワートレーン(ガソリンorハイブリッド)、2WD or 4WD、トランスミッション、ボディカラーといった他の選択要素が加わります。すべての顧客に対応したらどんなことになるかわからないから、ある程度の制約が設けられているのです。

要はいくらMOPがあろうと、選ぶ車種によっては制約があり、結局はクルマは妥協とともに買う場合が多いということです。これから新車を買おうとしている方、注意してくださいね!

それにしても! ワゴン、バン、ショート、ロング、ナロー、ワイド、ミドルルーフ、ハイルーフ、ガソリン、ディーゼルというバリエーションを持つハイエースのコード数なんてどうなっているんだろ?

たぶん天文学的な数字になっていて、中には一度も生産されたことのない仕様のハイエースもあるんだろうなあ…。

山口尚志