定地燃費とモード燃費とは?一定車速の燃費と規定のモード運転の燃費【バイク用語辞典:走行性能編】

■メーカーがシャシーダイナモ試験で測定した2種類の燃費

●実走行を模擬したWMTCモード燃費がユーザーの実走行燃費に近い

バイクの燃費性能を代表する燃料消費率には、定地燃費とWMTCモード燃費があります。定地燃費は、車速一定で走行したときの燃費、WMTCモード燃費は既定の運転パターンで走行したときの燃費で、いずれもメーカーがシャシーダイナモ試験で測定した結果です。

カタログに記載されている定地燃費とWMTCモード燃費について、解説します。

●カタログに表示される燃費は定地燃費とモード燃費の2種類

近年クルマでは、地球温暖化問題などの環境問題と省エネ問題を背景に世界中で燃費規制が施行されています。今のところ、バイクは燃費規制の対象とはなっていませんが、ユーザーの経済性に直結することから燃費向上への要求は高まっています。

市販のバイクのカタログには、定地燃費とWTMCモード燃費が記載されています。

定地燃費とは、一定の条件下で測定された燃料消費率で、平坦路を加減速せず一定速度で走行したときの燃料1L当たりの走行距離、km/Lで表示します。

一方、WMTCモード燃費は実際の路上での走行を模擬したモード運転の燃費であり、モード運転中には加速や減速、停止があります。WMTCモードは、Worldwide-harmonized Motorcycle Test Cycleの略で国際基準となっている走行モードです。

この走行モードは、国連欧州委員会の傘下にあるWP29(自動車基準調和フォーラム)で制定された国際的に統一された試験法で、できるだけ実走行の燃費に近くなるように、欧州や日本、米国、中国などの走行実態を考慮して作成されています。

いずれの測定も、シャシーダイナモ上で排ガス試験と同時に行います。

●定地燃費とは

一定速度で走行するときの定地燃費は、測定車速は排気量によって異なり、排気量50cc以下は30km/h、排気量50cc超は60km/hです。2輪車メーカーが国交省に新車の型式認証を受ける際の届出値です。

定地燃費は実際の走行とは条件は異なりますが、ライダーによる運転操作の影響を受けにくいことから、相対的に他のモデルと比較することは有効です。

定地燃費は、クルマに比べて優れた数値を示し、50ccの実用車では110km/Lという驚くべき数値が出ています。

●WMTCモード燃費

C/Dモード試験
C/Dモード試験

かつてのカタログ燃費は定地燃費だけでしたが、2012年10月からWMTCモード燃費値が併記されるようになりました。ただし、WMTCモードによる燃費測定は、法規で定められているわけでなく、国内2輪メーカーの自主的な取り組みとして行っているものです。

試験は、シャシーダイナモ試験で排ガス試験と同時に行い、排ガス試験結果のCO2、CO、HCの排出量から以下の式で算出します。ガソリンが完全に燃焼すればCO2に、燃焼しきれなかった場合はCOに変換、まったく燃焼しなかった場合はHCとして放出されるという考え方に基づいています。

モード燃費値(L/100km) = (0.1155/D) × (0.866 × HC + 0.429 × CO + 0.273 × CO2)

WTMCモード
WTMCモード

WMTCモードでは、走行モードがエンジン排気量と最高速度によって車両クラスが分類され、クラスごとに車両クラスごとに試験サイクルのパートの組み合わせが設定されています。

・クラス1(主に原付1種、2種):排気量50cc超150cc未満および最高速度50km/h未満、または排気量150cc未満および最高速度50km/h以上100km/h未満

・クラス2-1(主に軽2輪):排気量150cc未満、最高速度100km/h以上115km/h未満、または排気量150cc以上、最高速度115km/h未満

・クラス2-2(主に軽2輪):最高速度115km/h以上130km/h未満

・クラス3-1(主に小型2輪):最高速度130km/h以上140km/h未満

・クラス3-2(主に小型2輪):最高速度140km/h以上


バイクは、クルマのように燃費規制やそれに伴う税制優遇があるわけではありませんが、バイクを通勤で使う人も多く、燃費は購入条件の重要項目に違いありません。定地燃費やモード燃費は、特殊な条件での試験なので、実際に公道を走行する燃費とは当然ながら異なります。しかし、相対的な比較はできるので、一定の評価はできます。

(Mr.ソラン)

この記事の著者

Mr. ソラン 近影

Mr. ソラン

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までをやさしく解説することをモットーに執筆中。もともとはエンジン屋で、失敗や挫折を繰り返しながら、さまざまなエンジンの開発にチャレンジしてきました。
EVや燃料電池の開発が加速する一方で、内燃機関の熱効率はどこまで上げられるのか、まだまだ頑張れるはず、と考えて日々精進しています。夢は、好きな車で、大好きなワンコと一緒に、日本中の世界遺産を見て回ることです。
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