サイズアップ+等長等爆へと変化しても、不易と流行が息づいているのが4代目レガシィ・ツーリングワゴンby清水和夫 BP5編【SYE_X】

■歴代レガシィ・ツーリングワゴンを清水和夫が一気乗り!

●スバルが初めて日本カーオブザイヤーを受賞、一回りサイズアップした4代目BP5

4代目レガシィ・ツーリングワゴン
4代目レガシィ・ツーリングワゴンBP5。

アイサイトXが話題の新型レヴォーグ、その兄貴的存在がレガシィ・ツーリングワゴンです。1989年の初代登場から、2014年の5代目最終型オーダーストップまでの約25年間、ツーリングワゴンの代名詞として愛されてきました。

レオーネ時代にスバルのワークスドライバーを務めていた国際モータージャーナリスト・清水和夫さんが今、改めて歴代レガシィ・ツーリングワゴンを一気乗り! 初代BF52代目BG53代目BH5、そして今回は4代目BP5の清水インプレッションを動画と共にお届けします。

●大人っぽく進化し、3ナンバーで登場

清水和夫さん
試乗はお馴染み、国際モータージャーナリストでかつてはレオーネ時代にスバルのワークスドライバーも務めた清水和夫さん。

2003年に登場した4代目レガシィ・ツーリングワゴン、記憶に残っているのは、このクルマが2003-2004日本カーオブザイヤーに輝いたことですね。投票会場に竹中社長がサプライズで来て、それで人気を得て最後の得点を稼いだ…とも言われています。この頃、スバルは勢いがありましたよね。

レガシィ・ツーリングワゴン
3代目より一回りサイズアップし、使い勝手もアップ。

4代目、実は地味なクルマ? 3代目まではイケイケのクルマ好きたちに支えられていたんですけど、このクルマはもうちょっと大人っぽい、輸入車のユーザーも取り込もうとしました。アメリカでも人気のレガシィ・ツーリングワゴン。アウトバックで作り分けはしていましたけど、アメリカからは「もっと大きいサイズを!」と言われていましたからね。

そして、このモデルから初めて日本で3ナンバーになりました。3代目まで5ナンバーを死守してきたんですけど、3ナンバーになってよりキャビンもルーミー(広々)になったことで、更に使い勝手が良くなったと言えます。

●シングルターボで等長等爆化、「らしい」ボクサーサウンドが消えた!?

技術的にはGT-Bで使った技術を使い、低速から粘りっこいエンジンになっているので、より一般道では乗りやすくなっています。

レガシィ・ツーリングワゴンのエンジン
シーケンシャルツインターボからシングルターボへ変更されたEJ20型エンジン。

実はエンジンが「等長等爆」といって、右バンクと左バンクのエキゾースト系の距離が同じになったんですね。今までは触媒を搭載する関係で、左右のバンクのエキゾーストの長さが違っていたのですが、エンジンの音、振動を良くするため、スバルは必死になってターボの搭載位置、触媒の配置等を苦労しながら等長等爆エンジンにしました。

だからこの頃からスバルのエンジンは大人っぽい、洗練されたエンジンになって“しまった”…、という言い方が微妙なんですけど、好きモノは昔のスバルの「ボロロンッ」というような音が特徴、個性だよねと感じる人がいると思いますが、このエンジンから大人っぽいエンジンになったなという感じですね。

●ワイドボディでワゴンとしての使い勝手が向上、さらにハンドリング性能もアップ!

走り的には、低速トルクを上げたことによって、ワイドボディのかったるいところは無くなりました。だから、ワゴンとしての使い勝手は見事に向上! そして、日本カーオブザイヤーを獲ったスバルの最初のモデルです。まぁスバルがカーオブザイヤーを獲るなんていうのは夢にも思っていなかったけど!!(笑)

当時のライバルはトヨタの2代目プリウス、それをレガシィがやっつけた!ということで、トヨタとスバルの睨み合いが当時ありましたけど、それはいい意味での競争だったと思います。

このワゴンを目指して、ホンダ・アコードワゴンなどのライバルが「打倒レガシィ!」としてい~っぱい! 出てきたんですけど、やっぱりスバルの牙城を崩すことはできなかったですね。

レガシィ・ツーリングワゴンの走り
ワイドボディにり、さらにハンドリング性能が良くなった感じ。

3ナンバーボディになってサイズは広がりましたけど、ドラポジや視界性能、Aピラー辺りから見えるドアミラーからの後方視界、ペダル配置…、1mmも変わっていないですね! 乗り心地はかなり良くなっています。同じ17インチの215/45-17かな? ハブの剛性もGT-Bのときに上げていましたから、ステアリングの剛性もシャープになって正確性が増しています。

BP5・レガシィ・ツーリングワゴン
桂田勝さんの魂を受け継いでいるBP5。

いや~でもワイドボディになっても、むしろワイドボディになったほうがハンドリング性能は良くなっているって感じだね。

こうやって改めてレガシィの1代目から乗ってくると、まさに桂田勝さん(※レガシィ3代目開発主幹/元STI代表取締役社長)がおっしゃっていた『不易と流行』、変えてはいけないところ、変えなくてはいけないところ、それが明確に息づいています。

(試乗:清水 和夫/動画:StartYourEnginesX/アシスト:永光 やすの

BP5の主なスペック
BP5・レガシィ・ツーリングワゴンの主なスペック。

■SPECIFICATIONS
●スバル レガシィ2.0GT(BP5/2003年5月)
全長×全幅×全高mm:4680×1730×1470
ホイールベース mm:2670
トレッド F/R mm:1495/1485
車両重量 kg:1430(5MT)/1460(5AT)
エンジン:EJ20 水平対向4気筒DOHC 16バルブ ターボ
排気量 cc:1994
圧縮比:9.5
最高出力ps/rpm:280/6400(5MT)/260/6000(5AT)
最大トルクkgm/rpm:35.0/2400
駆動方式:フルタイム4WD
トランスミッション:5MT/5AT
サスペンション(F/R):ストラット式独立懸架/マルチリンク式独立懸架
ブレーキ:ベンチレーテッドディスク(F/R共)
タイヤサイズ:215/45R17 (F/R共)
車両本体価格(税込):288万円(5MT)/295万円(5AT)

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【関連リンク】

StartYourEnginesX
https://www.youtube.com/user/StartYourEnginesX

この記事の著者

清水和夫 近影

清水和夫

1954年生まれ東京出身/武蔵工業大学電子通信工学科卒業。1972年のラリーデビュー以来、スーパー耐久やGT選手権など国内外の耐久レースに参加する一方、国際自動車ジャーナリストとして活動。
自動車の運動理論・安全技術・環境技術などを中心に多方面のメディアで執筆し、TV番組のコメンテーターやシンポジウムのモデレーターとして多数の出演経験を持つ。clicccarでは自身のYouTubeチャンネル『StartYourEnginesX』でも公開している試乗インプレッションや書下ろしブログなどを執筆。
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