ブレーキオイルの役割とは?作動油としてマスターシリンダーやキャリパーを動かす【バイク用語辞典:ブレーキ編】

■安定した性能が維持できるように規格化されたDOT4を使用

●ダブルディスクの配管方式は、トライピース型、ダイレクト型、バイピース型の3種

現在主流のディスクブレーキは、ブレーキ操作によってブレーキホース内のブレーキオイルがマスターシリンダー内のピストンを押し、その力をキャリパーに伝えて制動力が発生する仕組みです。

ブレーキオイルの配管方式や性状、その役割について、解説します。

●ブレーキオイルの配管

一般的なバイクのブレーキは前輪と後輪が完全に独立しているため、ブレーキオイルの配管も前後輪で分かれています。

配管の種類
配管の種類

前輪のブレーキとしては、軽量化や低コストを狙ったシングルディスクと安定した制動力と耐久性に優れたダブルディスク型があります。ダブルディスクでは、マスターシリンダーとブレーキキャリパーをつなぐオイル配管の方式には、以下の3種類があります。

・トライピース方式
マスターシリンダーから1本のホースが出て、途中で2本に分かれてブレーキキャリパーにつながります。コントロール性に優れているのでスポーツバイクなどで採用されます。

・ダイレクト型
マスターシリンダーから直接2本のホースが出ており、それぞれが2本のブレーキキャリパーにつながります。

・バイピース型
マスターシリンダーから出た1本のホースは、片側のブレーキキャリパーを経由してからもう一方のキャリパーにつながります。

●ブレーキホースの材質

ブレーキホースの材質としてはゴム製が一般的ですが、熱によって膨張しやすく、温度変化によって僅かながらブレーキオイルの挙動に影響が出る場合があります。使用環境に左右されやすく経年劣化も起こすので、定期的に交換が必要な部品です。

極力影響を受けないように、テフロンチューブの周りをステンレスメッシュなどで包んだメッシュホースが使用される場合があります。高価ですが、ゴム製に比べて膨張が抑えられるので、遊びの小さいレスポンスの良いブレーキフィールが得られます。

ブレーキホースが膨張と伸縮を繰り返すと、オイルの圧力変化によって気泡が発生することがあります。気泡が発生すると、ピストン移動による油圧変化が緩慢になりブレーキの効きが悪化する「べーパーロック現象」が発生してしまいます。

●ブレーキオイルの規格

ブレーキオイルは、ゴムやブレーキ部品を侵食しない、粘性が低い、圧力による体積変化が小さい、凍結しない、沸点が高いなどさまざまな性質が求められることから、規格化されています。

ブレーキオイルの規格
ブレーキオイルの規格

規格はFMVSS(連邦自動車安全基準)をベースにしたDOT規格で、JIS規格もこれに準拠しています。日本のバイク用ブレーキオイルは、通常その中の「DOT4」が使われます。DOT4はグリコール系を主成分とし、オイルというよりアルコールに近い成分です。水によく溶け外気と接すると吸水しやすく、また経年劣化も起こすので定期交換が必要です。また、塗装表面に付着すると塗装が剥がれてしまうので注意が必要です。


ディスクブレーキでは、マスターシリンダーやキャリパーの性能が注目されますが、それらを動かすのはブレーキオイルです。本来の作動油として性質が維持できなくなれば、ブレーキ機能が損なわれて大事故を起こすリスクがあります。そのため、ブレーキオイルは確実に定期的に交換するなど管理には十分留意する必要があります。

(Mr.ソラン)

この記事の著者

Mr. ソラン 近影

Mr. ソラン

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までをやさしく解説することをモットーに執筆中。もともとはエンジン屋で、失敗や挫折を繰り返しながら、さまざまなエンジンの開発にチャレンジしてきました。
EVや燃料電池の開発が加速する一方で、内燃機関の熱効率はどこまで上げられるのか、まだまだ頑張れるはず、と考えて日々精進しています。夢は、好きな車で、大好きなワンコと一緒に、日本中の世界遺産を見て回ることです。
続きを見る
閉じる