■ガソリンエンジン車の販売禁止が具体化すると、軽自動車のマイルドハイブリッド化が一気に進む!?
欧州市場は、ある意味でヒステリックなまでに電動化に突き進んでいますが、日本市場はハイブリッドが当たりまえの存在として普及していることもあって、やんわりと電動化にシフトしていく空気がありました。
しかし、東京都の小池百合子知事が2030年に東京都におけるガソリンエンジン車の販売禁止を打ち出すなど、電動化に一気にシフトする雰囲気が濃くなってきました。
小池知事の発言にある「ガソリンエンジン車」の中にハイブリッドカーは含まれていないようです。車種によっては新車販売の半数以上をハイブリッドカーが占める昨今では、じつはさほど大きな変化ではないといえるのかもしれません。
とはいえ、ハイブリッドカーであることが必須になると、マーケットに大きな地殻変動が起きるのが軽自動車カテゴリーです。
ご存知の通り、もっとも売れている軽自動車はホンダN-BOXですが、このモデルにはハイブリッド仕様は設定されていません。一方で、スズキや日産・三菱の軽自動車には、ISG(インテグレーテッド・スタータージェネレーター)を使った簡易的なハイブリッドが用意されています。むしろ、ハイブリッドが中心のラインナップになっています。
2030年にガソリンエンジン車の販売禁止が決まったら、そこまでにマイルドハイブリッドを用意するというのはどのメーカーにとっても難しいことではないでしょうが、数年後にハイブリッドであることがマストになるとなれば、リセールバリューを考えたとき、ハイブリッドであるほうをユーザーが求めるトレンドが生まれる可能性があります。
しかも、軽自動車のマイルドハイブリッドは純エンジン車と価格がさほど変わりません。ガソリンエンジン車にこだわる必要はないのです。
そうなると、売れに売れているスーパーハイトワゴンのN-BOXから、ハイブリッド仕様が用意されているスズキ・スペーシアや日産ルークス、三菱eKスペースといったモデルにユーザーの目が向く可能性があると考えられるのではないでしょうか。
さらに電動化トレンドが進んでいくと、軽自動車においてもEV走行が可能なストロングハイブリッドへのニーズが高まってくるかもしれません。ただし、ストロングハイブリッドというのはエンジンと2つのモーター、それなりのサイズのバッテリーという要素が必要で、軽自動車で考えるとコスト高になりがち。
バッテリーのローコスト化次第では、2020年代の早いうちに軽自動車のメインストリームは一足飛びにBEV(電気自動車)にシフトしてしまうかもしれません。
そうなってくると、数年前から国土交通省が進めている新規格である超小型EV(60km/h以下での走行を前提とした全長2.5m程度の車両規格)への注目も集まってくる可能性も出てきます。
高速道路に乗らない前提であれば、こうした超小型EVのほうがコンパクトなぶん、新しいモビリティとして便利に使えるケースもあるでしょう。
いまのところは小池百合子知事という、あくまでも地方自治体の首長が言い出した話に過ぎませんが、クルマの電動化が不可避という空気が広がっていくと、いまのところ電動化がそれほど進んでいない「軽自動車」というカテゴリーに大きな動きが出てくることは間違いなさそうです。
(自動車コラムニスト・山本 晋也)