日産ノートに電動4WD登場。リヤモーターのスペックが軽自動車ジャストフィットなのは偶然じゃない!?【週刊クルマのミライ】

■フロントモーターのスペックは最高出力85kW・最大トルク280Nm、リヤモーターは最高出力50kW、最大トルク100Nm

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1.2Lエンジンと発電用モーター、2つの駆動モーターを持つノートe-POWER 4WD。メーカー希望小売価格は228万8000円~244万5300円

日産のコンパクトカー「ノート」がフルモデルチェンジを発表したのは2020年11月24日でしたが、それから1ヵ月、12月23日にようやく発売開始となりました。

そして同時に、2020年度内に発売開始予定となる4WD仕様が発表されています。コンパクトクラスながら前後独立モーター(交流同期電動機)を積んでいるのが特徴です。

先代モデルのノートe-POWERにも4WDは用意されていましたが、そのさいのリヤモーターは直流で、最高出力も3.5kWと控えめな数値でした。そのため発進時のズルっというスリップを抑えるだけのアシスト型といえるものでした。

しかし、新型ノートe-POWERの4WDはリヤに最高出力50kWという大出力モーターを積んでいます。フロントモーターの出力が85kWですから、制御次第ではリヤだけで十分に走れるくらいのポテンシャルを持っているといえます。

そんな大きなモーターを積んだ4WD仕様のメーカー希望小売価格は、廉価グレードの「S FOUR」で228万8000円。2WD仕様の「S」グレードの価格は202万9500円ですから、細かい仕様の違いを無視して単純に価格差を計算すると25万8500円となります。

この価格で最高出力50kW、最大トルク100Nmのモーターやドライブシャフトなどを追加したと考えると、かなりリーズナブルに抑えていると感じます。

もちろんノートの車格を考えれば、この程度の価格上昇に抑える必要があるのは当然なのですが、4WD仕様のリヤモーターというのはそれほど量産効果が期待できるものではありません。このようにコストを抑えるには何らかの工夫があると考えるべきでしょう。

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日産ノートe-POWER の4WDシステムは前後独立モーターのシリーズハイブリッドとなっている

ここからは完全に妄想的予測なのですが、ノートe-POWER 4WDのリアに搭載されている「MM48」型モーターは、おそらく量産効果が期待できる用途が用意されていると考えることができます。

それは軽自動車クラスの電気自動車、そのメイン駆動モーターという役割です。

2019年の東京モーターショーにて、日産は軽の電気自動車を思わせるコンセプトカー「IMk」をお披露目しました。同時にステージ上に置かれていた「ARIYA」は市販化が発表されていることから、IMkも市販前提のコンセプトカーと捉えるのが妥当です。日産の電動化戦略において、軽自動車の電気自動車が登場することは既定路線といえます。

そして、ご存知のように軽自動車の最高出力は自主規制により47kWをリミットとしています。多くのターボエンジンの最大トルクは100Nm前後となっています。先ほど記した、ノートe-POWER 4WDの使うリヤモーターの最高出力は50kW、最大トルクは100Nmです。まさしく軽自動車サイズの電気自動車に用いるのにピッタリのスペックとなっていることがわかります。

つまり軽自動車クラスの電気自動車に使うモーターとして量産効果を見込んでいるとすれば、ノートe-POWER 4WDの、2WDとの価格差が小さいことも納得できますし、そのリヤ駆動系のトータルコストが25万円程度だとすれば、軽自動車のエンジン+トランスミッションよりもローコストになっていることも想像できます。

電気自動車にするには二次バッテリーを搭載する必要があるので、駆動モーターのコストがエンジンより安いからといって、単純に車両価格がガソリンエンジン車並みになるとはいえませんが、軽自動車にぴったりなスペックのモーターが存在していることは、日産から軽自動車の電気自動車が登場する日が近づいていると感じてしまうのです。

(自動車コラムニスト・山本晋也)

この記事の著者

山本晋也 近影

山本晋也

日産スカイラインGT-Rやホンダ・ドリームCB750FOURと同じ年に誕生。20世紀に自動車メディア界に飛び込み、2010年代後半からは自動車コラムニストとして活動しています。モビリティの未来に興味津々ですが、昔から「歴史は繰り返す」というように過去と未来をつなぐ視点から自動車業界を俯瞰的に見ることを意識しています。
個人ブログ『クルマのミライ NEWS』でも情報発信中。2019年に大型二輪免許を取得、リターンライダーとして二輪の魅力を再発見している日々です。
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