鉛バッテリーとは?希硫酸溶液と鉛合金を使った2次電池【バイク用語辞典:電装編】

■化学反応を利用して充電による蓄電ができる

●バイクのバッテリーは、メンテナンスフリーのMF型鉛バッテリーが主流

バイクに搭載されているバッテリーの主流は、クルマと同様安価で取り扱いが容易な鉛バッテリーです。鉛バッテリーは、電気エネルギーを供給する放電や、逆に得られたエネルギーを電気として充電できる2次電池です。

電装部品に電力を供給するために放電と充電を繰り返す鉛バッテリーについて、解説していきます。

●鉛バッテリーの構造

電装システム
電装システム

バイク用バッテリーとしては、クルマと同じ鉛バッテリーが使われます。

鉛バッテリーは、電解液(バッテリー液)と呼ばれる希硫酸の溶液と鉛合金でできた正極板と陰極板が、プラスチック容器に収められています。

極板は、陽極板の両側を陰極板が挟み込む形で交互に3~5枚並べたものが1組(セル)となっています。1セルで2Vの電力が発生するので、通常の12Vバッテリーでは6セルを直列につないで構成します。かつては3セルを直結した6Vバッテリーもありましたが、現在はほとんど使われていません。

●鉛バッテリーの充放電特性

鉛バッテリの作動原理
鉛バッテリーの作動原理

鉛バッテリーは、正極と負極で別々に起こる酸化・還元反応を利用した化学電池で、充電による蓄電ができる2次電池です。充電することによって電気エネルギーを化学エネルギーの形で蓄え、放電時には化学エネルギーを再度電気エネルギーに変換して、充放電を繰り返すことができます。

正極は二酸化鉛PbSO2、負極は金属鉛Pb、電解質は希硫酸H2SO4で構成され、充放電では以下の化学反応が起こります。

放電) Pb + PbO2 → 2PbSO4 + 2H2
充電) Pb + PbO2 ← 2PbSO4 + 2H20

ここで、放電時は負極で電子を与える酸化反応、正極で電子を受け取る還元反応が起こり、電子が負極から正極に移動し、電流が流れます。

充電時はこれと逆の反応となり、逆方向に電子が流れ、電流が流れます。

鉛バッテリーは繰り返し充電することによって、負極に硫酸鉛の結晶が発生しやすく、性能が低下しやすい欠点があります。したがって充放電量には制約があり、過放電にならないように走行中はオルタネーター(発電機)によって精度良く充電制御しています。

●バッテリーの種類

鉛バッテリーは、充放電を繰り返すと電解(バッテリー)液中の水分が電気分解を起こして水素と酸素が発生し、バッテリー液が減少します。これに対応する方法に違いによって「開放型」と「MF(メンテナンスフリー)型」」があり、クルマは開放型、バイクはMF型が主に採用されます。

また、最近はリチウムイオン電池を使ったバイクも登場しています。

・開放型
ベント型とも呼ばれ、充電時に発生するガスを逃がすための排気孔があります。電解液中の水分が減るので精製水を補給する必要があります。そのため、水位が外部から分かるように、半透明な容器が使われます。操作が簡単なので主にクルマや飛行機で使われます。電解液の比重を測れば、バッテリーの放電状態が分かります。

・密閉型
ガスの発生を抑えてバッテリー容器を密閉状態にしたもので、発生する水素と酸素をカルシウム合金の極板によって水に戻す方式です。

この方式では電解液の点検や水の補給が不要なので、MF(メンテナンスフリー)バッテリーと呼ばれてバイクでは主流です。内圧が上がりすぎると制御弁が開いて内圧を逃がし、内圧が下がると再び制御弁を閉じる制御弁式と完全に密閉された完全密閉式があります。


バイクのバッテリーは古くは開放型が主流でしたが、現在は電解液の補充が不要なメンテナンスフリーのMF型が主流となっています。また最近は、ジェル状電解液のジェルタイプMF型やリチウムイオン電池を採用したモデルも登場しています。

(Mr.ソラン)

この記事の著者

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Mr. ソラン

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までをやさしく解説することをモットーに執筆中。もともとはエンジン屋で、失敗や挫折を繰り返しながら、さまざまなエンジンの開発にチャレンジしてきました。
EVや燃料電池の開発が加速する一方で、内燃機関の熱効率はどこまで上げられるのか、まだまだ頑張れるはず、と考えて日々精進しています。夢は、好きな車で、大好きなワンコと一緒に、日本中の世界遺産を見て回ることです。
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