ボルボの歩み:創業当初から安全技術を看板にするスウェーデンのメーカー【自動車用語辞典:海外の自動車メーカー編】

■2010年に中国・吉利汽車の傘下に収まるも先進的な安全技術で独自性を発揮

●ボルボを象徴する独特の四角いデザインから、最近はスタイリッシュなデザインに変貌

ボルボといえば、古くから世界一安全なクルマと高く評価されています。最近は、安全技術に対する積極的な取り組みは継続しつつ、かつての四角いボディからスタイリッシュなデザインへと変貌しました。

安全技術で独自性を発揮しているボルボのこれまでの歩みについて、解説していきます。

●会社概要と業績

・会社名:ボルボ・カー・コーポレーション

・代表取締役社長兼CEO:ホーカン・サムエルソン

・創立:1926年

・資本金(2019.6現在):非公表

・従業員数(2019.6現在):4万3000人

・販売台数:71万台(2019.1~2019.12)

●起源

1924年に、アッサールほか3名によってスウェーデンでの自動車製造の計画が始まり、1926年にボルボ社が誕生してボルボブランドの乗用車製造に着手しました。

1927年に、4気筒エンジン搭載の「Jakob(ヤコブ)」と呼ばれるボルボOV4が初めて量産されました。

ボルボOV4
1927年、OV4

●メーカーとしての歩み

「ボルボの設計の基本は、常に安全でなければならない」という基本理念のもと、安全装備の開発に早くから取り組み、世界一安全なクルマを目指しました。

1959年にボルボを象徴する安全装備を備えたPV544が発売、3点式シートベルトを最初に装備したモデルです。当時、ボルボは3点式シートベルトの特許を取得していましたが、誰もが採用できるように無償で公開しました。

ボルボPV544
1959年、PV544

1991年には、現在のボルボの源流といえる850が登場しました。850には、SIPS(側面衝撃吸収システム)と呼ばれる安全システムを採用、1994年にはサイドエアバッグを開発して装着しました。

1999年にボルボの乗用車部門がフォードに譲渡されましたが、この関係は10年余りしか続かず、2010年には中国の吉利汽車の傘下に入りました。

●往年の代表的なモデル

創業当初は、箱型でタクシーや要人などが使う専用車として使われました。スウェーデンは第二次世界大戦に参戦せず、戦火に見舞われることはなくボルボは製造を続けることができました。

・1946年、小型車のPV444を発売。後継車のPV544が登場するまで20万台を販売

・1965年、P1200アマゾンを発売

ボルボ・アマゾン
1965年、アマゾン

・1961年、流麗なボディのP130アマゾンやP1800を発売

・1966年の1400、1974年の240シリーズはボルボらしい近代的なデザイン

ボルボ240
1974年、240セダン

1970年代から1980年代にかけては、ボルボの象徴的な四角いデザインが採用されました。

●最近の代表的モデル

1982年に登場した四角いボルボスタイルの760は、高いユーテリティ性と安全性を両立させたモデルです。続いて1985年には、ワゴンの760エステートを追加しました。

・1990年には、760の後継となる960を発売

ボルボ760
1985年、760セダン

・1991年、5気筒横置きFFの850、1993年には850のワゴンモデルとなる850エステートを追加

ボルボ850
1991年、850エステート

850シリーズを最後に3ケタ数字の車名を終え、セダンをS、エステートをV、クーペとカプリオレをCとする車名に変更しました。

・1995年、コンパクトモデルのS40とV40を発売

ボルボS40
1995年、S40

・1997年、960の後継車となるV90とS90、また850シリーズの後継車のV70、S70、C70を投入

・2006年には、2ドアプレミアムのC30を発売

・2015年、フルモデルチェンジしたXC90を発売(XCはSUV系)

ボルボXC90
2015年、XC90

・2018年、現行の2代目に移行した主力モデルのワゴンV60を発売


ボルボは、創業以来安全を重視したクルマづくりを行い、安全性の重要性をアピールし続けています。特に、崖から落ちて、バンパーは壊れても車室は安全であることを実車で見せたコマーシャルは、衝撃的でした。

この10年の間に安全性が燃費と同様にクルマの価値を上げる重要な技術となり、ボルボにとっては大きな追い風になっているかもしれません。

(Mr.ソラン)

この記事の著者

Mr. ソラン 近影

Mr. ソラン

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までをやさしく解説することをモットーに執筆中。もともとはエンジン屋で、失敗や挫折を繰り返しながら、さまざまなエンジンの開発にチャレンジしてきました。
EVや燃料電池の開発が加速する一方で、内燃機関の熱効率はどこまで上げられるのか、まだまだ頑張れるはず、と考えて日々精進しています。夢は、好きな車で、大好きなワンコと一緒に、日本中の世界遺産を見て回ることです。
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