光岡自動車の歩み:日本で10番目に誕生した完全受注生産の乗用車メーカー【自動車用語辞典:日本の自動車メーカー編】

■少量生産の特長を生かして、大手メーカーが作れない個性的なクルマを市場に投入

●クラシックカーテイストのクルマが看板だが、スタイリッシュなスポーツタイプも手掛ける

光岡自動車は、年間生産台数が500台程度と少量ながら、日本で10番目に誕生した乗用車メーカーです。大手メーカーにない手作り受注生産の強みを生かして、クラシックカーテイストの個性的なクルマを中心に製造しています。

創業して50年が経過した光岡自動車の歩みについて、解説していきます。

●会社概要と業績

・会社名:株式会社光岡自動車

・取締役社長:光岡章夫

・創立:1979年

・資本金(2019.3現在):1億円

・従業員数(2019.1現在):426人

・販売台数:約550台(2018.1~2018.12)

●起源

光岡自動車の起源は、1968年富山県富山市に光岡進(現会長)が個人創業した板金や整備を行う光岡自動車工業です。中古車販売も手掛けて1979年には規模を拡大して「株式会社光岡自動車」として法人化しました。

1981年には、長年の夢であった独自開発のクルマづくりへ向けて社内に開発部を設けました。翌年の1982年に、初の自社オリジナルカーとなる1人乗りのマイクロカーBUBUシャトル50を発売。原付バイク用の排気量50ccエンジンを搭載し、ゼロハンカーと呼ばれて原付免許で乗れる手軽さから大ヒットしました。

BUBUは光岡自動車の販売網の名称です。

●メーカーとしての歩み

BUBU50はシリーズ化されて順調に販売を伸ばしましたが、1985年道路交通法の改正によって原付免許で運転できなくなり、一気に販売が低迷しました。

そこで光岡自動車は、小型自動車製造から既存のクルマの内外装を改造してファッショナブルに変貌させる「レプリカ戦略」へと大きく舵を切りました。クラシックカーテイストの1987年発売のBUBUクラシックSSKを第1弾として、その後次々にレプリカモデルを投入しました。

さらに、シャシーとサスペンション、ボディパネルなど自社設計したZERO1を市場に投入。このモデルが保安基準をクリアして運輸省の型式認定を取得し、光岡自動車は日本で10番目の乗用車メーカーとして認可されました。

現在も自社開発のレプリカモデルの車種拡大を図り、また最新のスタイリッシュなクルマづくりにも挑戦しています。

●往年の代表的なモデル

1982年に発売したマイクロカーのBUBU50をシリーズ化して、次々とヒットさせました。

・1982年、BUBU50およびBUBUシャトル501を発売、1983年にBUBU502、1984年にBUBU503、1985年にBUBU504を発売してヒット

1985年の道路交通法改正によって、マイクロカーの販売が低迷。これを受け、マイクロカーの製造からレプリカモデルの製造へと方針変更して、クラシックテイストの個性的なクルマづくりを始めました。

1993_ビュート
1993_ビュート

・1987年、レプリカモデルの第一弾BUBUクラシックSSKがデビュー、ルパン三世の愛車として知られるメルセデスベンツSSKのレプリカ仕様

・1989年、スポーツタイプのBUBU356スピードスターを発売

・1993年には、レプリカモデル最大のヒットとなった高級クラシックモデルのビュート発売

●最近の代表的モデル

エンジン以外のシャシー、サスペンションなどのオリジナル化を進めたZERO1を市場に投入。このモデルが運輸省の型式認定を取得し、日本で10番目の乗用車メーカーとして認可されました。

2008_ヒミコ
2008_ヒミコ

・1994年、ZERO1(ゼロワン)発売、保安基準をクリアして型式認証を取得

・1998年、自社開発のシャシーと50ccエンジンを搭載したマイクロカー(MC-1、K-1、K-2)を発売

・1998年、日産プリメーラをベースにしたリョーガ(凌駕)発売

・2006年、ホンダNSXをベースにしたオリジナルフレームのファッションスーパーカーのオロチ発売

2014_リューギ
2014_リューギ

・2008年、オープンカーのヒミコ発売

・2014年、ロールスロイスシルバークラウドをモチーフにしたリューギ(流儀)発売

・2018年、創立50周年記念モデルのロックスターを発売

 

2018_ロックスター
2018_ロックスター

マイクロカーとクラシックカーテイストのクルマづくりを中心に50年余りが経ち、街中でも時々光岡自動車のクルマを見かけるようになりました。小規模メーカーゆえにできる完全受注生産と手作りという特長を生かして、今後も職人気質の個性的なクルマづくりに期待したいと思います。

(Mr.ソラン)

この記事の著者

Mr. ソラン 近影

Mr. ソラン

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までをやさしく解説することをモットーに執筆中。もともとはエンジン屋で、失敗や挫折を繰り返しながら、さまざまなエンジンの開発にチャレンジしてきました。
EVや燃料電池の開発が加速する一方で、内燃機関の熱効率はどこまで上げられるのか、まだまだ頑張れるはず、と考えて日々精進しています。夢は、好きな車で、大好きなワンコと一緒に、日本中の世界遺産を見て回ることです。
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