実感した新型レヴォーグのワゴンらしかぬマッスルボディの秘密【新型レヴォーグプロトタイプ試乗】

■現行モデル比でボディのねじり剛性を44%アップしているからサーキット走行も存分に楽しめる

2020年内の発売に向けて8月20日より先行予約がはじまったSUBARUの新型レヴォーグ。プラットフォームが新世代のSGP(スバルグローバルプラットフォーム)となり、パワートレインも完全新設計のCB18エンジンと、変速比幅を広げたリニアトロニック(チェーン式CVT)といったメカニズムが従来モデルから大きくレベルアップした走りにつながっているのは既報の通り。

そうしたメディア報道からの期待もあって、予約は好調に集まっているということです。かなりファンの期待も高まっているようです。

New Levorg GT-H
袖ヶ浦フォレストレースウェイでのプロトタイプ試乗では中間グレードのGT-Hに乗ることができた

さて、そんな新世代メカニズムに支えられた新型レヴォーグ(プロトタイプ)に、全長2.4kmの本格サーキット「袖ヶ浦フォレストレースウェイ」で試乗することができました。

ステーションワゴンというボディ形式はリヤの開口部が大きいですから、長い横Gのかかるサーキット走行ではネガを感じさせることも多いのですが、新型レヴォーグのボディはまったく音を上げる気配もありません。わざとステアリングを素早く切って振り回そうとしてみても、難なくこなしてしまいます。

そもそもリヤタイヤのメカニカルグリップが高く、リヤの落ち着きが高いのはSGPに共通する特徴ですが、新型レヴォーグではさらにワンランク上の接地性を感じます。

その理由についてエンジニア氏にヒアリングしたところ「ねじり剛性を44%アップしていることが効いているのではないでしょうか」というコメントを聞くことができました。さらにボディ剛性アップのポイントとして教えていただいたのが、リヤ開口部に仕込まれた『樹脂リンフォース』です。

levorg_body
ステーションワゴンボディのウィークポイントとなるリヤ開口部を樹脂リンフォースで強化する。手前に見えるのは加熱する前の樹脂部品

開口部のフロア側左右の空間に樹脂を詰め込むことでボディ剛性を上げるというアイデアは、ずいぶん昔に流行った発泡ウレタン充填によるボディ補強を思い出させるもの。

製造方法としては塗装の前段階で樹脂の素材を仕込んでおいて、塗装工程の後半で加熱炉にいれて焼き上げるときに、その素材が膨らむという仕組み。これによってボディのすき間を埋めるというアイデアです。そのほか構造用接着剤の適応範囲を拡大しているのも剛性アップにつながっているということです。

ところでボディ剛性と強度は別物で、主に剛性はユーザーがハンドリングや乗り心地といった領域で感じる性能、そして強度は万が一の事故時に衝突安全性として発揮する性能につながる要素です。

新型レヴォーグBピラー
新型レヴォーグはインナーフレーム構造を新採用。側突に対応して二つの素材を組み合わせたホットスタンプのBピラーもユニークだ

その強度面でのユニークなポイントが、2種類の素材を一気にホットスタンプ(熱間プレス)によって成型したBピラーの骨組みです。1500MPa級のかなり強い材料を上部に使うことで側突からキャビンを守りつつ、Bピラー根元を500MPa級とすることで変形させ、しっかりと衝突エネルギーを吸収する設計となっています。製法としては、1500MPa級の素材と500MPa級の素材をつないでからホットスタンプで成型するというもので、非常に凝った製法といえます。

スポーティグレードの「STI Sport」ではエンジンやサスペンション、AWD制御などを切り替えることで走りを「キャラ変」させる新機能がトピックスだったりする新型レヴォーグですが、このようにディテールまでこだわった設計により基本となるボディがしっかりさせているからこそ、走りの幅広さ、懐の深さにつながっているのです。

いずれにしても、サーキット走行でまったく違和感もなければ、大きな欠点を感じさせない新型レヴォーグの走りには驚かされました。公道で余裕の走りが味わえるのは間違いありません。

(山本晋也)

この記事の著者

山本晋也 近影

山本晋也

日産スカイラインGT-Rやホンダ・ドリームCB750FOURと同じ年に誕生。20世紀に自動車メディア界に飛び込み、2010年代後半からは自動車コラムニストとして活動しています。モビリティの未来に興味津々ですが、昔から「歴史は繰り返す」というように過去と未来をつなぐ視点から自動車業界を俯瞰的に見ることを意識しています。
個人ブログ『クルマのミライ NEWS』でも情報発信中。2019年に大型二輪免許を取得、リターンライダーとして二輪の魅力を再発見している日々です。
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