死亡事故の損害賠償とは?損害賠償の請求権は遺族が引き継ぎ賠償を請求【自動車用語辞典:交通事故編】

■死亡するまでの治療費、葬儀関係費、死亡による逸失利益、慰謝料などが請求可能

●賠償額は、収入や仕事の内容、男・女や年齢の違い、扶養の家族の有無で変動

死亡事故で請求できる損害には、被害者が死亡するまでの治療費、葬儀関係費用、死亡による逸失利益、慰謝料などがあり、被害者の遺族が相続します。

死亡事故の損害賠償の算定額について、解説していきます。

●死亡事故で請求できる損害

交通事故によって被害者が死亡した場合、損害賠償の請求権は被害者の遺族が引き継ぎます。遺族が請求できるのは、積極損害の葬儀費用や消極被害の逸失利益、慰謝料です。

交通事故例
交通事故例
死亡事故の損害補償項目
死亡事故の損害補償項目

●死亡事故の積極損害(葬儀関係費)

葬儀関係費(通夜、告別式、祭壇、埋葬など)が請求できます。

補償額には、自賠責保険と任意保険、弁護士会基準がありますが、裁判では弁護士会の基準が採用されることが多いです。

・自賠責基準

葬儀費は60万円までですが、必要性が認められれば100万円まで請求できます。

・任意保険基準

各保険会社独自の基準内で支払われ、自賠責保険の基準よりも若干高い設定です。

・弁護士会基準

原則として150万円ですが、下回る場合は実費額です。

また、被害者が死亡するまでに治療を要した場合は、その分を請求できます。

自賠責保険の基準では、被害者が死亡するまでの損害は「傷害による損害」の基準が準用され、治療関係費や休業損害、障害慰謝料が申請できます。

●死亡事故の消極損害(逸失利益)

死亡事故では、消極損害として逸失利益が請求できます。逸失利益は、被害者が生きていれば要したであろう年間生活費相当分を年収から控除して算定します。

死亡事故の逸失利益算定方法は、以下の通りです。

逸失利益 = 年収 × (1-生活費控除率)×(就労可能年数に対応するライプニッツ係数)

・年収

サラリーマンや公務員などの給与所得者は事故前の給与をベースとし、自営や自由業などの事業所得者などは収入証明書をベースとします。

家事従事者や学生、年少者は賃金センサス(厚生労働省公表値)をベースにします。

・生活控除率

生活費控除率は、一家の支柱の場合で30~40%、女子(主婦、独身、幼児を含む)で30%、男子(独身、幼児を含む)で50%です。

・就労可能年数

就労可能年数は、死亡時から67歳までの期間とし、未就労の幼児や小学生などは18歳から67歳までの49年間です。

大学生の場合は、卒業後の年齢から67歳まで、68歳以上で収入を得ていた場合は平均余命の1/2を就労可能年数とします。

・ライプニッツ係数

将来受け取るはずの金銭を一括で受け取る場合は、それを運用したと仮定して得られる利息分(中間利息)を控除しなければいけません。ライプニッツ係数とは、元金に利息が加算され、これを新しい元金としてさらに利息が加算される計算式です。

●死亡事故の慰謝料

死亡事故の慰謝料は、自賠責保険と任意保険、弁護士会の支払い基準があります。

・自賠責保険基準

死亡事故の支払い限度額は、逸失利益や慰謝料、葬儀関係費などをすべて含めて3000万円です。そのうちの慰謝料の支払い基準額は、死亡者本人の慰謝料350万円、遺族の慰謝料は請求権が1名で550名、2名で650万円、3名以上で750万円、被扶養者がいる場合は200万円上乗せします。

・任意保険基準

各保険会社とも請求者人数に関係なく、一家の支柱であった場合1450万円、高齢者(65歳以上で一家の支柱でない)は1000万円、18歳未満は1200万円、上記以外(妻、独身男女)は1300万円です。

・弁護士会基準

最も高く、交渉する際の目標値ですす。

一家の支柱の場合2800万円、母親と配偶者は2400万円、その他は2000~2200万円です。


不幸にも死亡事故が起こってしまった場合、損害賠償はすべて被害者の遺族が相続します。

損害賠償額は、被害者の収入やどのような仕事をしているか、男性か女性か、若年か老年か、扶養の家族を有しているかなどで大きく異なります。

(Mr.ソラン)

この記事の著者

Mr. ソラン 近影

Mr. ソラン

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までをやさしく解説することをモットーに執筆中。もともとはエンジン屋で、失敗や挫折を繰り返しながら、さまざまなエンジンの開発にチャレンジしてきました。
EVや燃料電池の開発が加速する一方で、内燃機関の熱効率はどこまで上げられるのか、まだまだ頑張れるはず、と考えて日々精進しています。夢は、好きな車で、大好きなワンコと一緒に、日本中の世界遺産を見て回ることです。
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