法定点検とは?12ヶ月および24ヶ月ごとの実施が義務付けられた点検【自動車用語辞典:定期点検編】

■クルマが故障なく安全に走行できることを定期的に確認

●未実施でも刑罰規定はないが、故障や不具合なく安全に走行を続けるためには不可欠

クルマの点検には、ユーザー自身が行う日常点検と、法律で定められた法定12ヶ月点検および法定24ヶ月点検があります。法定点検は、クルマが故障なく安全に走行できることを定期的に確認して、要すれば整備するのが目的です。

定期的な実施が義務付けられている法定12ヶ月点検と法定24ヶ月点検について、解説していきます。

●法定点検とは

「道路運送車両法」では、クルマの使用者は点検および必要に応じて整備することによって、保安基準に適合するように維持しなければならないと規定されています。日常点検と法定12ヶ月点検、法定24ヶ月点検とも、ユーザーの義務とされています。

日常点検が常日頃からユーザーが行う簡単な点検であるのに対し、法定点検は定期的に実施する点検項目が多い本格的な点検です。法定点検には専門知識や技術が必要なので、通常はディーラーのサービスや整備業者に依頼します。

法定点検は、エンジンや動力伝達系、ブレーキ、足回りなど重要な項目について点検します。

実施しなくても罰則はありませんが、安全かつ快適な走行を続けるためには法定点検の実施は必要です。

●法定12ヶ月点検の点検項目

通常法定24ヶ月点検は車検と同時に実施しますが、12ヶ月点検は罰則がないこともあり、実施しているユーザーは4割にも満たないのが実状です。

26項目の点検項目があり、代表的な項目は以下の通りです。

・操舵装置(ステアリング)
パワーステリングのベルトの緩みや損傷

・制動装置(ブレーキ)
ブレーキペダルの遊び、効き具合
駐車ブレーキの引きしろ(踏みしろ)とブレーキの効き具合
ホースおよびパイプの漏れや損傷、取り付け状態
マスターシリンダー、ホイールシリンダー、ディスクキャリバの液漏れ
ブレーキディスクおよびパッドの隙間、パッドの摩耗

・走行装置
タイヤの状態、ホイールナットやボルトの緩み

・動力装置
クラッチペダルの遊び、切れたときの床板との隙間
トランスミッションおよびトランスファーのオイル漏れ、オイル量
プロペラシャフトおよびドライブシャフトの連結部の緩み

・電気装置
点火プラグの状態、バッテリターミナルの接続状態

・原動機(エンジン)
排気の状態、エアクリーナーエレメントの状態、潤滑オイル漏れ、水漏れ

・排気管とマフラー
取り付けの緩みと損傷

●法定24ヶ月点検の点検項目

法定24ヶ月点検は、通常2年ごとの車検の時に同時に実施します。点検項目は、法定12ヶ月点検の検査項目に以下の点検を加えた56項目です。

・操舵装置(ステアリング)
ハンドル操作不具合、ギアボックス取り付けの緩み、ホイールアライアメント、パワーステアリングのオイル漏れとオイル量、ブレーキディスクとパッドの摩耗および損傷

・走行装置
フロントホイールベアリングおよびリアホイールベアリングのガタ

・緩衝装置
サスペンションの取り付け部と連結部の緩み、ガタ、損傷
ショックアブソーバーの油漏れ、損傷

・動力装置
デファレンシャルのオイル漏れ、オイル量

・電気装置
電気配線の接合部の緩みおよび損傷

・原動機(エンジン)
燃料装置の燃料漏れ

・ばい煙、悪臭のあるガス、有害なガス等の発散防止装置
ブローバイガス還元装置のメターリングバルブの状態、配管の損傷
燃料蒸発ガス排出抑制装置の配管損傷、キャニスターの詰まりと損傷、配管の損傷
一酸化炭素等防止装置の機能

・排気管とマフラー
マフラーの機能

・フレームとボディ
緩みと損傷


車検は、その時点で保安基準に適合しているかを検査して確認するものです。対して法定点検は、クルマが故障なく走行できるかを確認して、未然に事故や故障を防いで性能を維持するのが目的です。

法定点検は実施しなくても刑罰規定はありませんが、故障や不具合なく安全に走行を長く続けるためには、必要な点検です。

(Mr.ソラン)

この記事の著者

Mr. ソラン 近影

Mr. ソラン

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までをやさしく解説することをモットーに執筆中。もともとはエンジン屋で、失敗や挫折を繰り返しながら、さまざまなエンジンの開発にチャレンジしてきました。
EVや燃料電池の開発が加速する一方で、内燃機関の熱効率はどこまで上げられるのか、まだまだ頑張れるはず、と考えて日々精進しています。夢は、好きな車で、大好きなワンコと一緒に、日本中の世界遺産を見て回ることです。
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