総合力で勝るフィットクロスター、軽快な走りのロッキー/ライズ【フィットCROSSTARとロッキー/ライズ】

●快適性に優れたフィットCROSSTAR、パワフルで元気なロッキー/ライズ

1月・2月と登録車販売台数1位となったライズ。2月に満を持して登場したフィットCROSSTAR。

これまで2記事にわたって、注目のエンジンや使い勝手、居住性、積載性能について比較してきました。本記事では走行性能について、注目の両車を比較した結果をレポートします。

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■高速直進安定性
■コーナリング
■乗り心地性能
■ロードノイズ
■動力性能

■高速直進安定性 フィットCROSSTAR・8点 ロッキー/ライズ・8点

100km/h程度の高速直進性は良い。ただし足の柔らかさがあるので、ボディモーションは大き目なフィットCROSSTAR
100km/h程度だと直進性が良い。ボディの抑えも効いており、安心感が高いロッキー/ライズ

2台とも高速直進性は良く、ステアリングにそっと手を添えていれば、気を使わなくとも直進していきます。

轍を跨いだり路面のギャップを踏んでも、ステアリングが取られたり、サスペンションが跳ね上げられることもなく、終始、安心して運転ができます。高速走行中に横風を受けると、2台とも左右へ流される印象はありますが、それも微小な影響です。

フィットCROSSTARはホンダセンシングを全車標準装備、ロッキー/ライズにもACC、LKAS(レーンキープコントロール)の設定があります。動作も優秀で、適度なステアリング介入をしてくれます。

横風に対する安定性が高まるとさらに良くなりますが、背が高いコンパクトカーに、これ以上を望むのは贅沢なことかもしれません。高速直進性は、引き分けとしました。

■コーナリング フィットCROSSTAR・7点 ロッキー/ライズ・7点

フィットCROSSTARはボディの動きが大きめ。ピッチやロールが大きくて早い
コーナー初期のロールやピッチはフィットCROSSTARよりは小さめ。だが絶対的には大きい。

フィットCROSSTARは、低中速(~60km/h)から少し重めの操舵力をしています。操舵角に対するクルマの応答はキビキビとしていますが、ソフトな足回りが影響し、コーナーでのロールや加・減速時のピッチングがやや大きめです。

フィットHOMEよりも、CROSSSTARは視線が高いため、視線の変化はより大きく感じます。また、切り返しのシーンではロールが早めに「ユサッ」と発生し、ボディモーションを感じさせられます。

ロッキー/ライズは、低中速では比較的軽めの操舵力をしており、応答性もキビキビとはしていませんが、コーナーを軽やかにぬける印象があります。ただし、ブレーキングでのピッチングやコーナーでのロールはやや大きめです。大きなボディモーションが出にくいように、ハンドリングは安定方向にセッティングされています。

操作に対するロールやピッチといったモーションの抑制が苦手、という点は同じですが、積極的にステアリング操作をするクルマではないということを念頭に置けば、コーナリングも引き分けと判断します。

■乗り心地性能 フィット・8点 ロッキー/ライズ・7点

路面との辺りが柔らかく、突起ショックもしっかりといなすフィットCROSSTAR
ショックがやや大きめ。突起でガツンとくる瞬間がある

フィットCROSSTARは、タイヤと路面とのあたりが柔らかく、路面表面の凹凸を綺麗にいなす乗り心地をしており、旧型フィットに対し、タイヤが1ランク柔らかくなったような印象も受けます。

CROSSTARはHOMEよりも外径が大きなタイヤを装着しています(CROSSTAR 185/60R16、HOME 185/55R16)が、HOMEも同じようなフィーリングを持っています。これは、車体の剛性がしっかりと確保されているために、ショックアブソーバーがしっかりと仕事をしているから、と推測します。

ただし、高速走行中では上下のフワ付きを感じます。上屋の動きがもう少し抑制されると、より安心感が増すと考えられます。

ロッキー/ライズも、やや上下にフワフワする印象があります。その分、路面凹凸から受ける突き上げは小さく、多少荒れた路面を走っていても、上屋がぐらぐらするようなことはありません。

細かく見ると、走行中にステアリングやペダルが微振動するようなシーンもありますが、感覚を研ぎ澄ましていないとわからない程度ですので、さほど気になるものではありません。

フィットが持つタイヤが柔らくなったようなフィーリングは、どなたでもその違いが分かるはず。乗り心地は、フィットの方が優秀です。

■ロードノイズ フィット・8点 ロッキー/ライズ・7点

ロードノイズの抑え込みが見事なフィットCROSSTAR
高速走行となるとややうるさく感じるロッキー/ライズのロードノイズ

昨今のコンパクトカーの中で、トップレベルに静かな新型フィット。特に中低速(~60km/h)では、バツグンの遮音性能をもっています。

「サー」という小さめのロードノイズで音量も小さく、車内の快適性を引き上げています。高速走行時のノイズは「ゴー」と言う音になり、レベルも増えますが、それでもこのカテゴリでは相当に静かです。フィットSROSSTARは、遮音機能付フロントウインドウガラスや、吸遮音材がバツグンに上手くできていると考えられます。

対するロッキー/ライズは、車室内に入ってくるロードノイズが車速によって印象が変わります。低中速(~60km/h)まではおおむね静かですが、高速走行となると常に「コー」というロードノイズが(不快ではありませんが)増加していく印象あります。

ロードノイズの小ささは、フィットCROSSTARの方が優れています。

■動力性能 フィットCROSSTAR・8.5点 ロッキー/ライズ・8点

なめらかで力強いe:HEV、燃費も良い
パワフルな1.0Lターボエンジンのロッキー/ライズ

フィットCROSSTARのe:HEVは、発電と駆動、2つの役割を持ちます。このエンジン、発電時の騒音が小さく、しかもアクセルペダルの踏み方に応じてエンジン音が上昇するため、フィーリングが良いです。粗めのエンジン音が「ガー」と発生するノートe-POWERとは違い、e:HEVはエンジンサウンドもクリアな印象があります。

ただし、1200kgにもなる車重が影響してか、加速力は少し弱い印象があります。

対するロッキー/ライズに搭載されている直列3気筒1.0Lガソリンターボ(98ps/14.3kg・m)は、低回転からクルマを前へ押し出す力が強く、またエンジン回転上昇のフィーリングには心地よさを感じます。エンジンサウンドも中速以降で力強く、積極的にエンジンを回して走ることが面白くも感じます。

加速の良さは、980kgという軽い車重が影響していると考えられます。

燃費は、WLTCモード燃費(カッコ内は約200㎞の評価走行を終えたあとの実燃費)で、フィットe:HEV CRSSSTAR 2WDが27.2km/L(23.5km/L)、ロッキー/ライズe-POWER X 2WDが22.8km/L(18.0km/L)でした。カタログ値には及びませんでしたが、e:HEVの燃費性能は魅力的です。

加速の滑らかさ、エンジンの質感、エンジンノイズ、加速フィールなど、総合的に考え、フィットの方が若干優勢としました。

※100点満点の評価は記事末尾に掲載しました。

■まとめ

フィットCROSSTARの乗り心地と音振性能の高さ、ロッキー/ライズのエンジンフィーリングや軽快な走り、どちらを選んでも、満足できると考えられます。ただし両車とも、高速走行での安定感はもう少し欲しいところ。多くの荷物を積む機会もあるため、余計にフワ付きが発生してしまいます。

現状よりも、ボディモーションをおさえる方向に、ショックアブソーバーなどは引き締めたセッティングにした方が、良いクルマになると考えられます。路面との当たりの柔らかさは若干失うことにはなりますが、「アウトドア」を強調した車両コンセプトを生かすならば、ぜひとも修正して欲しいポイントです。

(自動車ジャーナリスト 吉川賢一/写真:エムスリープロダクション 鈴木祐子)

【ホンダフィット e:HEV CROSSTAR 2WD】
車両本体240万8610円+Mオプ18万1500円+Dオプ31万0266円(10%税込)

■コーナリング性能…7点/少し重さを感じる操舵力だが、滑らかですべるような回転フィール。ブレーキングでの視線変化やコーナーでのロールはやや大きめ
■高速直進安定性…8点/素の直進性が高くて安定感がある。LKASの動作も優秀。
■乗り心地…8点/フワ付きややあるが、軟らかく路面の突起を華麗にいなしている。
■ロードノイズ…8点/コンパクトカーの中でTOPレベルに静か。
■エンジンフィール…8点/エンジン作動時は綺麗な音質で、踏み方に応じたエンジン回転をする。
■加速フィール…8点/速くはないが滑らかな加速。エンジンのサウンドもノイズ感がなくクリア。
■走りの質感…9点/路面との当たりが柔らかく、路面のざらつきを上手く消している。
■居住性…8点/前席は快適な広さとシートの形状が良い。後席も広い。
■インテリアの質感…8点/視界の邪魔をする障害がなく、シンプルな造形ですっきりしている。素材も良い。
■コストパフォーマンス…7点/ハイブリッド247万円ナビ無しはスタート価格として高い。

総合点…79点

コメント:コンフォート性能が飛躍的に伸びた新型フィット。その魅力はクロスターも変わりなく持ち合わせている。ロードノイズは静かだがボディモーションの抑えはやや足りていない。ホンダセンシング標準装備、サイドエアバッグ装備、9インチナビは別売、クロスター245万円はリーズナブルではないが、どう受け止められるか。

【ダイハツロッキー G 2WD】
車両本体200万2000円+付属品合計29万5801円 (10%税込)

■コーナリング性能…7点/適度な操舵力で軽め。軽やかにコーナーをぬける印象。ブレーキングでの視線変化やコーナーでのロールはやや大きめ
■高速直進安定性…8点/高速走行での安定感は高い。
■乗り心地…7点/フワ付きややあり、路面外乱でヒョコつき感じる。
■ロードノイズ…7点/一般車並み。静かではない。
■エンジンフィール…8点/滑らかに加速。CVTのラバーバンドフィールはさほど感じずリニア
■加速フィール…8点/1.0リットルにしてはパワフル。サウンドも軽快。
■走りの質感…8点/石畳路ではザラザラ、ステアリングの振動もややある。その他微振動を感じる。
■居住性…8点/前席は快適な広さ。シートもソフトで座り心地良い。後席も広い。タント譲り。
■インテリアの質感…7点/良くまとまっている。プラスチックパーツはやや多め。
■コストパフォーマンス…10点/このデザインと広い荷室を持つクルマで税込200万円をきる価格設定は安い。

総合点 78点
コメント:ベビーRAV4なデザインはカッコ良いと感じる。小回りもよく利くので狭い道や駐車場でも運転が怖くない。荷室も十分にあり、例えば流行りのソロキャンプにも適している。(196万円のカローラには標準装備だった)ディスプレイオーディオがメーカーオプションで15万円弱の価格設定は残念だが、従来型のナビゲーションよりは安く済むため良い。

※個別項目は10点満点、総合点は各項目を集計したものです

この記事の著者

Kenichi.Yoshikawa 近影

Kenichi.Yoshikawa

日産自動車にて11年間、操縦安定性-乗り心地の性能開発を担当。スカイラインやフーガ等のFR高級車の開発に従事。車の「本音と建前」を情報発信し、「自動車業界へ貢献していきたい」と考え、2016年に独立を決意。
現在は、車に関する「面白くて興味深い」記事作成や、「エンジニア視点での本音の車評価」の動画作成もこなしながら、モータージャーナリストへのキャリアを目指している。
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