スウェーデンとイタリアン・デザインの幸福な出会い。ボルボ 780【ネオ・クラシックカー・グッドデザイン太鼓判:輸入車編】

80~90年代輸入車のグッドデザインを振り返る本シリーズ。第20回は、北欧の質実剛健なボディに、イタリアの洒脱なセンスを取り込んだ高級クーペに太鼓判です。

■イタリアン・クラシックな佇まい

780・メイン
760をベースとしながら、ボディパネルはすべて新しいものとした

80年代に入り、「四角いレンガ」の異名をとった200シリーズに対し、直線基調によってさらにスクエア感を増した700シリーズ。そのラインナップの頂点として企画された2ドアクーペが、1985年発表の780です。

ベースとなった760と同一のホイールベースを持ちながら、単なる2ドア化ではなく、何とすべての外板パネルを専用に設計。もともとウエッジのきいていたボディは、リアデッキを長くとった古典的なクーペスタイルを獲得しました。

780・リア
リアデッキの長いクラシックなクーペスタイルがエレガントなリアビュー

サイドウインドウは、ブラックアウトさせたBピラーで広大なガラスエリアを表現。寝かせたピラーによる軽快なキャビンとの組み合わせにより、四角いボディでありながら、どこかエレガントな佇まいを手に入れました。

フロントは760と同じメッキグリルながら、細い格子が上品な雰囲気を。また、サイドウインドウ周囲にも前後端を相似形とした幅広いメッキモールを流すことで、セダンとは異なる高品質感を生み出しました。

■節度あるアレンジに見るセンスのよさ

780・インテリア
ウッドパネルとイタリア製の本革でまったく別の世界観を作ったインテリア

インテリアも基本造形は760に準じますが、美しく光るウッドパネルとイタリア製の本革シートが異なる世界観を作っています。その本革の贅沢な使い方と、整然としながら質感の高いインパネの組み合わせが絶妙です。

ボルボとベルトーネは、262Cなど70年代中頃から深い関係にあったようですが、生産だけでなく、スタイリングまで依頼したのはこの780が初めてだとされています。

当初はより大胆な提案もあったと言われていますが、すべてのボディパネルを変えながらもベースの700シリーズに寄せたことは、かえってベルトーネのアレンジの実力を見せつけることになったようです。

●主要諸元 ボルボ 780 (4AT)
全長4790mm×全幅1755mm×全高1415mm
車両重量 1480kg
ホイールベース 2770mm
エンジン 2848cc V型6気筒SOHC
出力 145ps/5100rpm 24.0kg-m/3750rpm

(すぎもと たかよし)

この記事の著者

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すぎもと たかよし

東京都下の某大学に勤務する「サラリーマン自動車ライター」。大学では美術科で日本画を専攻、車も最初から興味を持ったのは中身よりもとにかくデザイン。自動車メディアではデザインの記事が少ない、じゃあ自分で書いてしまおうと、いつの間にかライターに。
現役サラリーマンとして、ユーザー目線のニュートラルな視点が身上。「デザインは好き嫌いの前に質の問題がある」がモットー。空いた時間は社会人バンドでドラムを叩き、そして美味しい珈琲を探して旅に。愛車は真っ赤ないすゞFFジェミニ・イルムシャー。
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