見た目はキレイでも中身はボロボロ、プリンス・グロリア スーパー6再生のヤマ場は、内装の西陣織を見つけることだった!【名車再生裏話・内外装編】

■50年以上前の西陣織を手に入れる! そんな奇跡が名車再生を後押し

2020年2月1 日に、有志によって構成されている日産名車クラブによるレストアが完了し、お披露目されたプリンス・グロリア スーパー6  第2回日本グランプリ T-VIレース仕様車。

ここでは、名車再生に携わったクラブ員の苦労したことや驚いたことなどの声を紹介します。

プリンス・グロリア スーパー6の外観02
完成したクルマをクラブ員やOBなどが囲んで記念写真

まずはボディ回り。担当したコバヤシさんは最初に座間の記念庫で現車確認した際キレイだったので、今回はボディを磨けば終わりかなと思っていたそうです。しかし、バラしていくうちにこれは大変だと感じたそうです。

まず、リアガラスを外してみたら腐って穴が開いていたり、ワイパーモーターを外すと腐っていたり。さらにボディにあるスジを触ってみるとパテがボロっと落ちることもあったとのこと。

プリンス・グロリア スーパー6の外観03
プリンス・グロリアスーパー6のトランク

これほど酷い状態では、とてもクラブメンバーだけの力で再生できないということになり、試作部門に相談。古いクルマを教育という名目で再生しているので、モノコックではないフレーム構造のクルマを学ぶ機会として参加してもらったそうです。

試作部門の中でも技能五輪で金メダルを受賞するような優秀なメンバーを招集し、パテ埋めでごまかすということではなく鈑金を行って修復したとのこと。また塗装もクラブメンバーでは手に負えないので、モーターショーのショーカーなどを製作しているメンバーに塗装を依頼して完成させました。

名車再生クラブ01
ボディ回りを担当したクラブ員

続いて外装を担当したハスヌマさんは、キレイに仕上げてもらったボディにいかに傷を付けずに様々なパーツを装着するか…、という部分に気を遣ったと話してくれました。中でもゼッケンとクラスのT-VIのステッカーは、レストア前は塗装されていたものをステッカーで再現しました。特にT-VIの楕円形のステッカーは形も揃っていなかったので、苦労して揃えたそうです。

名車再生クラブ02
外装を担当したクラブ員

また欠品しているPマークのエンブレムやフロントグリルも前期型のパーツが装着されていたので、後期のメッシュタイプに交換しています。そしてヘッドライトのテーピングもレストア前は青でしたが、資料に合わせてグリーンに変更。さらに貼り方も当時のままを再現しました。

最も苦労したところは現在のモノとはピッチが異なる旧式のネジと現在のネジが混在していたことだそうです。

プリンス・グロリア スーパー6の外観04
グリルは後期型に変更され、ライトのテープも緑に変更

●奇跡が起こった内装の再生

内装を担当したユカワさんは、プリンス・グロリア スーパー6を再生すると聞いたときにヤバイな…と感じたそうです。

その理由はプリンス・グロリア スーパー6のマストアイテムはドアトリムとシートに西陣織が使われているからです。しかもこのクルマのドアトリムにはビニールのパーツが使われていたため、西陣織をどうするか?と大変困ったそうです。

名車再生クラブ03
内装を担当したクラブ員

日産だけでは対応できないと思いプリンスマニアの人にも協力を求めたところ、なんと奇跡的に西陣織が見つかりました。これでドアトリムはOKとなりシートも完成!と思ったところ、実はシート生地の色が違うことに気がついてしまいました。シート生地は2色あって、またその生地も奇跡的に見つかったので、完成の直前に張り替えたそうです。

また、オリジナルに近づけるためにステアリングをナルディ風の3本スポークに交換。装着させるためボスを作って装着する。またインパネに貼られた筆記体のグロリアのエンブレムを探して発見して装着することで、当時のスーパー6と同じ仕上がりになったと胸を張って話してくれました。

プリンス・グロリア スーパー6の内装02
50年以上前の西陣織を入手し、オリジナルを再現したシート

そして電装系を担当したサトウさんは、ケーブルなどはすべて溶けてボディにくっついてしまっていて、ハーネスはすべて作り直したと話してくれました。しかも高級車だったため、結構な数の回路があり、これらを1本1本つなぎ合わせて問題ないかをチェックしたとのこと。

名車再生クラブ04
電装系を担当したクラブ員
プリンス・グロリア スーパー6の内装01
ステアリングを装着するためにボスを制作したり、タコメーターも後付けされた

また、元々付いていたディストリビューターがよくわからないものだったので交換。さらに、当時の資料で車両を確認して、スカイラインGT用にキープしていたタコメーターを追加し完成となりました。

名車の再生は技術力に加えて根気、そして奇跡を起こす運がないと成功しないということがよくわかりました。

(萩原 文博)

この記事の著者

萩原 文博 近影

萩原 文博

車好きの家庭教師の影響で、中学生の時に車好きが開花。その後高校生になるとOPTIONと中古車情報誌を買い、免許証もないのに悪友と一緒にチューニングを妄想する日々を過ごしました。高校3年の受験直前に東京オートサロンを初体験。
そして大学在学中に読みふけった中古車情報誌の編集部にアルバイトとして働き業界デビュー。その後、10年会社員を務めて、2006年からフリーランスとなりました。元々編集者なので、車の魅力だけでなく、車に関する情報を伝えられるように日々活動しています!
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