マイカー依存度が高い地方の公共交通はどうあるべき? 日立市がMaaS実験を開始!

■スムーズな移動は地方の活性化に欠かせない

出発地から目的地までの交通手段を、一気通貫で案内・決済しちゃおうという次世代の交通サービス「MaaS(マース)」の普及が各地で進んでいます。トヨタは、西日本鉄道と組んで福岡市、北九州市で行っていた「マイルート」というサービスを全国展開することを発表しましたし、高速バスで有名なWILLERは、観光アクティビティの予約までできるサービスを、北海道や京都で実施しています。

そんな中、茨城県日立市が、日立製作所や茨城交通と組んで新たなMaaSの実証実験を始めました。この実証実験は、大都市のように交通手段が充実しておらず、自家用車への依存度が高い地方都市で、いかに公共交通の利便性を高めるか検証しようというもの。具体的には「ナビタイムジャパン」の技術を使った「Hitachi City MaaS Project」というMaaSアプリを使って、以下のようなサービスを実現するそうです。

アプリ画面
アプリ「Hitachi City Maas Project」の画面

(1)茨城県内すべての既存交通手段を組み合わせた一元的な経路案内
(2)域内の新しい交通手段「通勤型デマンドサービス」と「ラストワンマイル型デマンドサービス」の予約
(3)日立市内バス1日乗車券の購入(※2月中旬より実施予定)

実験エリアの概要
日立地域MaaSの概要

●バス停からの移動をよりスムーズに

上で述べた(2)について補足しましょう。「通勤型デマンドサービス」とは「勝田・東海エリア~日立グループの各事業所」間を通勤する方向けのオンデマンドバスサービス。アプリから乗降の予約が可能で、予約のないバス停はスキップされるので、自家用車に近い効率でバス利用ができるというものです。運賃は片道500円。

もうひとつの「ラストワンマイル型デマンドサービス」は、大沼BRT(Bus Rapid Transit)バス停と居住者の家の間をつなぐタクシーサービス。「バス停と目的地」の間のスムーズな移動手段を提供しようというもので、予約が複数入った場合は相乗り運行も行うとのこと。運賃は無料です。

タクシーサービス
ラストワンマイル型デマンドサービスのタクシー車両

アプリを使って集められた移動のデータは可視化と分析を行い、将来のあらたなモビリティサービスの導入や交通サービスの連携に用いられるとのこと。いまや移動手段の確保は過疎化対策の重要な要因ともなっているため、今回の日立市の取り組みに注目している自治体も多いはず。実証実験の期間は1月28日から2月28日まで(デマンドサービス2月3日開始)。日立市へお出かけの方はぜひ利用してみてください。

データの流れ
集めた移動のデータは可視化・分析が行われる

(文:角田伸幸)

この記事の著者

角田伸幸 近影

角田伸幸

1963年、群馬県のプロレタリアートの家庭に生まれる(笑)。富士重工の新米工員だった父親がスバル360の開発に立ち会っためぐり合わせか、その息子も昭和期によくいた「走っている車の名前が全部言える子供」として育つ。
上京して社会人になるも車以上に情熱を注げる対象が見つけられず、自動車メディアを転々。「ベストカー」「XaCAR」で副編集長を務めたのち、ポリフォニー・デジタルにてPlayStation用ソフトウェア「グランツーリスモ」シリーズのテキストライティングに携わる。すでに老境に至るも新しモノ好きで、CASEやパワートレインの行方に興味津々。日本ディープラーニング協会ジェネラリスト検定取得。大好物は豚ホルモン(ガツとカシラ)。
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