最新の先進安全装備を完備したロッキー、静かで乗り心地の良いクロスビー【ロッキー&クロスビー・その3】

●高速直進性に優れるロッキー、乗り心地に優れるクロスビー

あいにくの雨天だったが、怖さは一切なかった。
荒れた路面だと直進性はやや不安があった。

ロッキー/ライズが大人気です。2019年12月の登録台数は、ロッキーが3514台でライズが9117台、コンパクトSUVカテゴリ4位と1位を獲得しました。これまで、同カテゴリでワンツーの常連だったC-HR(12月:3577台)とヴェゼル(12月:2660台)に取って代わるほどの市場動向となっています。

おそらく、今後もこの様相は続くと思われます。ロッキー/ライズと同じく5ナンバーサイズで、ガチンコ競合となるスズキクロスビーは、12月に1283台、ロッキー/ライズと比較すると勢いはないものの、高いデザイン力と、国内のキャンプブームもあり、いまだ注目の一台です。

今回は、絶好調のロッキーと、発売後2年が経つクロスビー、この2台の操縦安定性や乗り心地、ロードノイズといった、走りの違いを比較しました。

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■高速直進安定性
■コーナリング
■乗り心地性能
■ロードノイズ
■動力性能

■高速直進安定性 ロッキー:8点/クロスビー:7点

全幅1700ミリ以下というコンパクトサイズに抑えた2台。車幅に自主制限をかけ、少しハイトなSUVとなったことが影響し、やはり直進安定性は高くはありませんでした。強い横風や路面外乱を受けると、ハンドルをまっすぐ持っていても、進路が乱される量は大きく感じました。

比較的高速直進性が良く、まっすぐ走りやすいのはロッキーの方。ロッキーにはタイヤサイズが195/60R17(ダンロップENASAVE EC300+)が装着されており、クロスビーは175/60R16(ブリヂストンECOPIA EP150)。やや幅狭なタイヤが影響しているのかも知れません。

また、ロッキーにはACCとLKC(レーンキープコントロール)のオプション設定がありますが、クロスビーには前走車追従機能の無いクルーズコントロールと車線逸脱警報のみ。他のクルマでACCに慣れてしまっていると、少し不便に感じてしまいます。

直進性の安心感が高い
綺麗な路面ならば直進性は高い。

■コーナリング ロッキー:7点/クロスビー:7点

コーナリングに関しては2台ともにさほど印象は変わりません。ロッキーは、低中速(~60km/h)から軽めの操舵力で、操舵に対する応答はマイルドな印象があり、キビキビしたフィーリングではありません。高速走行時も印象は同じくマイルドで、終始安定したハンドリング性能です。

また、ソフトな足回りが影響し、コーナーでのロールや加・減速時のピッチングはやや大きめですが、急激な変化は起きませんので、懐の深さを感じられるような乗り味です。

クロスビーもほぼ同じ印象ですが、あえて違いを挙げるならば、切り立ったフロントウィンドウの影響で運転席からの視界が広く感じますので、コーナーでの見切りがよく、この点はクロスビーのほうがいい、といえるでしょう。

ややフワフワするサスの設定の為、ピッチングやロールのボディモーションは大き目。
クロスビーもボディモーションは大き目。

■乗り心地性能 ロッキー:7点/クロスビー:7点

ロッキーの乗り心地は、やや上下にフワフワする印象があります。その分路面凹凸から受ける突き上げは小さく、多少荒れた路面を走っていても、上屋がぐらぐらするようなことはありません。細かく見ると、高速走行時にステアリングやペダルが微振動するシーンもありますが、感覚を研ぎ澄ましていないとわからない程度ですので、さほど気になるものではありません。

クロスビーも上下にフワフワと動くような動きをしています。ただ、突き上げも小さく突起乗り越し時のノイズが比較的小さいので、乗り心地が良く感じるのは、クロスビーの方でしょう。

両者とも車重1000kg前後と非常に軽量なクルマですので、例えば標準装着されているタイヤホイールからインチアップをしてバネ下重量が増えてしまった場合、途端に乗り心地のバランスが崩れる可能性があります(バネ下重量が増えると「バネ下のバタつき」が起き、不快な振動の発生につながります)。

ショックは小さく当たりは丸いが、ややフワフワする。
ショックだけならば、ロッキーよりも良い。

■ロードノイズ ロッキー:7点/クロスビー:8点

ロッキーの室内に入ってくるロードノイズは、車速によって印象が変わります。低中速(~60km/h)まではおおむね静かですが、高速走行となると常に「コー」というロードノイズが(不快ではありませんが)聞こえます。

対するクロスビーは、低中速から高速走行までロッキーよりも比較的、静かな印象があります。前述したようにノイズが少ないことで、突起乗り越し時のショックも丸く感じます。

広い室内空間をもつクロスビーですから、もう少しロードノイズは多き目を想定していましたが、車体が持つ遮音性能とタイヤ性能(トレッドパターンや小さなサイズ、軽さなど)等が効き、優れているように聞こえたのでしょう。ロードノイズの小ささはクロスビーの方が優れていました。

あと一歩、ロードノイズの遮音が欲しい所。
小さなタイヤでロードノイズは比較的静かだった。

■動力性能 ロッキー:7点/クロスビー:7点

ロッキーに搭載されている直列3気筒1.0Lガソリンターボ(98ps/14.3kg・m)は、低回転からクルマを前へ押し出す力が強く、またエンジン回転上昇のフィーリングには心地よさを感じます。エンジンサウンドも中速以降で知方強く、積極的にエンジンを回して走ることが面白く感じます。加速の良さは、クルマ本体の軽さが影響していると考えられます。

クロスビーには直列3気筒1.0Lガソリン直噴ターボ(99ps/15.3kg・m)とロッキーとほぼ同等のスペックのエンジンを搭載しています。こちらのエンジンの印象もパワフルで、軽いクルマをグイグイ前へ加速させます。特に、発進時の加速の良さはモーターによるアシストも効いているように感じます。エンジン回転上昇のフィールがスムーズで、6ATのシフトレスポンスも良く、きびきびと走らせることもできます。

なお燃費はJC08モード燃費で、ロッキーが22.8km/L(4WDは21.2km/L)、クロスビーが22.0km/L(4WDは20.6km/L)。どちらも絶対的な速さをもつエンジンというわけではありませんが、実用的かつ扱いやすい動力性能を有しており、引き分けの印象です。

車体の軽さが影響してか、加速も減速も良いロッキー。
クロスビーも加速は良い。

※100点満点の評価は記事末尾に掲載しました。

■まとめ

荷室の使い勝手や、高速走行時の安定性をもとめるならば、そのどちらも優れているロッキーがおススメです。クロスビーは、ファニーなデザインと乗り心地の良さが魅力。

どちらのクルマを選んでも満足のいく性能を得られるでしょう。ただし、ACCやレーンキープアシストといった先進安全装備が、クロスビーにはメーカーオプションでも備わっていない点は、スズキの課題と言えます。

ダイハツはトヨタの持つ先進技術を上手く利用し(ステアリングスイッチなどはトヨタと共通のものが使われています)、ユーザーに高い安心感を提供できるように設定されています。

後付けが難しく、技術のアップデートが激しい、こうした先進安全装備を追加するには苦労も伴うでしょうが、2019年8月28日に発表した「トヨタとスズキの資本提携の合意」によって、こうした先進安全技術も、早急にブラッシュアップされていくことは間違いないでしょう。

(自動車ジャーナリスト 吉川賢一/写真:エムスリープロダクション 鈴木祐子)

【ダイハツロッキー】総合点:74点

■コーナリング性能…7点/適度な操舵力で軽め。軽やかにコーナーをぬける印象。ブレーキングでの視線変化やコーナーでのロールはやや大きめ
■高速直進安定性…8点/高速走行での安定感は高い。
■乗り心地…7点/フワ付きややあり、路面外乱でヒョコつき感じる。
■ロードノイズ…7点/一般車並み。静かではない。
■エンジンフィール…8点/滑らかに加速。CVTのラバーバンドフィールはさほど感じずリニア
■加速フィール…7点/1.0リットルにしてはパワフル。サウンドも軽快。
■走りの質感…7点/石畳路ではザラザラ、ステアリングの振動もややある。その他微振動を感じる。
■居住性…8点/前席は快適な広さ。シートもソフトで座り心地良い。後席も広い。タント譲り。
■インテリアの質感…7点/良くまとまっている。プラスチックパーツはやや多め。
■コストパフォーマンス…9点/このデザインと広い荷室を持つクルマで税込200万円をきる価格設定は安い。

コメント:ベビーRAV4なデザインはカッコ良い。小回りもよく利くので狭い道や駐車場でも運転が怖くない。荷室も十分にあり、キャンプ用途にも適している。ただし、(196万円のカローラには標準装備だった)ディスプレイオーディオがメーカーオプションで15万円弱の価格設定はやや高い。標準ナビを買うのと同じでリーズナブル感がない。

【スズキクロスビー】総合点:72点

■コーナリング性能…7点/操舵力は適度に軽め。コーナーを楽に丸く曲がれる印象。グリップレベルは並。
■高速直進安定性…7点/高速走行での安定感はそれなり。LKAは警告音のみ。ACCも追従機能なし。
■乗り心地…7点/軟らかさがあり心地よい。突起ショックも小さめ。
■ロードノイズ…8点/比較的静か。
■エンジンフィール…7点/回転は滑らかにあがり心地よい
■加速フィール…7点/1.0リットルにしてはパワフル。加速力はそれほどないが良く走る。
■走りの質感…7点/静かなため印象よく感じる。バックドアあたりからガタピシ低級音がたまに聞こえる。
■居住性…8点/前席は快適な広さ。後席がとても広い。荷室も広く使いやすい。
■インテリアの質感…7点/アウトドアをモチーフにしたお洒落な内装。使い勝手も良く、考えられた良い内装。
■コストパフォーマンス…7点/ややクラシカルなエクステリアに、内装もマッチしている。税込230万円はやや高いか。

コメント:ハスラーをベースに車幅を広げ、アウトドア指向のSUVとして良くまとまったデザイン。インテリアもマッチしており、スズキのデザイン力、センスの良さが感じられる。タイヤも必要以上に大きくせず、乗り心地やロードノイズなど良くまとめており好感が持てる。ただしレーンキープアシストが無かったり(車線逸脱警報のみ)、追従型クルーズコントロールがない(設定車速のキープのみ)など、ロッキーなどのライバルと比較すると先進安全技術には弱みがある。また、240万円はやや割高に感じる。

※個別項目は10点満点、総合点は各項目を集計したものです。

この記事の著者

Kenichi.Yoshikawa 近影

Kenichi.Yoshikawa

日産自動車にて11年間、操縦安定性-乗り心地の性能開発を担当。スカイラインやフーガ等のFR高級車の開発に従事。車の「本音と建前」を情報発信し、「自動車業界へ貢献していきたい」と考え、2016年に独立を決意。
現在は、車に関する「面白くて興味深い」記事作成や、「エンジニア視点での本音の車評価」の動画作成もこなしながら、モータージャーナリストへのキャリアを目指している。
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