日本でもヒットした実用的で親しみのあるコンパクトハッチ「オペル ヴィータ(初代)」【ネオ・クラシックカー・グッドデザイン太鼓判:輸入車編】

■3ドアと5ドアで異なる仕様に

柔らかなボディと実用性の融合を目指したボディ

80~90年代輸入車のグッドデザインを振り返る本シリーズ。第17回は、ライバルひしめくの欧州勢の中、GMグループの一員として独自の存在感を打ち出したコンパクトハッチに太鼓判です。

成長するコンパクトカー市場に対し、GMグループがチャレンジした初代オペル・コルサは、フィアットやプジョーという強敵に苦しみつつ一定の成果を獲得。1993年、ライバルに対応するべく改めて同市場に送り出したのが2代目コルサ(日本名:初代ヴィータ)です。

先代の直線基調から一転した曲面重視のボディは、3サイズを少しずつ拡大しながらもコンパクトなイメージを堅持。一方で、ホイールベースの拡大による前後オーバーハングの短縮やAピラーの前進で、プロポーションは明快に進化しました。

いちばんの特徴は3ドアと5ドアを異なる仕様と考え、ボディ後半の造形を大きく変えたこと。前者は大きなドアと広いウインドウによって活動的な若年層を狙い、後者はリズム感のある6ライトとしてテールゲートを垂直に近づけ、半ワゴン的なファミリー向けのパッケージとしました。

ボディサイドは余計なラインを廃したシンプルな面に、初代で好評だったブリスタフェンダーを巧妙に溶け込ませ、ボンネットフードとともに適度な抑揚を持たせています。

初期の全面素材色のバンパーもカジュアルなよさがありましたが、後のカラードバンパーでは小型のフロントランプを強調するように素材色を残すことでフロント周りの質感を向上。また、前後ともホイールアーチのプロテクターとつなげることで機能的な美しさも感じさせます。

vita・5ドア
3ドアとボディの後半を作り分けたワゴン的な5ドア

■チーフは日本人デザイナー

インテリアも基本的にはシンプルですが、インパネやステアリングホイールに円柱をモチーフにすることで機能性にちょっとしたリズム感が加わります。また、シート柄など、コンパクトカーらしい明るい表現が気持ちを高めます。

児玉英雄率いる社内デザインチームよるスタイリングは、親しみと躍動感を感じつつ、実用的な居住空間を持つ先進的なコンパクトカーを目指したといいます。フィアットなどライバルとは異なる独自性の確立です。

初代ヴィータが日本でヒットしたのは、もちろんTVドラマの影響もありますが、使い勝手がよく実用的で、しかもキュートな欧州コンパクトが、日本車とそう変わらない価格で提供されたという明快な理由があったからなのです。

●主要諸元 オペル ヴィータ スウィング 3ドア(4AT)
全長3725mm×全幅1610mm×全高1440mm
車両重量 980kg
ホイールベース 2445mm
エンジン 1388cc 直列4気筒DOHC 16バルブ
出力 90ps/6000rpm 12.7kg-m/4000rpm

(すぎもと たかよし)

この記事の著者

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すぎもと たかよし

東京都下の某大学に勤務する「サラリーマン自動車ライター」。大学では美術科で日本画を専攻、車も最初から興味を持ったのは中身よりもとにかくデザイン。自動車メディアではデザインの記事が少ない、じゃあ自分で書いてしまおうと、いつの間にかライターに。
現役サラリーマンとして、ユーザー目線のニュートラルな視点が身上。「デザインは好き嫌いの前に質の問題がある」がモットー。空いた時間は社会人バンドでドラムを叩き、そして美味しい珈琲を探して旅に。愛車は真っ赤ないすゞFFジェミニ・イルムシャー。
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