令和になって増加の危険性あり!? 運転免許証を「うっかり失効」してしまったらどうすればいい?

■平成の年号で記載された有効期限が令和だとわかりづらい!

「免許証『うっかり失効』今年は増えるかも?」と日本テレビのNEWS24が1月15日に報じた。以下はその一部だ。

 誕生日の前後1か月間に手続きを行う運転免許の更新だが、うっかり忘れてしまう人が少なくない。こうした「うっかり失効」、今年は増えてしまうかもしれないといわれている。その理由とは?
https://headlines.yahoo.co.jp/videonews/nnn?a=20200115-00000364-nnn-soci

 その理由は、元号が「平成」から「令和」に変わったことだ。
 以下は私の運転免許証である。

運転免許証
運転免許証

 「平成33年07月20日まで有効」となっている。いったい何年なのか、すぐには分からない。それで「うっかり失効」が増えるのではないかとNEWS24は言うわけだ。

 ちなみに、昔は誕生日まで有効だったが、現在は誕生日の前後1カ月間は普通に更新手続きができる。免許の有効期間は誕生日の1カ月後までとなった。

 有効期間を1日でも過ぎて失効したら、また自動車学校へ通ったり試験を受けたりしなければならない?

●失効から6カ月間は適性試験と講習だけで再取得可能

 いや、失効から6カ月間は「うっかり失効」と呼ばれ、適正検査(目や耳の簡単な検査)と講習だけで、つまり学科試験も技能試験もなしで同じ免許を再取得できる。手数料は少し高くなるが。

 ついでに言っておくと、「やむを得ず失効」というのもある。
 たとえば海外旅行、入院、刑務所で服役などでやむを得ず更新できなかった場合、
1、失効から6カ月間は、「うっかり失効」と同じ。
2、6カ月を超えて3年目までは、やむを得ない理由がなくなって(帰国、退院、出所して)から1カ月以内なら、技能試験のみ免除。
3、3年目を過ぎても、やむを得ない理由が生じたのが2001年6月19日以前の人は、やむを得ない理由がなくなって1カ月以内なら、技能試験のみ免除。

 「うっかり失効」と「やむをえず失効」で以上のように免許を再取得するのを「失効新規」という。警察庁によれば、2018年の失効新規は全国で23万1699件だ。過去のデータ(今回は省略)を見るとほとんどが「うっかり失効」となっている。

運転免許統計
警察庁の2018年の運転免許統計より。

 2018年の運転免許保有者は8231万4924人だから、失効新規は約0.03%にすぎない。が、「うっかり失効」のことを知らずに6カ月を過ぎてしまう人もいるだろう。もう高齢なので、あえて更新しない人もいるだろう。

●失効期間中の運転は無免許運転になるから注意!

 では、「うっかり失効」の6カ月間に車やバイクを運転したらどうなるのか。
「学科試験も技能試験も不要とされる期間なわけで、セーフかな?」
 そう思いがちだが大間違い。有効期間を1日でも過ぎれば、その免許は有効ではない。つまり無効。運転すれば当然、無免許運転になる。罰則は3年以下の懲役または50万円以下の罰金。違反点数は25点。一発で欠格2年の免許取り消し処分の基準に達する。重い。
 
 ただし…。
 多くの交通違反の罰則は「過失により××の罪を犯した者は××に処する」というふうに、過失犯の処罰規定がある。しかし無免許運転は過失犯の処罰規定がない。
 加えて、「うっかり失効」という言葉があり、失効から6カ月間は学科、技能の試験が免除される。運転の知識、技能には衰えがないとされているのである。

 そのせいだろう、私の知る限り−あくまで私の知る限り、ですよ−失効後6カ月間は、無免許運転で取り締まりを受けても、検察官により不起訴とされやすいようだ。不起訴とは、裁判にかけることなく事件を終わらせるという決着だ。罰金も懲役刑もない。
 行政処分については情報が少なくてよく分からないが、基準どおり欠格2年の免許取り消し処分とされることはないだろうと思われる。
 失効後数日か、あるいは5カ月過ぎているか、そのへんによって『濃淡』はあるだろうけれど。
 元号が変わってしばらくは特にうっかりしやすい。「昭和」から「平成」に変わってしばらくは「うっかり失効」が増え、普段以上に不起訴になりやすかったと聞く。

●交通違反に限らず、深く考えずに調書にサインするのは危険!

 念のため、ひとつ注意しておきたい。
 交通取り締まりの警察官には「実績点数」というのがある。青切符の違反より赤切符の違反のほうが実績になる。無免許運転は赤切符の違反だ。そこで…。

「平成×年は令和×年か、よぅく考えてみなさい」
「えっと、令和×年…あっ、そしたら僕の免許は有効期限が切れてる!」

 そんな会話ののち、「平成×年は令和×年であり免許が失効していることは分かっていました」という調書にサイン(署名・押印)させようとする警察官もいるかもしれない。
「なんかちょっとニュアンスが違うみたいだけど、警察官がサインしろって言うんだから…」
 とサインしてしまうと、過失犯として扱われず故意犯としてきっちり処罰、処分されてしまうおそれがある。
 交通違反に限らず、交通事故や他の犯罪の被疑者、被害者、目撃者になったとき、深く考えずに調書にサインしてしまい、あとでやっかいなことになるケースはよくある。ご注意ください。

 免許更新に関連してちょっと。
 更新の時期が近づくと、誕生日の1カ月前ぐらいに「運転免許更新連絡書」が届く。このハガキの作成と郵送は法令で定められている。交通安全協会に入会してないと届かないってことはない。

ハガキ
こうしたハガキが更新年の誕生日の1カ月ほど前に届く。これはだいぶ古いものだ。

今井亮一【いまい・りょういち】
交通違反・取り締まりを取材、研究し続けて約40年、行政文書の開示請求に熱中して約20年。裁判傍聴マニアになって17年目。『なんでこれが交通違反なの!?』(草思社)など著書多数。雑誌やテレビ等々での肩書きは「交通ジャーナリスト」。2020年の目標は東京航空計器の新型オービス(レーザー式)の裁判を傍聴すること!

【関連リンク】
今井亮一の交通違反バカ一代!
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