幻ではなかった! ついに姿を現した最新のレーザー式速度測定機「LSM-200」って何!?

■Twitterに写っていたのは幻の新オービスなのか!?

●車載型が「LSM-100」、可搬型が「LSM-200」

 マニア氏から情報をいただいた。Twitter(https://twitter.com/kabufender/status/1180021589418508288)のこの画像を見てくれと。
 見た、叫んだ、ななっ、なぁにいぃ~!!!

LSM200の取り締まり風景
Shinya@XJR1300さんのTwitterより。ガードレールの歩道側に、三脚に立てられた計測器が見える。

 三脚の上に載った白い横長の装置が、そのTweetへの返信にも映っている。
 こっ、これぞまさしくあの『幻のLSM-200』に違いない!!!
 LSM-200とは何か、なぜ幻なのか、ご説明しよう。

 警察庁交通局の交通指導課が全国の警察に対し、年に10数通か「交通指導だより」なるものを送付している。

交通指導だより
「交通指導だより(平成28年第2号)」。警察庁とは、いわば全国警察の総元締めだ。その交通局の交通指導課が全国の警察に対し通知したいことがあるとき、これを作成して送付する。

 その2016年の第2号を私は同年の夏にゲットした。第2号のタイトルは「新たな速度取締り装置の開発について」。要するに、東京航空計器(以下、TKK)のレーザー式の新型オービス「LSM-300」を全国の警察に宣伝する文書だった。
 新型オービスはTKKとSensys Gatso Group(本社はスウェーデン)の2社が競合する形なのだが、警察庁はまずTKKのみを宣伝したのである。
 その話は長くなる。省略しよう。とにかく「交通指導だより」にはこんな部分があった。

 この装置は、レーザー式車両速度計測装置「LSM-100」(車載型)及び「LSM-200」(可搬型)と計測原理が同様であり、レーザースキャンセンサーを利用して接近する車両の位置を測定することで、車両の速度を算出し、設定した速度以上の車両に対して撮影を行なうものです。

 LSM-300は、TKKのレーザー式の新型オービス(可搬式)だ。2016年4~6月に警察庁は埼玉県と岐阜県で新型オービスを使った「モデル事業」をおこない、LSM-300をマスコミに発表した。

宣伝文書
この「宣伝」文書にしたがい、各地の警察がLSM-300を購入し始めた。「LSM-200」とは何か、それがずっと謎だったのだ。
専用パソコン
LSM-300が撮影した画像データを専用パソコンに入れるとこうした画面が出る。そのへんは従来のオービスも同じだ。

●ひょんなことからLSM-100の存在を知る

 LSM-100については同年5月、契約書や取扱説明書を私はゲットしていた。
 最初からLSM-100を狙ってゲットしたのではない。別のマニア氏から、
「北海道と沖縄に妙なレーダーパトがある。測定部にカメラが見える。もしやオービスパトか!?」
 との情報を得て、私は北海道警察に対し行政文書の開示請求をした。そうして初めてLSM-100の存在を知ったのだ。手間と金がかかった(笑)。

LSM100のカメラ部
パトカーの後方から見たLSM-100。パトカーを道端に駐車し、後方から接近してくる違反車の速度を測定、違反車が走りすぎたらパトカーを発進させて追いかけ、停止させて取り締まる。開口部の向かって左側にカメラが見えるが、オービスとしては運用していない。

 LSM-100は1式540万円(税込み。当時の税率は8%)。北海道警察は2014年6月の契約で4式を、2015年8月の契約で9式を購入していた。
 LSM-100の測定方法はレーザー式だ。ループコイル式のオービスの老舗であるTKKが、まったく新しい測定方法でパトカーの屋根に進出したのである。私は驚いた。

●LSM-100はオービスなのか!?

 問題は、LSM-100はオービスなのか、そこである。
 つまり、現場では測定と撮影をおこなうだけ、後日違反者を警察へ出頭させて取り締まる、そういうやり方の装置なのか。「オービスパト」が出現したのか!

 仕様書の「構成品一式」には「カメラ」があり「計測部に収納」となっている。マニア氏が「測定部にカメラが見える」と言った、そのカメラだ。
 しかし、どんな画像を撮影してどう加工するかといった説明が、LSM-100の取扱説明書にはない。かわりに、速度記録紙(測定直後に違反者が見せられるレシート様の紙で、測定値などが印字される)の印字方法について詳しい説明がある。

NEW_SPEED_CONTROL_SYSTEM_7
LSM-100の取扱説明書より。測定後すぐに違反車を停止させ、日時や測定速度などをプリントして速度違反の証拠とする。

 何より、発光部、つまりフラッシュについての記載がない。オービスとして運用するためには鮮明な写真が必要だ。そのためにはフラッシュが不可欠だ。

仕様書
LSM-100の仕様書より。測定部とはパトランプの間のあの白い『箱』だ。測定部内には「スキャンレーザーセンサー」(つまりレーザー式の測定機)とともに「カメラ」があるが、ストロボ(フラッシュ)がない。

 ということは? そう、マニア氏が北海道と沖縄で見つけたのはオービスパトではないのだ。レーダー式測定機を屋根に積んだレーダーパトの、レーダー式をレーザー式に変えた、「レーザーパト」だったのだ。

●ついに姿を現した幻のLSM-200

 ではLSM-200とは何なのか。
 これも別のマニア氏から――私は本当にマニア諸氏に助けられている――山形県のサイトにある文書を教わっていた。
 それは入札関係の文書らしく、LSM-200とハッキリあった。「三脚」「無線装置」「計測部-制御部間(50m)」「プリンタロール紙」などとある。そこからして、いわゆるネズミ捕りのレーダー式や光電式の測定機と同じように使うらしい。

入札関係の文書
山形県の入札関係の文書の一部。「LSM-200」という型式名がはっきりある。付属品の「プリンタロール紙(5巻/包)」とは、速度記録紙をプリントするための紙だ。

 だが、山形県警はLSM-200を購入していないという。だいぶ月日をおいてまた山形県警に確認したが、答えは同じだった。
 その後、私はあちこちの県警に当たってみた。が、昭和時代の小説風に言えば、LSM-200の消息は杳(よう)として知れなかった。

 そうして今回、冒頭のTwitterをマニア氏から教わったのである。
 Twitter画像の装置は、LSM-100をパトカーの屋根から外して三脚に載せたように見える。Shinya@XJR1300さんは「特設サイン会場もありました」と書いている。「サイン会場」とは、ネズミ捕りにおいて測定後すぐに違反車を停止させて違反切符を切る場所のことだ。
 うわぉ! とうとう見つかった、おそらくあれは『幻のLSM-200』に違いない! 私としては大感動、Tweet主とマニア氏に大感謝である。
 現在、LSM-200の契約書、仕様書、取扱説明書を開示請求中だ。いったいどんな文書が出てくるか、楽しみでたまらない。またご報告しよう。

(今井亮一/画像協力:Shinya@XJR1300さん)