先進的なRAV4と骨太なフォレスター、スペックやデザインを比較【RAV4vsフォレスター比較試乗・その1】

1.2019年上半期の4WD SUV市場動向はどうだったか?

2018年はフォレスターやCR-VといったSUVが続々とフルモデルチェンジし、王者エクストレイルとの覇権争いが勃発。「国産4WD SUV豊作の年」と言われた。

最終的に、2018年 4WD SUVで販売台数ナンバー1はエクストレイルであったが、その勢いも、RAV4が登場した2019年4月以降は一気に変わり、2019年4月〜9月のランキングはRAV4が1位を獲得。RAV4に顧客を奪われたエクストレイルは首位から陥落し、RAV4の登場でも微動だにしなかったフォレスターが2位となった。

今回、売れ行き好調のRAV4と、続く2位のフォレスターに試乗ができたので、3記事にわたって、この2台を比較していこうと思う。

2019年登場のRAV4と2018年登場のフォレスター

トヨタRAV4 Adventure 車両本体価格319万5500円(10%税込)
スバルフォレスター Advance 車両本体価格315万7000円(10%税込)

2019年前半の販売台数を以下に示す(※自販連2019年データ参照)。2019年4月-9月ではRAV4が2位の倍以上の売り上げ台数となった。エクストレイルが販売を落としている以上に、RAV4が大きく売り上げを伸ばしている。おそらく、2019年の国産4WD SUVのナンバー1は、RAV4が獲得する見込みだ。

[2019年1月〜6月]
日産エクストレイル 22,603台
トヨタRAV 17,775台
スバルフォレスター 17,639台
ホンダCR-V 9,590台

[2019年4月〜9月]
トヨタRAV 39,299台
スバルフォレスター 17,368台
日産エクストレイル 16,229台
ホンダCR-V 5,416台

2.この2台はどんなクルマなのか?

今回は2台の条件を揃えるため、車両価格が320万円程度のグレードとした。

トヨタRAV4はアドベンチャー(2.0リットルガソリンエンジンAWD)、フォレスターはアドバンス(2.0リットルガソリンエンジン+モーター e-BOXER)だ。エンジンのスペックや車両諸元は記事末尾の表を参照していただきたい。RAV4には、上級グレードに2.5リットル+モーターのハイブリッド(2WDとE-Four)があるが、価格帯が325万円~389万円とオーバーとなるため除外した。

対するフォレスターには、2.5リットルガソリンエンジンモデルがあるが、e-BOXERを搭載したアドバンスが現状だと最上級グレードとなる。

RAV4はTNGA、フォレスターはSGP(スバルグローバルプラットフォーム)と呼ぶ、新世代のプラットフォーム技術によって、乗り心地や音振性能といった走りの質感を上げているそうだ。(このあたりの筆者の所感は、後続の記事にて詳しくご紹介する。)

RAV4アドベンチャーは「ダイナミックトルクベクタリングAWD」というシステムを備えている。ステアリングを切り始めた瞬間から、前後輪へのトルク配分し、同時に後輪のトルクを左右それぞれで独立制御して旋回性能を補い、さらにはディスコネクト機構によって燃費向上を実現するという魅力的なシステムだ。

RAV4はフォレスターよりも車幅が広く、全長は短い

対するフォレスターアドバンスは、前後輪に最適なトルクを配分する「アクティブトルクスプリットAWD」を採用している。AWDシステムの豪華さはRAV4が有利だが、重要なのはそれが体感できるかだ(これも後続の記事で詳しく紹介する)。

また、先進安全技術は2台とも抜かりないレベルで搭載されている。どちらも全車速追従機能付のACCを備えており、また優秀なステリングアシストや被害軽減ブレーキシステムも当然搭載している。

車幅1810ミリは国産AWD SUVのなかでは最も狭い。

3.エクステリアデザインの特徴は?

RAV4は、「キーンルック」を採用したワイルドなフロントフェイス、大きなタイヤ、ワイドなフェンダー、そして無骨に見えるパネルの印影など、オフロードを走行するワイルドなイメージで作りこまれている。

昨今は、エクストレイルやCR-Vの様な、Cd値の低そうな、滑らかなボディデザインのSUVが多い中で、なかなかにカッコいいと思えるデザインだ。アーバンカーキ色とアッシュグレーのツートンのボディカラーも良い味を出している。

特徴的な6角形のグリルとヘッドライトがRAV4のフロントフェイスを引き締めている
タイヤ外径が大きい。
デュアルエキゾーストと、ワイドなフェンダーがリアの迫力を増している。

対するフォレスターは、細かくディテールを見れば変化をしているが、頑固一徹ともいえるほどにキープコンセプトなデザインで「先代のフォレスターとほぼ変えていない」ことが特徴だ。

車幅1815mmと国産AWD SUVの中では最も狭く、それでいて使い勝手のよいオフロードSUVのイメージとして一つの完成されたデザインなだけに「守り」に入る気持ちは分かるが、クルマの中身の進化よりも、目新しさを求めるような世代に、どれほど刺さるかは疑問だ。

RAV4と同様の6角形グリル。高級感はフォレスターにある。
タイヤサイズはRAV4よりも一回り小さい。
シングルエキゾーストのマフラー。

4.インテリアデザインの特徴は?

RAV4は、乗り込んだ瞬間から、ダッシュボードの広さや収納スペースの充実している点と、オレンジのアクセントが入ったことで色合いの華やかさを感じる。シフトノブやスイッチもレイアウトが分かりやすく、またエアコンのダイヤルも、スノボの手袋や濡れた手でも滑らないよう、ゴムでおおわれている点も気が利いている。

大型のナビモニターをダッシュボードの最上部に配置したことで、運転中の視界移動量も小さく、また視認性も非常に高い。気になるのはステリング上にあるスイッチのデザインが、クルマの持つ華やかな印象と比べて、地味だなと感じるくらいだ。

オレンジのアクセント、ホワイトステッチなど、明るい雰囲気のRAV4
エアコンのダイアルは、濡れた手や手袋でも滑りにくいゴム巻き。

フォレスターは、ステアリング周りやセンターコンソール、インパネなどにスイッチがたくさん並んでいて、いかにも男子が好きそうなメカメカしい印象に感じる。モードを切り替えるスイッチを多用して、自らの意思でクルマの特性をコントロールしてオフロードを走る、そんな使い方が浮かぶ。

メインのナビモニターはRAV4に比べて小さいが、ツインモニターがその不足分を補ってくれる場合もある。ブルーのイルミネーションはやや子供っぽいようにも感じるが、細部の品質は非常に高い。

ブラックをメインにしたフォレスター。シートはブラウンで渋さがある。
今回は試せなかったが、X MODEによる駆動制御はフォレスターの魅力の一つ。

まとめ

デザインは人それぞれのためどちらが良いか悪いかは指摘できないが、派手で華やかさを好むならばRAV4、トラディッショナル(伝統的)な硬さを好むならばフォレスター、といったところだろう。続いては、SUVの重要ポイント、室内の広さや荷室の使い勝手についてご紹介する。

(文:吉川賢一/写真:鈴木祐子)

■RAV4 Adventure (アッシュグレーメタリック×アーバンカーキ) AWD
サイズ  4610×1865×1690(全長×全幅×全高[mm])、車両重量1630kg、最小回転半径5.7m
タイヤ 前後:前/ 235/55R19 後/ 235/55R19
WLTCモード燃費:15.2km/L
エンジン:2リットル直列4気筒ガソリンエンジン(M20A-FKS) 排気量:1.986cc
最高出力:126kW(171ps)/6600rpm / 最大トルク:207Nm(21.1kgm)/4800rpm

■FORESTER Adventure(ホライゾンブルー・パール) AWD
サイズ 4625×1815×1715(全長×全幅×全高[mm])、車両重量1640kgで最小回転半径5.4m
タイヤ 前後:前/ 225/55R18 後/ 225/55R18
WLTCモード燃費:14.0km/L
エンジン:2.0リットル水平対向4気筒ガソリンエンジン+モーター(FB20) 排気量:1,995cc
最高出力:107kW(145ps)/6000rpm  最大トルク:188Nm(19.2kgm)/4000rpm
モーター:MA1  最高出力:10kW(13.6ps)  最大トルク:65Nm(6.6kgm)

この記事の著者

Kenichi.Yoshikawa 近影

Kenichi.Yoshikawa

日産自動車にて11年間、操縦安定性-乗り心地の性能開発を担当。スカイラインやフーガ等のFR高級車の開発に従事。車の「本音と建前」を情報発信し、「自動車業界へ貢献していきたい」と考え、2016年に独立を決意。
現在は、車に関する「面白くて興味深い」記事作成や、「エンジニア視点での本音の車評価」の動画作成もこなしながら、モータージャーナリストへのキャリアを目指している。
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