【週刊クルマのミライ】「あおり運転」の飛んだとばっちり! 日本での知的でスポーティな「BMWブランド」への影響はあるのか?

■BMW X5によるロードレイジ事件が注目を集めている。BMWは知的でスポーティなブランドであり続けるや?

常磐道で起きた「あおり運転」から始まる暴行事件が世間の注目を集めています。ニュースなどで繰り返し流れる危険な運転は、多くの人が想像する「あおり運転」の域を超え、路上での暴力行為(ロードレイジ)と呼べるものといえるでしょう。

また、この事件ではBMW X5のディーラー試乗車を20日間も借りていたという点も大きな話題となっています。日本ではインテリジェンスや洗練されたイメージのあるBMWブランドにとっては、とんだとばっちりといえる事件ではないでしょうか。衝撃的な映像で、何度も最新のX5の姿が映し出されるのはイメージダウンにつながっているといえるからです。

一方で、BMWは欧米ではロードレイジの印象が強いブランドという面があったりします。

たとえば、数年前に実施されたイギリスでのユーザー調査では「35歳~50歳の青いBMWを運転している男性」が、ロードレイジにおける加害側の典型的な人物像として挙げられたという報告があります。これは実際のロードレイジ件数を調査したものではなく、あくまでもユーザーの印象を調査したものだということですが、そうしたブランドイメージをユーザーが持っているということになります。

また、アメリカでは横断歩道を歩行者が渡ろうとしているときに、ちゃんと停止したかどうかを車種ごとに調べたところ、BMWのドライバーは歩行者のために停止したケースが、他車よりもはるかに少なかったという調査結果があったそうです。ちなみに、この調査ではプリウスもきちんと止まらないことが多かったというのも興味深いところです。あくまで仮説ですが、プレミアムカーであったり、エコカーであったりと周囲からリスペクトされる(とオーナーが感じている)クルマに乗っていると逆に少々のルール違反を許されると考えてしまうのかもしれません。

日本では「プリウス・ミサイル」というスラングをネット界隈で目にすることが多いのですが、欧米におけるBMWのロードレイジに関するネガなイメージにしても、ごく一部のユーザーによる行為が目立っていたり、目撃はしていなくても口コミ的に耳にしたりという先入観による影響もあるかもしれません。だからといってクルマが勝手に暴走するというケースが100%ないとは言い切れませんが、実際にはほとんどがドライバーのミスによるものです。また、自然にあおり運転を促すクルマというのも考えられません。危険運転というのはドライバー側の問題です。

いずれにしても、目立った事件をもとにブランドであったり、車種全体の傾向を判断するのは間違いの元といえます。とはいえ、ブランド価値というのは、ちょっとしたきっかけによって棄損するのも事実です。はたして、この一件はBMWのブランディングにどのような影響を与えてしまうのでしょうか。

(山本晋也)

この記事の著者

山本晋也 近影

山本晋也

日産スカイラインGT-Rやホンダ・ドリームCB750FOURと同じ年に誕生。20世紀に自動車メディア界に飛び込み、2010年代後半からは自動車コラムニストとして活動しています。モビリティの未来に興味津々ですが、昔から「歴史は繰り返す」というように過去と未来をつなぐ視点から自動車業界を俯瞰的に見ることを意識しています。
個人ブログ『クルマのミライ NEWS』でも情報発信中。2019年に大型二輪免許を取得、リターンライダーとして二輪の魅力を再発見している日々です。
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