【自動車用語辞典:タイヤとホイール「タイヤの基本構造と機能」】厳しい状況でも高い強度と柔軟性を実現させる仕組み

■安全や快適性を実現する重要部品

●機能は4つに大別できる

タイヤは、クルマの重量を支える、路面からの衝撃を緩衝する、駆動力や制動力を伝える、進路方向を転換・維持するという重要な役割を担っています。

タイヤの基本的な構造や機能について、解説していきます。

●タイヤの役割と機能

タイヤは、クルマの性能や安全、快適性を実現する重要な部品です。その役割は、クルマの荷重を支える「荷重支持機能」、スムーズに走り、確実に止まる「駆動・制動機能」、方向を転換維持する「進路保持機能」、快適な乗り心地「緩衝機能」の4つです。

機能としては、高速で回転しながら高温や衝撃などを受けるため、高い強度と衝撃を吸収する柔軟性が必要です。また表面には、スリップを抑えて確実に駆動力や制動力を伝えるため、トレッドパターンという溝が刻まれています。

●タイヤ構造の違いによる分類

タイヤには、中にチューブの入ったチューブタイヤとチューブレスタイヤがあり、また内部の補強方法としてラジアル構造とバイアス構造があります。そのほか、氷雪路用のスタッドレスタイヤやパンクに強いランフラットタイヤがあります。

以下は、乗用車の主流であるチューブレスのラジアルタイヤについての解説です。

●タイヤの外部構造

タイヤは、特別な機構もなくゴムの固まりのように見えますが、実際は複雑で緻密な構造をしています。外部の構造は、トレッド部、ショルダー部、サイドウォール部、ビード部に大別されます。

・トレッド部
路面と直接接触する部分で、路面からの衝撃や損傷など外乱から内部を保護します。表面には、いろいろなトレッドパターンが刻まれており、グリップ力を確保してスリップを防止する、路面の水を排水するなどの重要な機能を持っています。

・ショルダー部
タイヤの肩の部分で、カーカスを保護しながら路面との摩擦やタイヤ変形で発生するトレッド部の発熱や内部の熱を発散します。

・サイドウォール部
路上からの衝撃を受けて最もたわむ部分で、カーカスを保護しながらスムーズに伸縮を繰り返すことによって、バネのように衝撃を吸収します。

・ビード部
タイヤをホイールのリムにはめ込む部分で、カーカスの端でスチールワイヤの束を包み込み、補強しています。

●タイヤの内部構造

ゴムだけでなく、内部にはポリエステルやナイロンの繊維で形成されたカーカスとスチールベルトが埋め込まれています。ホイールと接合する部分は、ビードと呼ばれる高炭素鋼で強化されています。

・カーカス
タイヤの骨格を形成するコード層で、タイヤが受ける荷重や衝撃、重点空気圧に耐える役割を持ちます。材料としては、ポリエステルやナイロン、レーヨンなどのコードにゴムを浸み込ませて成形して数枚重ねています。

・スチールベルト
ラジアル構造のトレッドとカーカスの円周方向に張られたスチールの補強紐で、カーカスを締付けトレッドの剛性を高めます。


どんな過酷な走行環境下でも、タイヤは常に高い強度と適度な柔軟性を確保し、それらを高次元でバランスさせなければいけません。特に最近は、燃費向上技術のひとつとしてタイヤの改良が取り上げられることが多く、タイヤの性能に期待する部分が非常に大きくなっています。

(Mr.ソラン)

この記事の著者

Mr. ソラン 近影

Mr. ソラン

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までをやさしく解説することをモットーに執筆中。もともとはエンジン屋で、失敗や挫折を繰り返しながら、さまざまなエンジンの開発にチャレンジしてきました。
EVや燃料電池の開発が加速する一方で、内燃機関の熱効率はどこまで上げられるのか、まだまだ頑張れるはず、と考えて日々精進しています。夢は、好きな車で、大好きなワンコと一緒に、日本中の世界遺産を見て回ることです。
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