「東京2020オリンピック・パラリンピック」の会場内を走る専用EV「APM(Accessible People Mover)」をトヨタが初公開

■オリンピック期間中は約200台のAPMが来場者・大会関係者の移動をサポート

「東京2020オリンピック・パラリンピック」のワールドワイドパートナーであるトヨタは、競技大会をサポートする専用EVである「APM(Accessible People Mover)」をプレス向けに公開しました。「APM」は床下にバッテリーを搭載し、リヤにモーターを配置した電気自動車で、オリンピック会場内の「ラストワンマイル」を提供する低速走行EV。

ボディサイズは、全長約3.9×全幅約1.6×全高約2.0m。室内高は1620mm、開口高1470mmと、天井が高くなっています。航続可能距離は100km、最小回転半径は4.8m、最高速は19km/h。充電はAC100V、AC200Vに対応。

主に対象となるのは、選手や大会関係者をはじめ、VIPや車いすの方、妊婦や乳幼児連れの家族や高齢者などが想定されていて、たとえば競技場の入り口までは交通公共機関や巡回バスで行けたとしても、ゲート(セキュリティゲート)から競技が行われるグランドや競技場などの場所までは、まだかなり距離がある場合も十分に想定されます。

トヨタは、前回のリオデジャネイロオリンピックを視察し、組織委員会と連携して「APM」を製作。公開された車両は最終仕様ではなく、試用・改善を経てから生産に移るそう。

仕様は2つあり、基本モデルは「運転席(1人)+5名乗車」もしくは、「運転席(1人)+車いす1名+2名乗車」となっていて、150台生産される予定だそうです。もう1台は救護仕様で、2列目と3列目にストレッチャーを車内に固定でき、要救助者が1名、救護スタッフが2名乗車可能。ストレッチャーは、2列目と3列目に固定され、救護スタッフは2列目と3列目の片側に1名ずつ乗車します。こちらは50台生産される予定。

合計約200台の「APM」が競技会場だけでなく、選手村などオリンピック会場内で来場者・大会関係者の移動をサポート。

なお、2019年7月18日にプレス向けに公開されたのは基本モデルの方で、もちろん3列シート。1列目が運転席、2列目が3人掛け、3列目が2人掛けの計6人定員になっています。

車いす利用時には、2列目の折り畳みが可能になっています。2列目を折り畳めば、車いすだけでなく、最大150kgまでの荷物の運搬もできます。

1列目は運転席のみとなっていて、助手席を設けなかったのは、左右どちらからでも容易に乗り降りできる点を重視。運転席のシートポジションが高い位置かつセンターに設けることで、視界の良さ、運転のしやすさはもちろん、運転手が乗客を見渡し、乗り降りをサポートしやすい安全性に配慮した結果としています。

さらに、乗客も両側からのアクセスが可能で、両サイドの乗り降り補助バーが設けられています。また、車いす用のスロープや車いす固定用のベルトも搭載されていて、車いすの方を含めた乗り降りのしやすさに考慮されています。車いすは、勾配14度のスロープを使い、車内で切り返し不要なフロアになっていて、スムーズな乗降が可能。なお、今回は、撮影とデモのため車いす固定用のベルトは装着されていません。

もちろん、雨天時にも対応し、ピラー内に雨天用カーテン、後方ロールカーテンも装備するほか、運転席にはサイドバイザーも装着されています。

(文/写真 塚田勝弘)

この記事の著者

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塚田勝弘

1997年3月 ステーションワゴン誌『アクティブビークル』、ミニバン専門誌『ミニバンFREX』の各編集部で編集に携わる。主にワゴン、ミニバン、SUVなどの新車記事を担当。2003年1月『ゲットナビ』編集部の乗り物記事担当。
車、カー用品、自転車などを担当。2005年4月独立し、フリーライター、エディターとして活動中。一般誌、自動車誌、WEB媒体などでミニバン、SUVの新車記事、ミニバンやSUVを使った「楽しみ方の提案」などの取材、執筆、編集を行っている。
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