学生が考える日産のビジネスプランとは? 7大学+α対抗プレゼンバトル2019が開催

●今年の「プレゼンバトル」の課題提案は日産自動車! 学生が考える「クルマのミライ」とは?

2019年7月13日、東日本の複数の大学が「連携講義」として行う一大イベント、「プレゼンバトル2019」が開催されました。

毎年様々な企業などからの課題提案を受け、学生たちがテーマに即してアイディアをプレゼンする7大学+α対抗イベントで、今年で4年目※となります。

(※玉川大学と東北工業大学それぞれの授業が融合して、プレゼンバトルの形式をとってから4年目)

参加校は昨年よりも3校増え、過去最高の10校となりました(玉川大学、専修大学、多摩大学、東北工業大学、東京国際大学、麗澤大学、淑徳大学、都立晴海総合高等学校、成城高等学校鉄道研究部、N高等学校仙台キャンパス)。そのうち3校はなんと高等学校(しかも女子高生が一人で参加した学校も!)。

こんなに若い方たちが日産自動車へ「ビジネスプラン」を提案するなんて驚きのイベントです。実は筆者も、元日産のエンジニア。自ずと前のめりになって拝聴いたしました。

1.テーマは「日産の新しいクルマのビジネスモデルを考える」

今回のテーマは「2030年の日本市場における日産の事業を考え、従来の開発、設計、製造、販売、アフターサービスを中心としたビジネスモデルから脱却し、革新的なビジネスモデルを考える」です(これは、日産が本当に困っているテーマであろう…)。

この「プレゼンバトル」は、企業側としては時代の最先端を大学で学んでいる学生達から柔軟な発想聞くことができ、大学側(学生側)は、企業を相手にして提案を端的にまとめることでプレゼンテーションスキルを磨くきっかけになれば、相互にとって「教育的な価値」があるということです(本テーマ起案者の日産自動車 林田主担談)。

2.その先が気になる「良」プレゼンが多かった!

各チームから提案されたアイディアを紹介しましょう。

晴海総合高校:若者のクルマ離れを食い止める方策としてeスポーツとクルマのコラボレーションを考案した

淑徳大学:高齢者の多い社会を前提としたサービスや企画を提案

専修大学:高齢者が外で交流できるようにするために車イスの進化系「Weiβヴァイス」を考案

N高校仙台キャンパス:緊急時に走行可能だった道を通信で瞬時に共有するシステムを考案

東京国際大学:自動運転で移動するクルマの室内空間をカフェにしてしまうアイディアを考案

東北工業大学:クルマがないと移動困難な高齢者と免許取得をめざす若者の奇跡のコラボレーションを提案

多摩大学:誰もがうらやむ「ワークとバケーションの融合」「ワーケーションカー」を提案した

成城高等学校:ボディとシャシーを分離する設計構想としてリユースによるコストダウンを提案

玉川大学:一人一台の小型モーター駆動モビリティをドッキングするクルマと、駆動方式をFF、4WD、FR、RRと自在に変更できるコンセプトカーを段ボールで具現化

麗澤大学:自動車とメガネをキーワードに、具体的なシステム構築の可能性を提案

日産OBである筆者が、来年度への期待を込めてあえて言わせていただくならば、大切なテーマである「日産ならでは」の視点が欠落していたり、論理展開がやや破綻気味であったり、リサーチ不足ですでに考案されている内容をプレゼンしてしまったりと、厳しくみれば穴はありましたが、いずれも学生が主体となって、この水準にまでまとめ上げた事実には、どれも称賛をあたえたい企画ばかりでした。

3.栄えある優勝校は?

第1位は専修大学「面白いプレゼンテーションで、システムシンキングにより、論理展開がしっかりできていた。発想もダントツ面白かった。」

第2位は玉川大学「クルマとしてコンセプトがしっかり考えられていて、もしかすると実現できるかもしれないと思わせるアイディアだった」

第3位は麗澤大学「良く考えられておりビジネスモデルとして面白かった」

イノベーション賞は玉川大学「4つの小型モーター駆動のクルマが、時には合体して移動するモビリティになる構造が面白く、模型を使って示すなどアイディアが詰まっていた」

敢闘賞は仙台N高校「女子高生が単身乗り込んで見事なプレゼンテーションだった」

という結果となりました(カッコ内は林田主担の総評)。

4.議案を提案した日産 林田主担の談話

林田氏「今年のテーマは日産の2030年のビジネスプランということで、少し難しいテーマだったかもしれませんが、 企画を非常にしっかりと考えてくれたチームが多くいました。2030年とは、まだ何がどうなっているのか我々にも分かりません。
その姿は、これから社会に出る皆さんの手で作られる世界です。皆さん自身がどういった生活をしていたいのかをしっかりと考えて、もっともっとわくわくするクルマの姿を描いてほしいと思います。時代は変わってきます。クルマも姿を変えていくと思います。ぜひ新しい世界を作ることにチャレンジをしてください。そのアイディアをもって【そのまま日産に入社してほしい】と言いたくなるような人材が出てくることを期待します」

大学の1つの講義の企画から始まって、日本を代表する企業の「日産自動車」へビジネスアイディアを提案した際のプレッシャーや緊張感は、彼ら(彼女ら)にとって代えがたい良い経験になることでしょう。

なお、今回優勝した専修大学チームには、今度は日産自動車が主催となる「フューチャーモビリティビジネスコンテスト2019」に推薦出場となります。そこでの優勝者には、ビジネスの実行資金として、実際に300万円の予算が与えられるそうです。

フェイスブックのマイク・ザッカーバーグも、元は大学生の頃に考えていた企画を温めて実行し、今日に至ります。本選でもプレゼンに成功し、さらにはベンチャービジネスが立ち上がるようなことにまで発展したら、未来の自動車業界も明るく、そして面白くなりそうです。

(文:吉川賢一/写真:鈴木祐子)

【関連リンク】

日産自動車主催「フューチャーモビリティビジネスコンテスト20190」
http://www.nissanmotor.jobs/japan/BC/

この記事の著者

Kenichi.Yoshikawa 近影

Kenichi.Yoshikawa

日産自動車にて11年間、操縦安定性-乗り心地の性能開発を担当。スカイラインやフーガ等のFR高級車の開発に従事。車の「本音と建前」を情報発信し、「自動車業界へ貢献していきたい」と考え、2016年に独立を決意。
現在は、車に関する「面白くて興味深い」記事作成や、「エンジニア視点での本音の車評価」の動画作成もこなしながら、モータージャーナリストへのキャリアを目指している。
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