ニュルブルクリンク24時間レースをクラス3位完走に導いた直後の佐々木雅弘選手に話を聞きました【ニュルブルクリンク24時間 取材日記・日曜日その1】

■モリゾウ選手と共に戦ったスープラでのニュル24時間

・いつも通りに走った24時間、ほぼノートラブルで完走、しかもクラス3位!

ニュルブルクリンク24時間レースが終わりました。注目の新型スープラは、モリゾウ選手がスタートドライバーというサプライズからスタートしました。戦前は、モリゾウ選手も述べていた通り、1分、1秒、1mでも多く走り、まずは完走を目指すことが第1とされていました。前哨戦であるVLNや予選レースではトラブルで満足に走れていなかったということもあり、我々も正直、「完走」という目標は適切で無難な設定だと考えていました。

しかしどうでしょう。終わってみれば、クラス3位での完走です。

良い意味で裏切られた新型スープラのニュルブルクリンク24時間レースデビュー戦となりましたその走りを支えた一人、佐々木雅弘選手にレース後、話を聞きました。

■GT4マシンに混じって走るにはパワーが足りない!?

clicccar:レースを終えて率直な感想は?

佐々木:まあ、長かったですね。

clicccar:4スティント、約6時間走りましたね。

佐々木:時間という意味もありますが、ここに来るまでも色々あったので。ライセンスを取るのも大変でしたし。(注:ニュル24時間を走るためには、前哨戦等での完走実績が必要で、そのための条件がなかなかクリアできなかった。)

天気が良かったのも今回だけですよ。結果、俺が晴れ男だったのかなと(笑)。

clicccar:実は、新型スープラ初の24時間レースに参加するにあたっての重圧があったのではないですか?

佐々木:こういう大きなプロジェクトだったので、当然プレッシャーはものすごくありました。ただ、いつもどおりを越えることはできないので、いつもどおりに走りました。結果、ミスなくクルマをゴールまで運べたということですね。

スープラもよく走ってくれました。このクルマで初めての24時間レースでよく走ってくれました。この前の予選レースでは、実は3時間ぐらいピットで止まってしまっていました。これまで長いレースができていなかったんですよ。それが、今回はノートラブルで走りました。

clicccar:感覚としては、24時間大事にいたわりながら走った?

佐々木:いや、ドライバーとしてはセイフティにいこうとは言っていました。その意味は、このコーナーでブレーキを踏んで相手を見ながら抜いていこうかということか、無理やりにでも入っていって抜いていくかという選択肢があるなかで、(走り方として)安全な方をとっていこうという意味でのセイフティ。クルマに対しての鞭の入れ方というか、全開率は確実に高くて、毎周タイムがどれくらい出るのかな?というのを楽しみにしていたくらいなんです。ちゃんとクルマを追い込んで、タイヤも100%使って走りました。

clicccar:トラブルというと、GT3のマシンに突っ込まれたときぐらいですかね? 長時間ピットに入ったなんていうことはなかったですよね?

佐々木:まるでなかったですね。クルマは絶好調でした。僕が乗った最初の走り出し3時間ぐらいで、ちょっとシフトアップが不調になったことはありましたが、そのなかでエンジニアさんが理由を見つけてくれ、コンピュータのリセットをしたら全然普通に走れるようになりました。

clicccar:エンジンもミッションも心配なかったですか?

佐々木:エンジンパワーやミッションの容量については、日本の皆さんが心配していることは知っています。パワーを上げて大丈夫なの?とか、AT大丈夫?という声が聞こえてきます。僕はこれまで、ノーマルもチューニングカーも色々乗ってきました。GT-RのDCTなんかも乗ってきましたが、本当にそれと変わらない、いや、むしろ扱いやすい。マイルドではなく、ちゃんとスポーツしている。シフト変化も感じるし、ブリッピングもする。ちゃんとギアがあるようなイメージで走れるので、ATは全然心配しなくていいよ!というくらいの仕上がりです。

clicccar:他のレースカーと比較してみてのポテンシャルは?

佐々木:今回参加したSP8Tクラスにはポルシェ・ケイマンや、BMW M4 GT4、アストンマーティン GT4といったGT4マシンが混じっていましたが、スープラに今の段階で足りないのは、前後バランスとか重量とか細かいことはありますが、レースカーとして考えると基本的に足りないのはパワーだけ。コーナリングにしても全然負けていません。むしろオールドコースのつづらおりの切り替えしのコーナーでは全然スープラのほうが速く、逆に追いついて邪魔だなということが何回もあって、ストレートで追いつかれて抜かれて、コーナーでまた追いついてという繰り返しでした。そういう意味ではかなりポテンシャルはあると思います。

clicccar:タイムとしては現状でどれくらいが狙えましたか?

佐々木:エンジンはノーマルの3Lエンジン。これもブーストを上げていけばもっと速くなります。今回、僕のベストは9分14秒なのですが、他のクルマにひっかかってのタイムなので、まとめれば9分前半、9分4秒か5秒は出ますね。

clicccar:モリゾウさんも良い走りをしていたと思います。

佐々木:モリゾウ選手は本当にすごいと思います。ニュル24時間レースを単独で走ることって、本当にすごいことです。日本のサーキットではなく、ココはニュル。ここでしっかり走り、最後まで走り、ゴールまで来るって、すごいですね。僕はS耐もモリゾウさんと一緒にレースをさせていただいていますが、僕なんかがこんなことを言える立場ではないんだけど、とても親近感を感じています。そうしたなかで、一緒にセッティングさせていただいて、ちゃんとドライビングテクニックを学ばれて、しかも安全に速く、自分でコントロールできるクルマになっていっているんです。

clicccar:我々取材班としてみれば、ストリートのヒーローの「マサ」がGAZOO Racingドライバーの一員として、モリゾウ選手とペアで走るというのは、実は本当にうれしいことです。

佐々木:J SPORTSのインタビューで「昔、峠は合法だったんですよ。峠でタイムアタックが出来たんですよ」と話をしたところ、めちゃめちゃモリゾウさんが突っ込んでくれました。「そんな時代はなかった!」って(笑)。岩手県はそういうところがあったんですよ!(笑)

(文・写真:渡辺 文緒)