新型のキャブオーバータイプはかなりいい乗り心地!? 日野のダカールラリーマシンに同乗試乗

●AT&キャブオーバータイプはドライバーの披露軽減に効果絶大!?

世界一過酷なラリーレイドとして知られるダカールラリーに1991年から参戦している日野自動車。圧倒的迫力を持つトラックのラリーマシンに同乗することができました。

日野のトラックへの同乗試乗はモータースポーツジャパンなどでも行われていますが、今回の同乗試乗は茨城県にある同社のテストコースを使ってのラフロード試乗となりました。

まず最初に乗ったのはボンネットタイプのキャブ(運転席)を採用した新型の2号車。ドライバーは塙郁夫選手です。今期のマシンは3名乗車となっています。2号車はセンターシートが後方にオフセットされています。私が乗ったのは、もっとも右のシート(マシンは左ハンドル)です。

エンジンを始動すると空調吹き出し口から冷えた空気が吹き出します。昔は競技車両にエアコンなどは考えられませんでしたが、今はドライバーの状態を良くすることが大切にされるので、エアコンを使う競技も増えています。

じつは塙選手、このマシンに乗るのは当日の朝が初めて。スイッチ類の配置についてもまだ確実に把握していない状況でしたが、そこはプロ。走りに関する装置はすべて把握しています。アスファルト舗装の駐車場からスタートし、短めのストレートを走ると半径の大きめの左コーナーがやってきます。踏み台を使わないと乗り込めないほどの高いシートのクルマで、このスピードなの? と思わせるハイスピードでコーナーリングしていきますが、不安感はまるでありません。

加速もかなり強力です。何しろ搭載しているエンジンは750馬力もあるのです。組み合わされるミッションは6速ATです。奥のストレートエンドでは140km/hまで速度が上がっていました。Uターンするように左コーナーを抜けると、待ち受けているのはジャンピングスポットです。

通常トラックは段差があれば速度を落として通過します。しかし、ダカールラリーのマシンはジャンピングスポットに全開のままで突入します。大きくジャンプしますが、着地時のショックはきれいに吸収されます。スタート地点まで加速して、舗装部分でブレーキングするとものすごく強い制動感を感じます。8トンを超える車重のマシンのフルブレーキングはシビれます。

塙選手はこのボンネットタイプのキャブについて「石が飛んでこないのがいい」と言います。従来のキャブオーバータイプだと先行車が巻き上げた石などが直接ぶつかることになりますが、キャブオーバータイプだとノーズ部分がかなりカバーしてくれます。

続いて、菅原照仁選手ドライブによる1号車、キャブオーバータイプの試乗です。こちらも3席分のシートが装備されていますが、2号車ほどのオフセットはなく、ほぼ真横に3列が並んでいるような感じです。1号車には中央のシートに座りました。

フレーム、エンジン、サスペンションなどは2号車と共通ですが、こちらはミッションが6速のMTとなります。そのため2号車にくらべて若干せわしないドライビングとなります。ステージによっては1日に1000km近くも走行することになるダカールラリーでは、ATとMTではドライバーの負担が大きな開きがあると感じました。

また、キャブオーバータイプは走行時の上下動がボンネットタイプに比べてずっと大きくなります。ラリーレイドではドライバーに負担の少ないボンネットタイプが有利だと感じました。

(文/写真・諸星陽一)

この記事の著者

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諸星陽一

1963年東京生まれ。23歳で自動車雑誌の編集部員となるが、その後すぐにフリーランスに転身。29歳より7年間、自費で富士フレッシュマンレース(サバンナRX-7・FC3Sクラス)に参戦。
乗って、感じて、撮って、書くことを基本に自分の意見や理想も大事にするが、読者の立場も十分に考慮した評価を行うことをモットーとする。理想の車生活は、2柱リフトのあるガレージに、ロータス時代のスーパー7かサバンナRX-7(FC3S)とPHV、シティコミューター的EVの3台を持つことだが…。
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