「5分以上かけろ」と指示!? 駐禁取り締まりを行う『駐車監視員の不思議な行動』には「秘密の理由」があった!

■駐禁ステッカーを貼らなくても、駐車監視員は仕事をしたことになる!

●駐車監視員の本来の仕事は取り締まりではなく「巡回活動」だった

駐車監視員って不思議だ。

近くの店へ配達中らしいバンや2tトラックなど、「ドライバーがすぐ戻ってくるに決まってるじゃん」と思える車に対し、ゆっくりもったり駐禁取り締まりを行なう。そんなシーンをあなたも見たことがあるだろう。
案の定、すぐにドライバーが戻り、駐車監視員は黙ってすごすごと去って行く。
駐車監視員て不思議、どうなってんの? そう感じた方も多いんじゃないか。

だが! けっして不思議ではないのだ。
そこには、世間が知らない「秘密の理由」があった。
「取付・中止・警告・誤記件数(平成30年中)」という表をご覧いただきたい。警察庁(全国警察のいわば総元締め)が作成した表だ。

(編注:ダントツで件数が多い「警視庁」は、東京都のこと。こうしてみると、場所によって件数に大きな差があることが分かる。あなたの都道府県は、どんな傾向だろうか)

この表を理解するには用語解説が必要だ。
駐禁ステッカーを貼っての取り締まりは、駐車監視員だけでなく警察官も行えるが、駐車監視員のほうが断然多い。以下、駐車監視員の取り締まりに限って解説する。

【表の用語解説】
・取付件数
黄色い駐禁ステッカーを貼り付けた(取り付けた)件数。
・中止件数
携帯プリンターで駐禁ステッカーをプリントアウトする前にドライバーが戻った件数。
・警告件数
駐禁ステッカーをプリントアウトしたあと、車やバイクにぺたりと貼り付ける前にドライバーが戻った件数。
・誤記件数
携帯プリンターの不具合でちゃんと印字されなかった場合も含むらしい。

この取り締まりは、駐禁ステッカーを貼って成立する。貼る前にドライバーが戻れば、駐禁ステッカーの貼り付けは行えない。つまりドライバーの側からすればセーフだ。

平成30年(2018年)の全国の合計はこうなっている。
・取付=117万4633件
・中止=273万2005件
・警告=11万1308件
・誤記=3万8573件

なんと、駐禁ステッカーを貼り付けた件数より、プリントアウトする前にドライバーが戻って「中止」となった件数が、約2.3倍も多いんだね。
プロ野球にたとえて貼り付けがヒット、中止がアウトとすれば、打率は約3割だ。

しかし! 駐車監視員の仕事は「巡回活動」とされている。駐禁ステッカーを取り付けるだけが仕事じゃない。中止や警告も、ちゃんとカウントされる。
たとえていえば、駐車監視員は打席に立ってバットを振ること自体が仕事であり、ヒットを打てず空振りでも、バットを振ったこと自体でちゃんと仕事をしたことになるのだ。

●迷惑な駐車でなければ「わざとゆっくりやる」ことも!?

ちなみに、駐車監視員の仕事がゆっくりもったりしているように見えるのは、2つの理由があるようだ。

大きな理由は、ミスを犯さないよう慎重にやっているから。
駐車監視員は高齢者がけっこう多い。あわてるとミスを犯し、警察官がカバーしなければならない。警察のほうではその手間を嫌い、「5分以上かけろ」などと指示したりしているそうだ。
もう1つの理由は、現役の駐車監視員氏がそっと教えてくれた。

「私らは、これは取り締まる、これは見逃すとか勝手に決めることができません。運転者がいない路上駐車を見つけたら即、取り締まりを開始しなきゃいけないんです。でも、特に迷惑な駐車じゃないし、明らかに配達のようだし、可哀相になることはあります。そんなとき、ドライバーさん、早く戻ってきてくれよと思いつつ、わざとゆっくりやることもあったりなかったり(笑)」

良心的な駐車監視員がいるってことは、逆に「非良心的」な者もいるってことだ。とにかく「取付」件数を稼ごうと、汚いことをする者もいるらしい。その話はまた今度。

(今井亮一)