トヨタがロサンゼルスで300マイル(約480km)走行可能な燃料電池(FC)大型商用トラックを公開

トヨタの北米事業体である「Toyota Motor North America」は、北米時間の2019年4月22日、米トラックメーカーのケンワース(Kenworth)と共同で開発した燃料電池(FC)大型商用トラックを公開しました。今年秋から、このFC大型商用トラックを使用した貨物輸送オペレーションを開始する予定としています。

FC大型商用トラックが公開されたのは、カリフォルニア州ロサンゼルス港で開催された、貨物輸送の「ゼロ・エミッション化」を目指してロサンゼルス市港湾局が推進するプロジェクトのお披露目イベント。

トヨタは持続可能なモビリティ社会の実現に向けて、以前より全方位での電動化を進めてきたとしています。なかでも注力してきたFC技術は、環境性能に加えて、利便性や汎用性の高さから、将来の有力なパワートレーンと位置付けて、商用車も含めた開発・実証を進めています。

カリフォルニアでは、商用トラックへのFC技術展開の可能性を検証するために、FC大型商用トラックを試作し、2017年からロサンゼルス港湾地区で実証実験を実施。実験結果を踏まえて2018年からはトラックの一部改良を行うなどの改善を続けてきました。

今回のプロジェクトは、これまでの実証を発展させ、実用化に向けた歩みを進めるものとして、様々なパートナーとともに取り組んでいるものです。

プロジェクトで使われるFC大型商用トラックは、トヨタが2017年から行ってきた14,000マイル以上の走行実証で得られた知見をもとに、ケンワースのトラック「T680」をベースに、ミライのFCシステムを応用して搭載。航続可能距離は、平均的な1日の運送距離の2倍となる300マイル(約480km)。

ロサンゼルス港を拠点に、近隣のインランド・エンパイア地域やウィーニーミー港周辺のほか、北部のメルセド郡などのエリアで貨物輸送を行う予定としています。今年秋から1台目のオペレーションを開始し、順次、10台まで拡充していくそうです。運行においては、トヨタの物流事業を担う「Toyota Logistics Services」に加えて、一般の貨物運送会社(United Parcel Services、Total Transportation Services、Southern Counties Express)も参画するとしています。

同プロジェクトは、貨物輸送トラックによる大気汚染問題が深刻なロサンゼルス港やロングビーチ港において、FC技術などを用いた貨物輸送の「ゼロ・エミッション化」を目指してロサンゼルス市港湾局が中心となって進めているもので、「ZANZEFF:Zero-and Near Zero-Emission Freight Facilities Project」と呼ばれています。トヨタは、ケンワースやエネルギー企業のシェルなどとともに参画。同プロジェクトは、カリフォルニア州大気資源局(CARB : California Air Resources Board)より、全体費用(約8,300万ドル)の約半分となる4,100万ドルの補助を受けているそうです。

水素補充では、シェルがロサンゼルス市のウィルミントン地区と内陸部のオンタリオ市に、FC大型商用トラック向けに大型水素ステーション2基を新たに建設。プロジェクトでは、バイオマスから水素を作るステーションも含めた、トヨタの施設内にある3つのステーションとともに、合計5基の水素充填ネットワークが使われるそうです。さらに、ウィーニーミー港にゼロ・エミッションのトラクター2台を新たに導入するほか、トヨタの港湾倉庫で使用するフォークリフトのゼロ・エミッション化も拡充していくとしています。

(塚田勝弘)

この記事の著者

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塚田勝弘

1997年3月 ステーションワゴン誌『アクティブビークル』、ミニバン専門誌『ミニバンFREX』の各編集部で編集に携わる。主にワゴン、ミニバン、SUVなどの新車記事を担当。2003年1月『ゲットナビ』編集部の乗り物記事担当。
車、カー用品、自転車などを担当。2005年4月独立し、フリーライター、エディターとして活動中。一般誌、自動車誌、WEB媒体などでミニバン、SUVの新車記事、ミニバンやSUVを使った「楽しみ方の提案」などの取材、執筆、編集を行っている。
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