【自動車用語辞典:電動化技術「三菱PHEVシステム」】アウトランダーに搭載されたバランス型のPHEV

■世界でもっとも売れているPHEVシステム

●燃費性能を走りのよさを両立

三菱・アウトランダーPHEVは、燃費訴求型のPHEVでなく、前・後輪それぞれにモーターを搭載し、走りとのバランスも考慮した4WD SUVです。PHEVのパイオニア的な存在のアウトランダーPHEVのシステムと特徴について、解説していきます。

●アウトランダーPHEVシステムの特徴

アウトランダーPHEVは、前・後輪それぞれにモーターを搭載した4WDの SUVです。

システムには次の特徴があります。

・大容量の駆動用電池と高出力モーターを搭載し、EVとしての実用的な航続距離と、EV特有の加速性能を実現

・電池の電力を補充するため、エンジンと発電機を搭載。電池容量が少なくなっても、不安なく走行を継続することが可能

・さらに高速走行では、燃費向上のためにエンジンの動力で走行。必要に応じてモーターでアシストすることでスムーズな加速を実現

●3つの走行モード

3つの走行モードを走行条件に応じて自動で選択し、燃費と走りの両立を実現しています。
・EVモード
プラグインによる外部充電と、エンジンの発電による充電エネルギーを使って、モーターで走行
・シリーズ式ハイブリッドモード
登坂や急加速など力強い加速が必要な場合、エンジンで発電した電気を使ってモーターで走行
・パラレル式ハイブリッドモード
電池の残量が少ない場合と高速走行中は、エンジンで走行し、必要に応じてモーターでアシスト

●基本仕様と性能

PHEVシステムは大容量の駆動電池、フロントにはエンジンとモーター、発電機を、リアにもモーターを搭載し、それらを制御するコントローラーで構成されています。
発電用エンジンは、排気量2.4Lのアトキンソンサイクルを採用しています。

電池容量は13.8kWh、満充電でのEV航続距離は65km、EVでの最高速度は135km/hです。

三菱独自の車両運動統合制御4WDシステム「S-AWC(スーパー・オールホイールコントロール)」には、「NORMAL」、「4WD LOCK」の他「SPORT」と「SNOW」モードがあります。「SPORT」モードでは前後駆動力配分を後輪寄りに設定し、加速性能や旋回性能を向上させ、「SNOW」モードでは雪上走行の安定性と制御性を高めています。

●プリウスPHEVとクラリティPHEVとの違いは

アウトランダーPHEV は、EVベースで電池容量を減らし、発電用のエンジンを搭載したEV派生のPHEVです。一方、プリウスPHEVとクラリティPHEVは、両社が開発した高効率HEVシステムの電池を大容量化し、外部充電機能を付加したHEV派生のPHEVです。

3つのモデルの仕様と性能を比較します。

・三菱・アウトランダーは、前・後輪それぞれにモーターを搭載した4WD SUV
エンジン2.4L、電池容量13.6kWh、航続距離 65.0km、HEV燃費18.6km/L

・トヨタ・プリウスPHEVは、HEVシステム「THS」をベースにしたFFセダン
エンジン1.8L、電池容量8.8kWh、航続距離 68.2km、HEV燃費37.2km/L

・ホンダ・クラリティPHEVは、HEVシステム「i-MMD」をベースにしたFFセダン
エンジン1.5L、電池容量17kWh、航続距離 114.6km、HEV燃費28.0km/L

アウトランダーPHEVは、燃費や航続距離など性能面では、プリウスPHEVとクラリティPHEVに劣ります。しかし、2モーターによるEV走行性能と4WD機能、さらに低燃費とのバランスをとった環境対応SUVで、他のPHEVとの差別化を図っています。


PHEVのパイオニア的なアウトランダーは、現在世界中で最も販売台数の多いPHEVです。特に、税制優遇の大きいオランダなど欧州では、人気を博し投入5年で11万台以上売れています。

高級ブランドを除くと、PHEV唯一の4WDのSUVという希少価値で存在感を示しています。

(Mr.ソラン)

この記事の著者

Mr. ソラン 近影

Mr. ソラン

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までをやさしく解説することをモットーに執筆中。もともとはエンジン屋で、失敗や挫折を繰り返しながら、さまざまなエンジンの開発にチャレンジしてきました。
EVや燃料電池の開発が加速する一方で、内燃機関の熱効率はどこまで上げられるのか、まだまだ頑張れるはず、と考えて日々精進しています。夢は、好きな車で、大好きなワンコと一緒に、日本中の世界遺産を見て回ることです。
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