【週刊クルマのミライ】コネクテッドカー時代の安全なマイコンをサイプレスが発表

【CASE時代のマイコンに求められる機能に対応した新チップ】

フラッシュメモリやマイコンなど車載用のエレクトロニクスで知られるサイプレス セミコンダクタ社(以下、サイプレス)から新しい車載用マイコン・シリーズ「Traveo II(トラベオ・ツー)」が登場します。2019年第四四半期の量産開始を前に、サンプル出荷が始まったということで、その説明会が開かれました。

サイプレスは車載向け組み込みシステムのリーディングカンパニーで、同社のマイコン「トラベオ」シリーズは、メーターやインフォメーションディスプレイの制御においてトップシェアを誇っていることで知られています。そのマイコンが「トラベオ・ツー」に進化するというわけです。

その進化は、「CASE」と呼ばれる自動車業界の大きなトレンドに合わせたものです。CASEとはコネクテッド・自動運転・シェアリング・電動化を示した造語ですが、このマーケット・トレンドがマイコンに求めるのは、まず安全性と性能アップ、そして省電力化です。

コネクテッドカーは外部とつながりますが、逆にいえば侵入する経路が増えることになります。そうした部分でのセキュリティ性能は重要です。一方で、クルマの機能もスマートフォンやパソコンのように通信を利用してアップデート(セキュリティパッチのインストール)やアップグレード(機能の追加)ができるようにしておくことも新たなニーズとして生まれています。

そうしたアップデート、アップグレードを実現するのがFOTA(ファームウエア・オーバー・ジ・エア)機能です。クラウドからのデータを受け取り、セキュリティに寄与するHSM(ハードウェア・セキュリティ・モジュール)、ダウンロードしたデータを一時保存しておくための外部メモリ・インターフェイス、12.5万回の読み書きや20年のデータ保持を可能とした内蔵フラッシュメモリなど信頼性を確保するための機能が搭載されています。

ユーザーインターフェースや各種のエクスペリエンスも複雑な表現が求められますから、パフォーマンスアップは重要です。新しい「トラベオ・ツー」ではデュアルコアモデルの設定や、上位モデルは8MBフラッシュメモリの採用など新世代らしい進化を遂げているのです。

車載マイコンは増える一方ですが、それらはクルマのキーを切ったからといって完全にパワーオフできるわけではありません。駐車時のスリープモードでもわずかな電力を消費しています。そうしたディープスリープモードでの消費電力はわずかなものですが、マイコンが増えていけば、ちりも積もれば山となるとばかりにバッテリーの負担となりかねません。

そこでサイプレスは「トラベオ・ツー」の消費電力を低く抑えるよう設計を工夫しています。具体的には、現行のトラベオがディープスリープモードで50マイクロアンペアの電力消費をするのに対して、トラベオ・ツーでは35マイクロアンペアまで低減されました。

こうしたマイコンの機能アップはユーザビリティにつながることでしょう。我々が車載エンターテイメントや各種の便利な機能を味わっている影にはマイコンの進化があるというわけです。

(山本晋也)

この記事の著者

山本晋也 近影

山本晋也

日産スカイラインGT-Rやホンダ・ドリームCB750FOURと同じ年に誕生。20世紀に自動車メディア界に飛び込み、2010年代後半からは自動車コラムニストとして活動しています。モビリティの未来に興味津々ですが、昔から「歴史は繰り返す」というように過去と未来をつなぐ視点から自動車業界を俯瞰的に見ることを意識しています。
個人ブログ『クルマのミライ NEWS』でも情報発信中。2019年に大型二輪免許を取得、リターンライダーとして二輪の魅力を再発見している日々です。
続きを見る
閉じる