通算50戦目のレースとなるフォーミュラEの香港ラウンド、ロッテラーは悔しいリタイヤ【フォーミュラEの見どころ#1】

いよいよ今週末、オーストラリアでF1が開幕しますね。先週はレッドブルのF1マシンが都内で爆走し、たくさんのファンが熱狂したことでしょう。

その同じ週末、ご近所の香港でも国際的なモータースポーツイベントが行われていたんですよ。フォーミュラE(FE)の第5戦、香港ラウンドです。正直なところ、始まった4年前には注目する関係者も多くなかった「電気のF1」ですが、アウディ、BMWに続いてニッサンも参戦するなど、世界的に注目度が高まっています。

今回の「香港Eプリ」は、FEが始まってちょうど50戦目にあたるレースとなりました。初戦から参戦しているシーズン3のチャンピオン、ルーカス・ディ・グラッシ(ブラジル)は、「シリーズが始まった当初はだれも興味を示さなかった。それが今では、世界的な自動車メーカーがこぞって参戦している。FEが、ここまで成長したことは本当に嬉しい」と感慨深げに語っていたのが印象的でした。

記念すべきレースは、FEで初のウェットレースとなりました。朝から雨が降ったり止んだりする不安定な空模様と路面コンディションのなか、現地時間16時に「45分+1周」のレースがスタート。前戦チリ・サンチアゴで優勝し、勢いに乗るサム・バード(イギリス)が7番グリッドから上位を次々にパスし、序盤でトップに立ちました。

その後、3台が絡むクラッシュでマシンがコースをふさぐ形となり、赤旗が掲示されてレースは一時中断。約10分後にレースが再開されると、日本でもお馴染みのアンドレ・ロッテラー(ドイツ)とバードによる激しいトップ争いが始まります。数周にわたるバトルの中、プッシュしすぎたバードがストレートエンドのヘアピンをややオーバーランすると、その隙を突いたロッテラーがトップに立ちます。あきらめないバードも食らいつき、その後は狭いストリートコース上で接触すれすれの激しいトップ争いが終盤まで続きました。

レースが動いたのは残り2周。勢い余ったバードがロッテラーのマシンに追突し、ロッテラー車の右リヤタイヤがバースト、リタイヤを余儀なくされてしまいます。コックピット内で悔しさをあらわにするロッテラーの背中が印象的でした。

エドアルド・モルタラ(スイス)がバードに続いてゴール。日本ではあまりなじみがないドライバーですが、DTMで活躍し、マカオでもF3やGTで優勝経験のある、レース戦略の上手さと切れ味の鋭い走りを兼ね備えた名手です。前戦メキシコでの3位表彰台から好調を維持したモルタラは、6番グリッドから冷静な走りでロッテラー、バードの様子をうかがう走りを見せていました。

表彰台では、バードを頂点に2位モルタラ、3位ルーカス・ディ・グラッシ(ブラジル)というメンバーが並びましたが、その後、ロッテラーとの接触に対してバードに5秒のペナルティが課せられて6位に降格。繰り上げではありましたが、モルタラがFE初勝利を挙げました。

ロッテラーの他に、日本でおなじみのストフェル・バンドーン(オランダ)も今、FEで活躍しています。今シーズン、メルセデスが先鋒として送り込んできた「HWAレースラボ」チームのマシンに乗り、予選ではデビュー戦でポールポジション争いを展開する活躍を見せています。今回のレース、惜しくもマシントラブルでリタイヤしましたが、初ポールポジションを獲得し序盤はトップグループを走行するなどファンを沸かせてくれました。

ニッサンの参戦にも関わらず、なかなか情報が入ってこない感のあるFE。僅差の激しいバトルを含め、実際には見どころはたくさんありそうです。次回は、そういったトコロについて少しご紹介したいと思います。

(Toru ISHIKAWA)