【ネオ・クラシックカー・グッドデザイン太鼓判】日伊合作。彫刻的ボディのハイパフォーマンス4ドアセダン。第40回 トヨタ アリスト(初代)

80~90年代日本車のグッドデザインを振り返る本シリーズ。今回は、高級車でありながらドライバーを最優先とした、新時代のハイパフォーマンス4ドアセダンに太鼓判です。

90年代を迎えて高級車にも多様化が進む中、トヨタは、9代目クラウンにより上級を志向する新シリーズ、マジェスタを追加。これをベースに、走行・動力性能に磨きをかけて開発されたのが、1991年登場の初代アリストです。

ハイパフォーマンスを指向するボディは、高級車としては異例のウエッジシェイプ。あたかも、ひとつのカタマリから削り出されたような彫刻的造形は「ソリッド・フォルム」と名付けられました。

「平面から曲面」「線ではなく面」のテーマでまとめられたボディに余計なラインは皆無。パネルは徹底的に面一化が図られ、さらにボリューム感のあるプレスドアを採用することで、ロングキャビンのワンモーションフォルムを効果的に演出します。

超スラントのフロントフェイスは、シンプルなランプとグリルの組み合わせでスポーティでありつつ端正さも。対するハイデッキのリアは、ブラックのガーニッシュと一体化された大型ランプが、高いクオリティと近未来感を打ち出します。

インテリアもボディに準じ、ダッシュボード、コンソール、トリムを一体化したシンプルな造形。各部分は厚みを感じさせ、ドライバー中心のコクピットはエルゴノミックデザインが意識されました。

「新しい高級車のアイデンティティ」をコンセプトとした初代は、G・ジウジアーロ率いるイタルデザインのプロトモデルがベース。原案よりもソフトイメージとされながらも、ダイナミックなプロポーションはそのまま商品化されました。

日本的なハードトップボディをベースに、まったく対照的なダイナミックセダンを生み出した力量は見事ですが、そもそもこうした企画を立てた当時のトヨタデザインには、まだまだ自由でオープンな環境があったように思われるのです。

●主要諸元 トヨタ アリスト 3.0V(4AT)
型式 EーJZS147
全長4865mm×全幅1795mm×全高1420mm
車両重量 1680kg
ホイールベース 2780mm
エンジン 2997cc 直列6気筒DOHCターボ
出力 280ps/5600rpm 44.0kg-m/3600rpm(ネット値)

(すぎもと たかよし)

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すぎもと たかよし

東京都下の某大学に勤務する「サラリーマン自動車ライター」。大学では美術科で日本画を専攻、車も最初から興味を持ったのは中身よりもとにかくデザイン。自動車メディアではデザインの記事が少ない、じゃあ自分で書いてしまおうと、いつの間にかライターに。
現役サラリーマンとして、ユーザー目線のニュートラルな視点が身上。「デザインは好き嫌いの前に質の問題がある」がモットー。空いた時間は社会人バンドでドラムを叩き、そして美味しい珈琲を探して旅に。愛車は真っ赤ないすゞFFジェミニ・イルムシャー。
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