【週刊クルマのミライ】2018年に登場したニューモデル、もっとも未来を感じさせたのはホンダのN-VANだった

●軽バン全体の評価を上げた!? FFだけじゃない、様々な可能性を秘めた1台

2018年、様々なニューモデルが日本の自動車市場を彩りました。その数50台、そこから2018年を象徴するクルマを選ぶクリッカー・オブ・ザ・イヤーの投票は2019年1月3日までとなっていますが、エントリー台数からもわかるように、ほぼ毎週のように新型車が出ていた一年でした。

国産に限っても、上は車両価格1960万円のトヨタ・センチュリーから、エントリーカーのダイハツ・ミラトコットまで多様な新型車が登場しました。その中で、もっとも未来を感じさせたモデルを独断で選べば、ホンダN-VANでキマリでしょう。

ハードウェアとしては、第二世代に進化したN-BOXのアーキテクチャを利用した商用バンですが、助手席側ピラーレスのボディはN-VANのオリジナル。S660譲りとなる6速MTを設定したのも話題となった一台です。助手席まで格納できるという構造はアイデアもので、バンとしてのビジネスユースではシングルシーターとして運用することが前提ともいえるユニークな軽バンです。

アイデアはともかくメカニズムとしてはシンプルにも思えるN-VANに未来を感じた理由は、このクルマがFFプラットフォームの上に成立しているからです。

これまで1BOXの軽バン(キャブオーバーバン)といえばFRであるべし、という市場の声が多かったわけです。実際、ホンダもMRのアクティを投入していました。しかし、そのカテゴリーに分類としてはボンネットバンとなる「N-VAN」を提案してきたのです。荷物を満載したときのトラクション性能においてリア駆動が有利という定説が、FRを求める声となっているのですが、FFベースのメリットは床を低くできること、そして燃費に有利な傾向にあります。リアルワールドでのトラクション性能が十分に確保されているのであればFRにこだわる必要はないといえます。

軽自動車の主流はFFで、技術進化もFRプラットフォームよりも速くなっています。それが前述したように燃費性能での優位性にもつながりますし、乗り心地などの面でも有利に働きます。

N-VANを市場が味わい、その評価が高くなれば、他社も追従すること必至。つまり、軽1BOXの主流がFRからFFへシフトする可能性を感じるのです、このニューモデルの登場には。

ちなみに、N-VANの2018年11月の販売台数は5563台。前年同月におけるアクティ&バモスホビオプロの販売台数は697台ですから、ホンダユーザーはN-VANを評価しているといえそうです。おもしろいのはスズキ・エブリイ、ダイハツ・ハイゼットカーゴといったライバルモデルも、2018年の累計販売台数(1月~11月)でいうと前年比を超えていること。N-VANの登場によって、スペースユーティリティにすぐれた軽バン全体の評価が上がっているのかもしれません。じつは税制面でいっても軽自動車税が約半額となるなどバン(商用)は有利ですからパーソナルユースであれば乗用車にこだわる必要はないと市場が気づいたとも考えられます。

N-VANの登場により、軽1BOXのFF化が進む可能性があり、フリートではない乗用系ユーザーの視点が商用車に向いたという2点において自動車市場の未来に対して影響を与えたニューモデルとしても評価すべきだと思うのです。

(山本晋也)

この記事の著者

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山本晋也

日産スカイラインGT-Rやホンダ・ドリームCB750FOURと同じ年に誕生。20世紀に自動車メディア界に飛び込み、2010年代後半からは自動車コラムニストとして活動しています。モビリティの未来に興味津々ですが、昔から「歴史は繰り返す」というように過去と未来をつなぐ視点から自動車業界を俯瞰的に見ることを意識しています。
個人ブログ『クルマのミライ NEWS』でも情報発信中。2019年に大型二輪免許を取得、リターンライダーとして二輪の魅力を再発見している日々です。
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