自社商品の「色」を打ち出せ! 「オートカラーアウォード」でのカラーデザイナーによるプレゼン合戦が開催

クルマのデザインといえばエクステリアばかりが注目されがちですが、カラーデザインに特化し、毎年顕彰を行っているのが「オートカラーアウォード」です。12月7日と8日の2日間、横浜美術館(神奈川県横浜市)で開催された選考会から、今回は初日のプレゼンテーションをレポートします。

「オートカラーアウォード」は一般社団法人日本流行色協会が主催する制度で、今年が21回目。当初は単純にボディカラーを対象としていましたが、17回目以降は対象を広く「車両」と捉え、内外装すべてのカラーデザインについて選考を行っています。

審査は、3名の専門委員と同会自動車色彩分科会から各メーカーのデザイナーが12名、さらに事前登録の一般審査委員100名によって実施。初日が各メーカーの担当者によるプレゼンテーション、2日目が審査と表彰となります。

そのプレゼンですが、ノミネートの四輪9車種(シリーズ)、二輪5車種(シリーズ)について、メーカー担当者1~2名が一車種10分間の持ち時間で行います。これが実に面白い!

自作資料を投影して話をするスタイルは共通ですが、メーカー、担当者によって資料の内容はまったく異なり、話し方もさまざま。たとえば、LCのレクサスが美しい映像作品で格調高く進める一方、ミラ・トコットのダイハツは、イラスト入りの資料でコミカルに笑いを取るなど。

また、楽器の塗装技術を二輪(SR400シリーズ)に取り入れたヤマハは、何とギターの生演奏をバックにして大ウケ。エクリプスクロスの三菱は、某公共放送の「プロフェッショナル」風な開発物語として仕上げ、感動を呼んでいました。

こうして、メーカー間のまさに色の違いを感じるのがプレゼンの醍醐味ですが、先のとおりエクステリアの陰になりがちなCMF(カラー・マテリアル・フィニッシュ)デザイナーの仕事を、広く世の中に周知することも大きな目的。それは下記のようなコメントにも表れています。

「私たちとしては、毎年この賞があることをかなり意識しています。社内と違い、こうした場でのプレゼンは緊張しますけど、他社さんの話は刺激にもなります。CMFはメディアへの露出も少なくなかなか理解されませんので、こうした機会が増えると嬉しいですね」(三菱自動車 デザイン本部 カラーデザイン担当 越山明日香さん、加藤則子さん)

本年度のグランプリは、ホンダN-VANのガーデングリーン・メタリックとブラックの内外装組み合わせがグランプリとなりました。このホンダの、望ましい「緑」を見つけるプレゼンも秀逸でしたが、単に苦労話ということではなく、デザインの幅広さと深さが広く周知されることこそが肝要です。

デザインという言葉は、たとえばクルマ周辺でもまだまだ理解度の浅い扱いが目立ちます。ましてやカラーデザイン、CMFって何だ?という現実もあります。このイベントやグランプリ受賞車から、そういった状況が少しずつ変化することを期待したいところです。

●第21回「オートカラーアウォード2018」

「グランプリ」
本田技術研究所 N-VAN
テーマ/人に寄り添う 軽バンCMF
カラー/エクステリア:ガーデングリーン・メタリック
インテリア:ブラック

「審査委員特別賞」
トヨタ自動車株式会社 JPN TAXI
テーマ/日本の風景を変える、伝統色、おもてなしの心を込めた空間
カラー/エクステリア:コイアイ
インテリア:クロコハク

(すぎもと たかよし)

この記事の著者

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すぎもと たかよし

東京都下の某大学に勤務する「サラリーマン自動車ライター」。大学では美術科で日本画を専攻、車も最初から興味を持ったのは中身よりもとにかくデザイン。自動車メディアではデザインの記事が少ない、じゃあ自分で書いてしまおうと、いつの間にかライターに。
現役サラリーマンとして、ユーザー目線のニュートラルな視点が身上。「デザインは好き嫌いの前に質の問題がある」がモットー。空いた時間は社会人バンドでドラムを叩き、そして美味しい珈琲を探して旅に。愛車は真っ赤ないすゞFFジェミニ・イルムシャー。
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