【ネオ・クラシックカー・グッドデザイン太鼓判:番外編】カローラ スポーツ誕生記念。歴代カローラのデザインを振り返る!(10代目)

80〜90年代の日本車デザインを振り返る本シリーズ。今年6月、あらたにカローラ スポーツが登場したのを機に、番外編として歴代カローラのデザインを振り返ります。

「ニューセンチュリーバリュー」を標榜し、デザイン、パッケージングともに大きな進化をとげた先代は、新時代のコンパクトセダンとして成功作に。これを継承し、より分かりやすいスタイリッシュさを目指したのが2006年発表の10代目カローラです。

キャッチコピーの「新しい尺度のクルマつくり」は、この代から国内外で仕様を分けたことと、さらにトヨタの新しいデザインフィロソフィである「VIBRANT CLARITY(活き活き、明快)」を反映したことによります。

先代比で45mm長く、10mm低くなったボディは、より伸びやかでかつ躍動感を狙ったもの。実際キャビンは、緩やかにカーブを描くキャラクターラインに沿うことで、かなり動きのある形状となりました。この弧を描くようなラインは、同時期の2代目ヴィッツと同じテーマ。ただ、そのセダン版であるベルタのまとまりのよさに対し、カローラが若干貧弱に感じられてしまうのは、必然性を感じないボディの凹凸と思われます。

「フードからバンパーにかけての立体を、フェンダーからのラインで挟み込む」という主張は、フロントランプの一部を欠くような流れを意図的に作りますが、こうした小細工のような処理もまた、ボディ全体を不安定で貧弱なイメージにしたかのようです。

インテリアは、先代の高い質感をそのまま引き継ぐデザインですが、あっさりとした仕上げが、どことなく安い音響機器のような簡素感に。妙にすっきりしたシートもそのイメージを強くしているかもしれません。

近年、国産メーカーは「デザインフィロソフィ」を明確に掲げるようになりました。そうして統一したテイストを求めること自体はいいのですが、多くの場合で「理屈先行」になりがちです。

仮に「感情と合理性を融合する」というこのフィロソフィがどのように反映されたかを語れたとして、しかしそれが優れたデザインであるかどうかは別の話。実際トヨタデザインは、この10代目カローラから迷走を始めることになるのです。

●主要諸元 トヨタカローラ アクシオG 1.5(CVT-i)
型式 DBAーNZE141
全長4410mm×全幅1695mm×全高1460mm
車両重量 1150kg
ホイールベース 2600mm
エンジン 1496cc 直列4気筒DOHC
出力 110ps/6000
00rpm 14.3kg-m/4400rpm ※ネット値

(すぎもと たかよし)

この記事の著者

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すぎもと たかよし

東京都下の某大学に勤務する「サラリーマン自動車ライター」。大学では美術科で日本画を専攻、車も最初から興味を持ったのは中身よりもとにかくデザイン。自動車メディアではデザインの記事が少ない、じゃあ自分で書いてしまおうと、いつの間にかライターに。
現役サラリーマンとして、ユーザー目線のニュートラルな視点が身上。「デザインは好き嫌いの前に質の問題がある」がモットー。空いた時間は社会人バンドでドラムを叩き、そして美味しい珈琲を探して旅に。愛車は真っ赤ないすゞFFジェミニ・イルムシャー。
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