【エクストレイル・ハイブリッド試乗】日産SUVの稼ぎ頭の現行モデルから、次期モデルの姿に想いを馳せる

前編では、エクストレイル・ハイブリッドの良い点について、元某メーカーのシャシーエンジニアの端くれだった筆者がレビューしてまいりました。今回の後編では『気になるところ』についてレビューをしてまいります。

【良いところ・3】ハンドリング・乗り心地・ノイズの秀逸なバランス

一昔前のSUVと比べて、このクラスのSUVのハンドリングや乗り心地は、高いレベルにいます。エクストレイルもハンドリングと乗り心地のバランスは秀逸です。

路面の凹凸を超えてもキャビンはほとんど揺れることもなく、振動も少なく走行し、またコーナー時もロール方向の姿勢変化は少なく、加減速時も安定した姿勢を保ちつつ、安全かつ快適です。また走行時のロードノイズが小さいことも、まるでランクが高い高級車に乗ったかの様な「高品質感」を受ける要因なのだと感じます。

同時期に試乗をしたリーフ(ZE1)と比べて、プロパイロットの出来が良い点も長所です。運転支援時にはハンドルに手を添えていないとなりませんが、その時のハンドルの修正量が少なく、安心感が高く感じます。これは制御ロジックが優れているというよりも、シャシー自体が持つ「直進性」のポテンシャルが高いおかげだと考えられます。

【気になるところ・1】運転席からの死角

試乗の最中に、両側に駐車車両があり、また人がたくさん歩いているような道幅が狭い道を走行しました(道に迷いました)。大柄なボディをぶつけない様に運転していた際、サイドミラー越しの左右・前下の死角が大きく感じました。

理由の一つは、Aピラー下につくサイドミラーであったことが影響しているのかもしれません。海外市場と共用化を考えたクルマつくりだと、余計にコストのかかるドアミラー化をするメリットは少なく、道路の狭い日本ならではの要望かもしれません。しかし、スバルフォレスターやマツダCX5、VWティグアンなど、下方の死角を作らない様にドアミラー化するSUVもあります。

物理的なボディのサイズはそのクルマのコンセプトで決まりますが、そのボディの大きさを「感じるか否か」は、運転席からの視界の広さによると筆者は考えます。エクストレイルには、オプションでアラウンドビューモニターが装備されていましたが、「目視」が可能な範囲はきちんとしたいものです。ちょっとした差ではありますが、フォレスターは死角を減らすことをしっかりと優先した分、軍配が上がります。

【気になるところ・2】時代遅れを感じさせるナビゲーションモニター

現行エクストレイルはデビューから既に6年も経つため、今現在、自動車業界で流行しているインテリアデザインの水準と比べると、一回り古く感じる部分があります。例えばナビゲーションモニターのサイズ。

一昔前は7インチモニターを「大型」と呼んでいましたが、8インチ・9インチといったワイドモニターやデュアルモニターが登場し始めています。例えば、トヨタのC-HRなどは9インチモニターをオプション搭載し、ダッシュボードの最上段にレイアウトされており、運転時の視認性が抜群に良いです。

次期型のエクストレイルでは、こうしたナビゲーション系のサイズやレイアウトはブラッシュアップが必須と考えられます。

また、海外では積極的に導入されている「ヘッドアップディスプレイ」ですが、国産車では高額車に限られ、フォレスターやCR-Vにも搭載されていません(※海外仕様のCR-Vはヘッドアップディスプレイの設定がありますが日本仕様には未導入)。運転時の視線移動を極力減らして、ドライバーの負担軽減、事故予防が期待できるこの運転サポートは、今後一層必要とされてくることでしょう

こうした、大型モニターヘッドアップディスプレイといったIT装備が「標準」となれば、新型エクストレイルもTOPに君臨できるのでは?と考えられます。

エクストレイルの長所は、「高水準の走りの性能」と「低燃費」を「リーズナブルに提供」している点です。オンロードやちょっとした雪道を移動するようなドライバーにとっては、この300万円前半の4WD SUVは、どれも魅力的に映るのではないでしょうか。

いまや、エクストレイルは世界中で販売されており、NISSAN SUVブランドの稼ぎ頭でもあります。世界に目を向けている分、国内仕様が蔑ろにならない様、ユーザーの期待には応え続ける1台であってほしいと思います。

(文/写真:吉川 賢一)

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この記事の著者

Kenichi.Yoshikawa 近影

Kenichi.Yoshikawa

日産自動車にて11年間、操縦安定性-乗り心地の性能開発を担当。スカイラインやフーガ等のFR高級車の開発に従事。車の「本音と建前」を情報発信し、「自動車業界へ貢献していきたい」と考え、2016年に独立を決意。
現在は、車に関する「面白くて興味深い」記事作成や、「エンジニア視点での本音の車評価」の動画作成もこなしながら、モータージャーナリストへのキャリアを目指している。
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