このクルマ、知ってる? インフィニティQ60はエレガントなラグジュアリースポーティーカー

9月のとある日、横浜のみなとみらいにある日産グローバル本社ギャラリーにて、一台のスタイリッシュなクーペが展示されていました。

日産の海外向け高級車ブランド・インフィニティのQ60sというクルマです。2018年10月のパリモーターショーで日産・インフィニティが初公開した『インフィニティQ60プロジェクト・ブラックSプロトタイプ』(Infiniti Project Black S Prototype)のベースとなった車両です。

現在、日本にはインフィニティブランドは導入されておらず、V37型スカイラインとY51型フーガが、エンブレムをインフィニティのバッヂにして発売されています。

このQ60はV37型スカイライン(インフィニティ名だとQ50)のクーペ版で、本来ならば、前型のV36型スカイラインクーペの後継車にあたります。そのため、パワートレイン、シャシー、サスペンションなど、基本的なコンポーネントはV37型スカイラインと共用化しています。

Q60のクーペボディならではの流麗なスタイルと、走りを予感させてくれる背の低いボディは、見ていて一瞬時間を忘れさせるほどに美しく、「エレガント」さが漂っています。

エンジンはV37型スカイラインセダンにも採用されている「ベンツ製」2.0L直4ガソリンターボと、「日産製」3.0L V6ガソリンターボ。この3.0L V6ターボエンジンはグレードによって2つのアウトプット値があり、LUXE、SPORTグレードには300馬力、RED SPORT 400には400馬力を発生するチューニングが施されています。

ちなみに、GT-R(R35型)のアウトプット値が570馬力ですから「物足りない」と感じる方もいるかもしれませんが、GT-Rのような「特殊車両」ではない、通常の量販車で400馬力のエンジンなのですから、そのパワーは想像を超えてパワフルなものです。

他にもQ60には、255/35R20の大径低扁平タイヤ、および4WDシステムを搭載、インフィニティダイレクトステアリングシステム(ステアバイワイヤ)による車線逸脱制御や、電子制御ショップアブソーバも備え、好みのドライブモードに変更することで、ハンドリングのキャラクタを「激変」させることが可能。

日産が開発した先進安全技術もほぼすべてが抜かりなく投入されており、聞いているだけで「お腹がいっぱいになりそう」なほどに、贅沢なクルマなのです。

Q60の車両生産は、主に栃木県にある日産栃木工場にて行われています。工場内部を移動する巡回バスに乗ると、輸出待ちのQ60がずらっと建屋の外に並んでいるのを見かけます。カラフルなQ60が数十台と並んでいる光景は圧巻でした。

栃木工場付近を行き来するキャリアカーには、このQ60や他のインフィニティのクルマ達が搭載されており、ほぼ毎日、フェリー乗り場まで輸送されていく光景を目にすることができます。

筆者は、会社員時代にQ60の「乗り心地の車両開発」に担当エンジニアとして携わっていました。シート開発、タイヤ開発、サスペンション性能開発など、日々、最高水準の技術者たちと切磋琢磨をして、良いクルマつくりを全力で行っていました。今こうしてQ60が世界中を走っているのを見ると、懐かしく、そしてうれしくもなります。

いつの日か、こうしたインフィニティブランドのクルマ達が日本の道を、悠然と走れる日を願います。

(文/写真:吉川賢一)

この記事の著者

Kenichi.Yoshikawa 近影

Kenichi.Yoshikawa

日産自動車にて11年間、操縦安定性-乗り心地の性能開発を担当。スカイラインやフーガ等のFR高級車の開発に従事。車の「本音と建前」を情報発信し、「自動車業界へ貢献していきたい」と考え、2016年に独立を決意。
現在は、車に関する「面白くて興味深い」記事作成や、「エンジニア視点での本音の車評価」の動画作成もこなしながら、モータージャーナリストへのキャリアを目指している。
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