【キャディラックCTS-V試乗】最新のキャディラックは「ハンパない」。ヨーロピアンスポーツを脅かす実力派

キャディラックブランドの若返りをねらい2003年に登場したCTSは「シグマアーキテクチャー」と呼ばれる新世代のキャディラックです。現行モデルは3代目に当たり、2013年に登場しました。

2代目ではクーペやワゴンも設定し、ユーザー層の拡大をねらいましたが、3代目は初心に返りセダンのみに車型を絞ることで、よりCTSらしさを強調する方向性になってきたと言えるでしょう。世界的なエンジンのダウンサイジング傾向にはキャディラックとてあらがうことはできず、もっともベーシックなモデルは2リットルの直列4気筒を搭載しています。

 

そうしたなかで異彩を放つのが「Vシリーズ」です。CTS-Vのネーミングとなる今回の試乗車は、6.2リットルのV8スーパーチャージャーを搭載するモデルです。エンジンのスペックは649ps/6400rpm、855Nm/3600rpmです。ヨーロッパ車なら当然DOHCヘッドを採用したエンジンとなるでしょうが、そこはアメリカンスポーツです。OHVでこの出力を実現しています。

しかし走らせてみると、かつてのアメリカンOHV・V8のようなトルクの塊だけのようなエンジンでないことがわかります。もちろん低速から有り余るトルクを発生するのですが、アクセルを踏んでいくと緻密なメカニズムを感じつつスムーズに上昇していく回転を味わうことができます。

エンジンのスムーズさにバルブシステムなど関係ない、いかにきちんと作るか、いかに精巧に作るかのみが影響するのである……ということを痛切に感じます。その加速感は暴力的でもある側面を持っています。しかし、それこそがアメリカンスポーツでしょうし、ハイパワースポーツであるのです。

サスペンションはフロントがストラット、リヤがマルチリンク式です。このサスに組み合わされるダンパーはキャディラックの定番とも言えるマグネチックライドコントロールです。

3世代目に進化したマグネチックライドコントロールは、絶妙なコントロールでボディをフラットに保ちます。適度な硬さを有した足まわりで走り抜けるコーナリングのフィーリングは正確無比なもの。試乗コースは道幅の狭い一般道だったのですが、それを気にすることなく走れました。レカロ製のシートを採用し、身体がキッチリとホールドされるものドライビングを楽しめる大きな要因でした。

ボディサイズは全長が5040mm、全幅が1870mm、全高が1465mmなのでそれなりに大ぶりですが、サイズの大きさはあまり感じません。ボディの見切りがいいのとクルマの動きが正確だからでしょう。ただしハンドル位置は左のみとなりますので、これはぜひとも改善していただきたい項目です。

キャディラックCTS-Vの価格は1475万円となります。同セグメントのドイツ車と比べると、メルセデス・ベンツE63が1668万円、E63Sだと1805万円。BMW M5が1737万円です。この価格帯になると、価格差はさほど影響しないかもしれませんが、キャディラックのほうが価格的に有利な状況となっています。

(文・写真/諸星陽一)

この記事の著者

諸星陽一 近影

諸星陽一

1963年東京生まれ。23歳で自動車雑誌の編集部員となるが、その後すぐにフリーランスに転身。29歳より7年間、自費で富士フレッシュマンレース(サバンナRX-7・FC3Sクラス)に参戦。
乗って、感じて、撮って、書くことを基本に自分の意見や理想も大事にするが、読者の立場も十分に考慮した評価を行うことをモットーとする。理想の車生活は、2柱リフトのあるガレージに、ロータス時代のスーパー7かサバンナRX-7(FC3S)とPHV、シティコミューター的EVの3台を持つことだが…。
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