【新型ボルボ・V60登場】スタイリッシュさにあふれつつも高い実用性を確保。さらに走りはスポーティ

新型V60に乗り込むと、まずはその高さを抑えられたフロントウインドウから見える景色に懐かしさを感じます。

かつて、スポーティと称されるクルマはどれも上下の高さが抑えられ傾斜したフロントウインドウが与えられていました。しかしミニバンブームやSUVの台頭によって、そうした風景はなかなか見ることができなくなってきてしまいました。そんな時代にワゴンでこの風景にふたたび出会えることは感無量です。

エンジンのパワー感は十分です。2リットルのターボですが最高出力は1リットルあたり100馬力を超える254馬力、最大トルクも1リットルあたり150Nmを超える350Nmで、スポーティカーの部類に入れてもいいほどの力強さです。

かつてターボと言えば、エンジンの回転数がある程度上がらないと過給が得られずに必要なトルクを得られなかったものですが、V60のエンジンは低速からグッと盛り上がりトルク不足を感じません。低速からフラットなトルクを発生するのですが、そこに至るほんの少しの時間の吹け上がり感が気持ちいいのです。これはモーターにはない特性で、エンジンならではの気持ちよさです。

試乗車にはオプションとなるドライビングモード選択機構の「FOUR-C」が装備されていました。走行モードは4つで「コンフォート」「エコ」「ダイナミック」「インディビデュアル」の4モードです。ダイナミックを選ぶとかなり引き締まったハンドリングになり走りを楽しむことができます。普段の走行ではコンフォートで十分、高速道路で移動する際にはエコを選ぶことで燃費も稼ぐことができます。

コーナーリングに対するクルマの動きは正確でスポーティです。とくにダイナミックモードで走らせたときには、左右にステアリングをさばき、タイミングを合わせて加速するというクルマを走らせるうえでもっとも基本的な部分が忠実なので、純粋に走りを楽しむことができます。

V60は車線維持機能を持つACCを備えます。先行車を追従するだけでなく、単独走行でも車線を検知して走行車線内を走ります。手放し運転を推奨するものではありませんが、かなりイージーにドライブでき、長距離移動時の疲れも軽減されます。

以前に比べるとより車線の中央よりを走れるようになったこのシステムですが、走行モードに連動する特性を示しました。コーナーへの追従性を重視するならダイナミックモードを選んだほうがより正確にコーナーをトレースしていきます。ただし乗り心地はちょっと硬めになります。直線の多い高速道路ではエコモード、比較的コーナーが連続するような高速道路ではダイナミックモードでの使用がマッチするでしょう。

今回のV60はユーティリティ面でも進化しました。全幅と全高はマイナスされましたが、全長が伸ばされたことでリヤシートの広々感はより高められています。

全幅がマイナスとなって、左右間に窮屈さが増しているかといえばそんなことありません。そもそもがリヤシートは3名分が用意されていますが、ここに3名が乗って長距離を移動することは考慮されていないからです。

ラゲッジスペース容量も先代のV60が430リットルであったのに対して、新型は約100リットル増しの529リットルを獲得。かつてのV70が575リットルですから、かなりの容量を確保しているのがわかるでしょう。

今回試乗したT5インスペクションの車両本体価格は599万円、ベーシックモデルのT5モーメンタムは499万円です。絶対値としての価格は上方にありますが、安全関係を始め各種の装備の充実さや輸入車としては珍しい5年保障なども考慮すれば、ライバルに対する優位性も感じられる価格設定で、かなり人気が出そうな予感がするモデルに仕上がっていました。

(文・諸星陽一/写真・小林和久)

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この記事の著者

諸星陽一 近影

諸星陽一

1963年東京生まれ。23歳で自動車雑誌の編集部員となるが、その後すぐにフリーランスに転身。29歳より7年間、自費で富士フレッシュマンレース(サバンナRX-7・FC3Sクラス)に参戦。
乗って、感じて、撮って、書くことを基本に自分の意見や理想も大事にするが、読者の立場も十分に考慮した評価を行うことをモットーとする。理想の車生活は、2柱リフトのあるガレージに、ロータス時代のスーパー7かサバンナRX-7(FC3S)とPHV、シティコミューター的EVの3台を持つことだが…。
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