【三菱・アウトランダーPHEV試乗】ハイブリッドが熟成期に入ったことを示唆する新しい考え方

ハイブリッド・イコール・低燃費で高効率。この考え方は絶対的なものでいいでしょう。しかし、燃費だけがすべてではない。マイナーチェンジしたアウトランダーPHEVはそのことを気づかせてくれました。

新しいアウトランダーPHEVはエンジンを2.4リットルに変更。駆動用バッテリーの容量を15%、出力を10%アップ。リヤモーターの出力も10Kw向上、ジェネレーターの最大出力も10%アップしました。

結果として従来よりもずっとEVに近いクルマとなったという印象です。駆動用バッテリーが満充電の際のEV走行可能距離はJC08モードで65kmとなっています。

走行モードを「ノーマル」で走っているときは、走行用バッテリーに残量があればひたすらEV走行を続けようとします。

もちろん、アクセルを強く踏み込むといった操作をすれば、クルマ側はドライバーがより強い出力を求めていると判断してエンジンが始動しますが、ゆったりとアクセルを操作している限りは健気にEV走行を続けます。さらにそのEV走行の力強さが増しているもの魅力が倍増している部分です。

今回のマイナーチェンジで従来、ノーマルとロックだけだった走行モードに新たにスノーとスポーツが追加されました。スポーツモードはエンジンが常時作動しているモードで、モーターの出力特性もシャープになります。

スポーツモードでアクセルを強く踏むと、従来モードでの加速よりも明らかに強い加速感を得ることができます。基本は前後のモーターで走行しているのですが、強い加速を得たい領域ではエンジンの駆動力が前輪に伝わります。

アウトランダーPHEVはPHVではなく、PHEVという名称を使っています。このネーミングには基本はEVである……という思いが込められています。なので基本走行はモーター、エンジンがサポートにまわるという味付けになっているのです。

今回のマイナーチェンジではエンジンを2.4リットルと排気量アップしたことなどが関係して、モード燃費は若干ダウンしています。マイチェン前のJC08モード燃費は19.2km/Lでしたが、新型は18.6km/Lと若干ですが数値はダウンしました。

従来の考え方なら、ハイブリッド車がマイナーチェンジでカタログ燃費ダウンはあり得ないでしょう。しかしアウトランダーPHEVはそれを敢行しました。それはクルマは必要十分な燃費が確保できていればいい。それよりも加速感や静粛性などに性能を振り分けたのです。

こうしたことができるようになった、つまり消費者が受け入れられるようになったことは、ハイブリッド車が熟成期に入ったことの証拠と言えるでしょう。

(文/諸星陽一・写真/前田恵介)

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諸星陽一

1963年東京生まれ。23歳で自動車雑誌の編集部員となるが、その後すぐにフリーランスに転身。29歳より7年間、自費で富士フレッシュマンレース(サバンナRX-7・FC3Sクラス)に参戦。
乗って、感じて、撮って、書くことを基本に自分の意見や理想も大事にするが、読者の立場も十分に考慮した評価を行うことをモットーとする。理想の車生活は、2柱リフトのあるガレージに、ロータス時代のスーパー7かサバンナRX-7(FC3S)とPHV、シティコミューター的EVの3台を持つことだが…。
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