トヨタはル・マン24時間レースでいかに戦い「改善」を手に入れ「見えない敵」に勝利したか?

共にル・マンを戦ったアウディ、ポルシェがフォーミュラーEへと戦いの舞台を移す中、己の武器であるハイブリッド・テクノロジーを磨くため、そして悲願であるル・マン24時間レース制覇のため「FIA世界耐久選手権」(WEC)に居残ったTOYOTA GAZOO Racing。

レース前、多くの人から「今年はライバル不在、トヨタは完走できればル・マン初優勝」という声が聞こえていました。ですが5月下旬に開催されたメディア向け発表会で「今年は勝てるのでは?」という問いかけに対し、ドライバー達は口を揃えて「24時間走り続けることの難しさを僕たちが一番知っています。決して簡単なことではありません」「ただ、次のル・マンではどっちが一番かは分からないですけど(トヨタの)6人でしっかり表彰台に登りたいです」と気を引き締めていました。

単なる優勝だけでなく、送り込んだ2台が完走してワンツーフィニッシュが最低条件。トヨタにとって今年のル・マンは、周囲の期待からくるプレッシャーや自ら課した課題への克服といった「見えない敵との戦い」でした。

ライバルに圧倒的な強さを見せつける

2018/19シーズンのFIA世界耐久選手権(WEC)開幕戦スパ6時間レースでワンツーフィニッシュを果たしてから1か月、戦いの舞台となるサルト・サーキットにTOYOTA GAZOO Racingは姿を現しました。 6月4日に行われた公式テストで、トヨタTS050 HYBRID 8号車を駆るフェルナンド・アロンソが、3分19秒066というトップタイムをマーク。アロンソにとってTS050 HYBRIDでル・マンのフルコースを走行するのは初めての機会でしたが、午前中のセッション序盤から8号車をドライブし、合計40週、545kmを走行。チーム全体としてもトータルで202周、2,752kmを大きなトラブルなく走破し、公式練習の時から、ライバルに速さだけでなく安定度の高さを見せつけたのです。

その速さは予選で遺憾なく発揮され、中嶋一貴が3分15秒377を叩き出しポールポジションを獲得。昨年小林可夢偉が出した3分14秒791には及ばなかったものの、2位以下に2秒以上の大差をつけました。2位は7号車。トヨタのワンツー体制で決勝を迎えます。