【新型フォルクスワーゲン・ポロTSIハイライン試乗】ゴルフ不要論が浮上しそうなほどに進化を遂げた6代目

フォルクスワーゲン・ポロは同社のラインアップのなかでup!(アップ)の上に位置するコンパクトモデルです。初代は1980年代初頭に登場し、今回導入されたモデルは6代目にあたります。

5代目までのポロはコンパクトハッチバックらしく、日本の小型車(5ナンバー)枠に収まるボディサイズでしたが、新型はボディ全幅が拡大されたため、普通車(3ナンバー)となります。

ボディが大きくなったのはゴルフなどにも使われている新世代プラットフォームのMQBを採用したからで、ボディサイズは先代と比べると全長が+65mmとなる4060mm、全幅が+65mmとなる1750mm、全高は-10mmで1450mm。ホイールベースは80mmも延長され2550mmとなっています。このボディサイズは4代目ゴルフ程度の大きさです。

   

搭載されるエンジンは1リットルの3気筒ターボで、最高出力は95馬力、最大トルクは175Nmとなります。ミッションは7速のDSG(デュアルクラッチAT)です。エンジンのフィーリングは非常に滑らかで3気筒エンジンだと感じさせることはまれで、普通に乗っていれば4気筒と勘違いしてしまうくらいのスムーズさです。ミッションはDSGですからシームレスにつながり、間断ない加速が得られます。

100km/h時のエンジン回転は2200回転と1リットル3気筒としてはそこそこ低めです。加速時には2500回転から上が気持ちよく、スポーティな印象すら覚えます。

低速時のステアリング操舵力はかなり軽く、切り返し操作が苦手な女性などでも軽々と転舵できるでしょう。速度が上がると今度は重めとなり走りにどっしり感がもたらされます。乗り心地はよく、ドイツ車らしいキッチリした工業製品さも十分に味わうことができます。

シートはクッション、背もたれともに硬めで、国産車のシートにしかなじみのない方にはちょっと抵抗があるかも知れませんが、クルマの動きがダイレクトに伝わってくるため運転に正確さが出るのと、余計な動きが制限されかえって疲労を軽減してくれるという利点があります。

ボディが大きくなったことで室内空間も拡大されました。先代では少し狭めに感じたリヤシートも十分な広さが確保されたとともに、ラゲッジルームの容量も71リットル増えて351リットルとなり実用性をアップしました。

駐車場や道路の事情で従来型ポロに乗っている方は大きくなったことが残念ですが、同じような事情で現代のゴルフをあきらめていた方には朗報かも知れません。今度のポロは名前こそポロですが、その中身はゴルフと言っていいほどに上級さを持っています。もしかしたら、ゴルフを食ってしまうかもしれない、そんなクルマが新型ポロだといえます。

(文:諸星陽一/写真:小林和久)

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諸星陽一

1963年東京生まれ。23歳で自動車雑誌の編集部員となるが、その後すぐにフリーランスに転身。29歳より7年間、自費で富士フレッシュマンレース(サバンナRX-7・FC3Sクラス)に参戦。
乗って、感じて、撮って、書くことを基本に自分の意見や理想も大事にするが、読者の立場も十分に考慮した評価を行うことをモットーとする。理想の車生活は、2柱リフトのあるガレージに、ロータス時代のスーパー7かサバンナRX-7(FC3S)とPHV、シティコミューター的EVの3台を持つことだが…。
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