千里の道も一歩から。伝説的な創業者の信念とは?【意外と知らないクルマメーカーの歴史・フェラーリ編】

今も昔もスーパーカーのブランドとして有名な「フェラーリ」。

甲高い排気音を轟かせつつ、地を這うように駆け抜けていく真っ赤な車体の存在感は、周囲の視線を集め、その場の雰囲気を塗り替えてしまうほど圧倒的です。そんなフェラーリも生まれた瞬間からカリスマだったわけではなく、長い時間を掛けて現在の地位を確立しました。

創設者はエンツォ・フェラーリ。モデナの板金工の次男として1898年に生まれた彼は、幼少の頃にモータースポーツ観戦をきっかけに車に魅了されたという、どこにでもいるクルマ好きの少年の一人でした。しかし、1916年には父を亡くし、第一次世界大戦での徴兵や胸膜炎を患って生死をさまようなど、その人生は波乱に満ちていました。

数々の逆境を超えたからこそ、「一度きりの人生」に対する想いが強かったのかもしれません。除隊後には、かねてから憧れていたレーシングドライバーを志しました。しかし、いきなりレーシングドライバーにはなれず、1920年にまずはアルファロメオのテストドライバーとしてキャリアの第一歩を踏み出すことに。その後、レーシングドライバーへの昇格を果たして実績を残しました。

そして、1929年にレース仲間と共同出資でフェラーリの前身となった「スクーデリア・フェラーリ」を創設。アルファロメオのセミワークスレーシングチームとして活動し、メルセデス・ベンツなどの強豪を相手に好成績を収めました。一見、順風満帆にキャリアを築いていましたが、1939年に経営陣との衝突をきっかけにアルファロメオを去り、第二次世界大戦中にはモデナで工作機械の製造し、レースの世界からは一時離れることに。