発表されたばかりの空気なしで走れるタイヤ「TOYO noair(ノアイヤ)」。
空気いらずのタイヤは各社が研究・発表していますが、試乗させるというのは私は聞いたことがありません。
東洋ゴム工業がその先陣を切ったということは、ドリフトへのチャレンジや、有名サッカーチームとのコラボ動画など、安定志向でない、という攻めの姿勢の意思表示のようにも思えます。
今回は万博記念公園内のクルマを走らせるにはやや狭いと言えるアスファルト路面ですが、世の中にないスタイルのタイヤ、その出来栄えの一部を味わうことができました。
試乗したのはスズキ・アルト。軽量で負荷が少ないけれど、その分、タイヤの影響、特に音や振動には厳しいテスト車と言えるでしょう。
試乗の前の記者発表、事前の説明では、「性能面で既存の空気入りタイヤと違わないもしくは上回る部分が多くあった」と聞いています。当然、「フツウのタイヤ」という印象に近いのか、という先入観があります。
正直言って、そういう気持ちで乗ると、だいぶ違う印象です。
確かに、普通に走って、普通に曲がって、普通に止まる、という部分では、低速走行ではどうやら空気入りタイヤに劣る部分はそれほどないように感じます。
けれど、一般的に、ハンドルを切った状態で走ると直進に戻ろうとするセルフセンタリングの働き。ニュートラル(直進状態)付近での手応えの少なさ。通常、ハンドルを切り込んでいったとき重くなる力の変化のなさ。などが、「違和感」と感じる部分でした。
ただし、タイヤについて少し知識があればそれは当然、と思えるはずです。
今回のコンセプト・タイヤは、ペタンとしたトレッド面のタイヤです。タイヤ断面が丸ければ(極端に言えば自転車のタイヤのように)、直進状態とハンドルを切った時の違いがわかりやすく出るのは想像できますが、フラットな面ではそれとは逆の傾向になるのは当たり前なのです。
路面からの音も大きめに感じましたが、軽自動車「アルト」で初めて走る路面ですので、そこは大きいとか小さいとかはわかりませんでしたが、少なくとも「異様にうるさい」とかではなかったです。
一般のタイヤ接地面には刻まれる複雑な模様も、このコンセプト・タイヤでは太い縦の溝だけです。これで、ウェット制動の性能は十分に確保できているとのことです。
つまり、同じような形状で空気入りタイヤを作ったら、同じような性能になったんじゃない?と言えるレベルだ、とも思えるわけです。
逆に言うと、空気入りタイヤの形状と同様に仕上げれば、同じような特性のコンセプト・タイヤになったかもしれん、ってことですね。