富士キメラ総研が車載ECU世界市場を調査。1台当たりの搭載数や高処理能力が必要なECUの増加で市場が拡大

市場調査の富士キメラ総研は、センサー情報を基に車載システムを制御するECU(Electronic Control Unit)の世界市場を調査しました。

今回の調査では、自動車1台当たりの搭載数が増加し、拡大しているECUの世界市場を調査、結果を「車載電装デバイス&コンポーネンツ総調査 2017 下巻:ECU関連デバイス編」にまとめています。

この報告書では、パワートレイン系ECU、HV/PHV/EV/FCV系ECU、走行安全系ECU、ボディ系ECU、情報通信系ECU、スマートセンサー/アクチュエーターの市場を地域別に調査・分析しています。

まず、車載ECU世界市場については、2016年の市場規模は、金額で8兆1,435億円、個数で19億7,095万個となる見込まれています。これに対して、2025年には13兆9,175億円、36億3,866万個まで拡大すると予測しています。

エリア別では、金額/数量ベースともEU、NAFTA、中国の市場規模が大きく、今後は中国やその他地域の市場規模が自動車生産台数の増加にともなって拡大すると予測しています。

分野別にみると、金額ベースの市場で最も大きいのがボディ系、次いで走行安全系、情報通信系のECUの順になっています。ボディ系ECUは、単価は低いものの数量が9億5,410万個と圧倒的に多く、走行安全系ECUは3億2,226万個、情報通信系ECUは2億7,217万個と個数は少ないですが、単価が比較的高額で、金額ベースで2位を占めています。

今後、数量ベースの伸び率が高くなると予測されるのはHV/PHV/EV/FCV系ECUとスマートセンサー/アクチュエーターの分野。HV/PHV/EV/FCV系ECUは環境対応車の生産台数増加に伴ってECUも増えていき、スマートセンサー/アクチュエーターは自動車1台当たりのECU搭載数が増加することが原因で増加していくと予測しています。

次に、自動車1台当たりのECU搭載数については、車種によって大きな差がありますが、2016年で平均21.6個、2025年には同30.4個になると予測。エリア別では、日本とEUが他エリアより多くのECUを搭載する傾向があると分析しています。

分野別では、ボディ系ECUが平均10.5個(2016年見込)と最も多く、2025年には同13.1個まで増加し、ボディ系ECUが自動車1台当たりの搭載数の半分近くを占めています。

ECUというと、エンジン制御が真っ先に思いつく用途ですが、いまでは自動車のあらゆる場所にECUが使用されていることがわかります。今後は、スマートセンサー/アクチュエーター系が大幅に増加し、2025年の搭載数は平均5.4個となるため、ボディ系ECUの自動車1台当たりの搭載数に占めるウェイトは低下すると予測しています。

そして、近年増加が目立つのが要放熱対策ECU。2016年の要放熱対策ECU市場は11億4,878万個に達して、全体(車載ECU世界市場)の約6割が何らかの放熱対策が必要なECUになっています。これは高出力アクチュエーターを使うシステムが増加していることや機電一体化が進んでいることが原因と分析しています。

例えば、GEM(Gasoline Engine Management System)では、PFI(Port Fuel Injection)からDI(Direct Injection)化が進むことによって燃料を噴射するインジェクターの高圧化が必須となるため、高圧噴射用のパワーデバイスが多く必要となっています。

さらにそれらを制御するECUはワイヤーハーネス削減のために、アクチュエーター近傍に搭載されるため、高温のエンジンルームへの搭載が必須で、耐熱対策と高温下における放熱対策も必要になります。

機電一体化については、機電一体化によってセンサーやアクチュエーターと一体化したECU搭載が求められています。高熱を発するアクチュエーターにECUを直付けするので、ECUの放熱対策が欠かせません。また、センサーと一体化する場合には、高度な信号処理をするICを使用するため、そのIC自体が高熱を発するため一層放熱の必要性が増大しています。

したがって、全体に占める要放熱対策ECUの構成比はあまり変わりませんが、数量は大幅に増加していくと予測しています。

(山内 博・画像:富士キメラ総研)